オハイオ州列車脱線火災事故による環境汚染

アメリカ、オハイオ州の列車脱線、火災、爆発事故の続き。…大手マスコミの完全無視に加え、ツイッターやファクトチェッカーらが、ここぞと「そんな事故は起きていない」「環境汚染などない」などと囀っているので、アメリカ環境保護庁EPAの正式文書を元に、何が起きたか説明します。これは、列車の事業者であるノーフォークサザン社を「潜在責任者」と規定し、法律が規定する対応と費用負担を求める文書で、事故から1週間後の2月10日付けのもの。記事の合間にあちこちのサイトからとった写真を入れました。

「イーストパレスチナの列車脱線事故現場について」

 米国環境保護庁は、オハイオ州イーストパレスチナの列車脱線事故現場から、環境中に有害物質、汚染物質、汚染物質が放出された、またはその恐れがあることを確認した。列車脱線事故現場(以下、現場)は、オハイオ州イーストパレスティン(Latitude: 40.8360864 o N, Longitude: -80.5215884o W)で、2023年2月3日午後8時55分(米国東部標準時)頃、ノーフォークサザンの約150両編成の列車が脱線した。約20両が危険物運搬用に指定されていたが、塩化ビニル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、エチレンを積載していた車両約20両も脱線した。

実は現場の20マイル手前から、脱線車両の下から火花が出ているのをセキュリティカメラがとらえていた。熱感知装置も作動していたが、事故は止められなかった。

エチレングリコールモノブチルエーテルは、大気、地表の土壌、水系に放出されたことがわかっており、現在も放出が続いている。EPA は連邦政府の包括的環境対応補償責任法(CERCLA、「スーパーファンド法」)に基づき、有害物質、汚染物質、汚染物質の環境への放出または放出の脅威への対応に責任を負っているーつまり、環境中に有害物質、汚染物質が放出された場合、またはその恐れがある場合、さらなる汚染の発生を防止し、すでに発生した汚染を浄化し、またはその他の方法で対処する。EPA は、本現場における有害物質または有害物質放出の可能性を調査し管理するために、公的資金を支出し、または支出を検討している。現在 EPA が入手可能な情報に基づき、ノーフォーク・サザン鉄道会社(Norfolk Southern Railway Company、以下「貴社」)は、CERCLA に基づき、本サイトの清掃またはその費用に対して責任を負う可能性があると判断した。

事故翌日のドローン映像。AP 有害物質積載車量20両のうち10両が脱線した

・・・EPAは、2023 年 2 月 3 日午後 8 時 55 分頃(米国東部標準時)、オハイオ州イーストパレスティンで発生した事故 に関して入手した情報に基づき、ノーフォーク・サザン社が、同サイトの現所有者および/または前所有者として、イーストパレスタイン 列車脱線事故現場に関し CERCLA 第107 条に基づく責任を負う可能性があると考えている。以下はEPAが現在までに、スーパーファンド・プログムの権限に基づき、同サイトで実施した対応措置と観測の簡単な説明です。(カッコは山本の説明)

1. 事故現場、周辺地域周辺の大気モニタリング:事故現場周辺、周辺地域、および再入居計画の一部である住居の空気監視を実施。(これに関しては明言していないが、住民はほとんどすぐにさまざまな健康被害を訴えている)

2.  空気および水のサンプリング。

3. 以下の観測を行った。

a.  サルファーラン、レズリーラン、ブルクリーク、ノースフォーク・リトル・ビー バークリーク、リトル・ビーバークリーク、オ ハイオ川からサンプル水を採取、事故中に放出された物質が観察され、検出された。(広い水系がすでに汚染されている)

b. この事件に関連する物質が雨水管に流入しているのが観察された。(住宅と敷地の汚染。鶏や野生生物が死んでいるのも目撃され、すでに人が住むには危険な場所になっているーまさに「第二のラブキャナル」)

c.  複数の鉄道車両とタンカーが脱線、破損、発火しているのが確認されたが、これには以下の物質が含まれていた。i. 塩化ビニール、ii. エチレングリコールモノブチルエーテル、iii. アクリル酸エチルヘキシル、iv.イソブチレン、v. ブチルアクリレート(POPs生成につながり有害物質が多い…)

d. 塩化ビニルの積載タンクローリー5台が意図的に破損され、塩化ビニルは掘削されたトレンチに流され、その後焼却された。(これがすごい。ノーフォーク社は現場に溝を掘ってこの有毒物質を流しこみ、「開放焼却」していますが、焼却により毒ガスが生成したはず。その写真がこちら↓)

