メキシコ湾汚染、日本にも責任

   メキシコ湾原油問題についてこういうコメントをいただきました。
「普通に考えれば、油田開発に出資しただけの三井には責任はないでしょうね。一番の責任は、採掘機器を製造・設置したアメリカ企業と韓国の現代重工じゃないですか?」
 機器が原因だから、三井には責任はないということですが、そうでしょうか? まず、機器が原因だったなんて話はどこからも出ていません。事件の調査も始まったばかり。検察庁長官は、「違法行為が明らかになれば、民法と刑法に照らして責任をとらせる」と述べていますが、「違法行為」には、「安全確保義務違反」も含まれ、すでに、それを裏付ける多数の証言が出ています。
 それに、投資者に責任がなければ、BP社だって免責されてしまうのでは?
 グローバル経済の下で、企業には「企業の社会的責任」や「コーポレート・ガバナンス」、「投資責任」が強く求められています。事業活動が、環境―ひいてはこの地球―を破壊するほどになっているからで、自国以外でも法律の遵守、環境や消費者、労働者の保護などは基本原則です。
  
 一方、油田開発は、鉱山開発とならぶ環境破壊事業の代表。人の目の届かない深海底の油田開発は、相当荒っぽいことがやられているでしょう。でも、それを知るのは関係者だけで、行政さえ実態は把握できていないはず。現にBP社は違法行為の常連として悪名が高く、今回の事故でも監督官庁を抱き込んで違法をやっていたとの指摘が多い。問題のオイルリグも、過去10年で18回も「汚染源と認められた」として、海岸警備隊に6回の強制執行の警告と、違反による罰金刑を課されています。
 こういう背景があるにもかかわらず、そこに投資した企業は、当然、責任をまぬがれません。と、私が言うまでもなく、三井はすでに応分の負担をすることを表明していますが(補償額と割合は現時点では不明)。なお、ここでいう「三井」とは、三井石油開発の親会社である三井物産のこと(70%の株保有)。同社には経済産業省も投資しています(20%、以前のコメント氏の2%は誤り)から、やがて私たちの税金もこの事件の後始末に使われることになるでしょう。 経産省は沈黙を守っているようですが、無責任な投資がこうして環境を破壊し、そのつけが市民にまわされるのは納得できません。2010.6.20
(参考)
http://dealbook.blogs.nytimes.com/2010/06/07/looking-for-liability-in-bps-gulf-oil-spill/
http://www.nasdaq.com/aspx/company-news-story.aspx?storyid=201005310544dowjonesdjonline000087&title=update-mitsui–co-braces-for-gulf-of-mexico-oil-leak-costs
(注:コメントは基本的に公表しません。また、以後、政治的な話題は私の別のブログ「南京だより」http://mirushakai.jugem.jp/に移しますので、そちらもご覧下さい。)

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/