マレーシアの「ザ・サンデイリー」は、7月3日、「日本の焼却炉はマレーシアには必要ない」という、日本の環境省、焼却炉メーカーにはショックな記事を発表しています。http://www.thesundaily.my/news/1104119
日本が、政府・地方自治体をあげて「優れた日本の廃棄物処理技術(=ごみ焼却炉のことです)」をもっともっと海外に輸出しようとしていることは、あまり知られていないかもしれません。以前からその売り込み先の一つとなっていたのが、マレーシアでした。日本の環境省は、首都クアラルンプール(以下KL)に「日本の技術を提供する」ともちかけ、関係閣僚を日本視察に招くなど、積極的な商戦を展開していました。
マレーシア側は、国家固形廃棄物管理部 (JPSPN)部長のNadzri Yahaya氏をトップに、大勢の議員、関係者で視察団を組織し、東京のいくつかの焼却炉を視察した模様です。彼らは、日本の市民はまず絶対に会えない、環境省廃棄物・リサイクル対策部長梶原成元氏に会っていますが、この人物は、311後の日本の産廃処理事業のホープ、おそらく環境大臣よりも会うのが難しい人でしょう。http://www.sanpainet.or.jp/publication/doc/no068.pdf
ところが、視察後の記者会見で、彼らは日本の期待に背く発言をしてしまったのですね。 「個人的に」東京を訪れて三つの焼却炉を視察した国会議員のOng氏は、「日本が焼却炉に頼るのは土地がないから。マレーシアには、リサイクルやバイオガス施設など他のプログラムを実行できる十分な土地がある」と発表。そして、視察団に参加していた市民団体のKTIは、「この視察旅行は、マレーシアの焼却炉に関するネガティブな見方を弱めようとするためのアジェンダに過ぎない」「日本とマレーシアは環境が違う。日本はごみ処理の唯一の技術として焼却炉を選んだのだ」とポイントをつく発言。ほんとは、日本人が騙されやすいため、「焼却炉しかない」と思い込まされているんですけどね。
KTIとはKuala Lumpur Tak Nak Insinerator Action Committee” の略。「世界には100%安全な焼却炉などただの一つもない」と、焼却炉に反対している団体です。写真はここ→The KTI group holding a banner in the rally against the proposed Kepong incinerator project, Nov 3, 2013. SUNPIX by SYED AZAHAR SYED OSMANこういうグループを視察団に加えるというのはなかなか面白い。
ところで私もたまたま縁があって、彼らの一部メンバーとともに東京都中央区のごみ処理施設、そして23区一部事務組合を訪問しました(6月25日)。しかし、そこでの聞き取りではっきりしたのは「いまだに水銀問題が続いていること、解決のめどはたっていないこと」でした。水銀問題で停止していた焼却炉を、大金をかけて部品交換、大清掃したのに、再稼働のその日に、再び水銀が出てしまったのです。でも、もう打つ手はなく、「濃度を下げて」使い続けるということのよう。都民が無関心では東京の環境は悪化する一方です。2014.7.8