エコーは胎児の脳細胞に影響する

 ところで、厚労省が2006年に妊婦健診ガイドラインを出したのは、同年、米の神経生物学研究家らが、エコー調査の「害」を示す研究を発表したからのようです。海外では大騒ぎ。以下はその大胆な簡訳ですが(一部)、まったくの素人訳であることをご了承下さい。

「ヒトを含む哺乳類の大脳皮質の神経細胞は、胎児期に増殖細胞層で発生し、その後、内側から外側への順序で、最終的な場所に移動する。本研究は、超音波(エコー)が、マウス胎児の神経細胞の位置と移動にどのような影響を与えるかを調べるものである。そこで、神経細胞が皮相に移動する様子を見るため、16週目のマウス胎児にBrdUを一回注射した(筆者注。ラベリングのこと。BrdUとは臭素化デオキシウリジン、生体組織内での細胞増殖を検出する化学物質です)。
 335匹の動物試験の結果、胎児期に合計30分以上超音波にさらされると、少数ながら、統計的に有意な数の神経細胞が、本来あるべき場所に到達せず、不適当な皮相、または・あるいは下層白質にに拡散したままになることが明らかになった。その拡散の程度は可変的だが、エコー照射時間の長さによって規則的に増加した。これらの結果、より大きく、発達がゆるやかなヒト以外の動物の脳のさらなる研究と、胎児への不必要な長時間のエコー暴露についての詳細な調査が求められている」(簡訳;筆者)

 げーっ。気分が悪くなりました。ちなみに、アメリカではエコー検査を受ける妊婦は約70%、それも1~3回にとどまります(業者の調べだから、実際はもっと少ないかも)。② 厚労省はこれに対して、ガイドラインで「使用しても大丈夫」と宣言したわけ。また、日本産科婦人科ME学会も同年8月、「この実験は人にはあてはまらん」との声明を出しています(編集してあります)。

 「人間のエコー検査では、観察断面を移動しながら胎児の各部を観察するため、同じ部分に長時間超音波が当たり続けることがない。また、マウスと人間では、脳が発達する時間に大きな違いがあり、実験で影響が出始めたという使用時間30分は、人間に当てはめた場合、もっと長時間になると推定される」
 「超音波検査が胎児に何らかの影響を及ぼしているかどうかは今後の研究を待たなければ明言できませんが、現在広く行われている超音波検査による胎児の出生前診断が、被検者に多大な益をもたらしていることから、今後も必要な超音波検査を控える必要はないと思われます」
 「しかしながら、不必要に長時間に及ぶ超音波検査(特に胎児の脳に対して)、診断目的以外(いわゆる”entertainment”)の使用は、できるだけ避けることが望ましいと考えます」③
 
矛盾してる。影響があるかどうかわからないが、調査を控える必要はない。でも、できるだけ避けろ・・・って。エンターテインメントの使用とは、患者に胎児写真を渡すようなさービスを指すのでしょうか。でも、エコー検査がこれだけ普通になっていれば、ママはせいぜい「おなかの中の赤ちゃん、かわいいー」くらいしか思わない。それにしても現代の赤ちゃんは、お腹の中にいる時から、すさまじい攻撃にさらされているのか・・・。彼らを守ってあげられるのは誰?2010.10.6
① http://www.pnas.org/content/103/34/12903米科学アカデミー紀要電子版
② http://www.imaginis.com/obstetrics
③ http://www.obme.umin.jp/right/public/200608PNAS.htm

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/