「コントロールド・デトネイション」管理爆破とあるけれど、開放焼却でコントロールなどできるはずはなく、現場を中心に何日も黒煙がたなびき、大気に悪臭がたちこめ、これを吸った人々を苦しめたという February 6.Credit:AP

e. 汚染土壌と液体が存在する領域が観測されたが、そこでは、塩化ビニルの野外焼却に使用された溝が、線路の再建中に覆われたり、埋められたりした可能性がある。(ノーフォーク社は、なんと有毒物質を焼却しただけでなく、それを処理したトレンチも埋めたててしまっていた。証拠隠滅の意図を疑わざるを得ない。誰が焼却処理の許可を出したか不明)

9日、イーストパレスチナ高校で行われたタウンミーティングには怒れる市民がおしかけた。 Wednesday.Credit:AP
なんと住民は、この日までに「現場は安全だから帰っていい」と言われています。ただし、「水は飲むな」という注意つき。「ノーフォーク社が配給するペットボトル水を飲め」。

EPAは、貴社が現地を所有または運営している、あるいは有害物質を生成または輸送している可能性があるとの情報を入手した。この書簡により、EPAは、本件に関する記者の潜在的責任(PRP)を通知し、貴社がPRPとして以下の事項★に同意することを奨励する。★EPAが決定した、または 決定する予定の対応活動を自主的に実施すること、★資金提供に同意すること(EPA通知訳ここまで)

 事故後の強制避難の際も、塩ビ焼却の際も、住民には状況がまったく知らされなかったため、避難の呼びかけにとまどい、現地に留まった人も多かったのです。その結果、上記の塩ビ焼却当日、「一家全員が突然吐き気を覚えた」「みな歯が痛くなった」のような被害にあった一家も。しかも、この健康被害は「避難区域指定」された狭い地域だけでなく、かなり離れた場所でも起きています。・・・オハイオ川水系は流域500万人の飲用水として利用されていますが、「水で薄められたから大丈夫」ではないことも、土中にしみこんだ汚染物質が、長年にわたって住民の命をむしばんでゆくことも、「ラブキャナル」で起きたことです。ラブキャナルの場合、数千人の住民が政府に抵抗して、全戸移住を勝ち取りましたが、イースト・パレスチナの場合はそうはゆかないでしょう。

 なぜなら、当時と違って、メディアは今、住民を敵視しているからです。この事件も、マスコミはほとんどカバーせず、連日、「中国の気球」ばかりを取りあげていたため、アメリカ国内でもこの問題が知られるようになったのは、事故後十日ほどたってからのことでした(山本もその頃、知りました)。それどころか、現地の記者会見を取材した地元の記者は「住宅侵入」の罪で逮捕されています。各戸のドアには書き手不明のQ&Aが貼りつけられていたとか。そこには「爆破の煙は、普通の火事の煙と同じ」「水質汚染するはずはないから心配いらない」などと書かれたペーパーが貼りつけられていた・・・

 山本が「ラブキャナル」を訳した時、アメリカにおける有害物質汚染がどれほどひどいかということを知り、愕然としました。「スーパーファンド法」ができても、企業は利益のためなら、環境汚染も健康被害も気にしません。しかも現在の有害物質は、量も質も当時の何倍にも増え、しかもGMOやナノテクなどコントロール不能の技術が大手を振っているのです。いったい誰が、どこでこの流れにストップをかけられるんだろう。2023.2.19

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/