イラン攻撃で「イラン新体制」が確立できるか? ーイラン攻撃の本当の目的④

 トランプが3月21日に出した、「イランがホルムズ海峡を48時間以内に無条件開放しなければ、発電施設を爆撃する」という通知は、世界中の原油市場や経済を大きく混乱させました。しかし、そのにタイムリミットが迫る23日、彼は以下のような驚くべき声明を出し、攻撃を「一時中止」しています。

「この2日間、アメリカとイランは、中東における敵意の完全かつ全面的な解決に関し、非常に友好的で生産的な話し合いができた。このことを報告できるのをうれしく思う」「会談は今週中も続く。この会談の成功にもとづき、イランの発電施設に対するすべての攻撃を五日間停止するよう、戦争省に命じた」

 この情報に対し、日本を含む西側メディアは、イランも停戦を望んでいる、特にイランからの報復攻撃を受けている湾岸諸国は停戦交渉に向けて動いており、水面下交渉はあり得るなどと報道していますが、まともな歴史認識があればとてもそうは考えられない。特に今のイランは、どんな形であれ、アメリカ相手の「交渉」に応じるとは思えません。イランはアメリカによる残虐な「制裁」に数十年も苦しめられてきただけでなく、何度も政治家を暗殺され、国内では「反政府暴動」を仕掛けられてきました。中でも衝撃的だったのは、2020年初頭、イランの防衛の盾になっていたソレイマ二司令官の暗殺です。なお、この事件は西側諸国では、おおむね軽視あるいは無視されています。なぜならこの年は、「ディープ・ステートの野望」を実現し、事実を隠蔽するためのグローバル計画「コロナ陰謀」の初年度だったから

ソレイマニ司令官暗殺事件】2020年1月3日未明、米軍の武装無人機(ドローン)は、イランのバグダッド空港付近を通行していたイラン革命防衛隊(IRG)の車列を空爆し、IRGの精鋭「コッズ部隊」を率いるソレイマニ司令官、人民動員隊(PMF)のムハンディス副司令官ら10人を殺害した。国連調査官は「「ソレイマニ司令官はイランの軍事戦略やシリアとイラクにおける作戦行動を統括していたが、実際に人命への差し迫った脅威は存在せず、米軍の取った行動は非合法だ」と指摘した。… 

  ソレイマニ氏の葬儀には数百万人の市民が駆け付け、国全体が深い喪に服しました(BBChttps://www.bbc.com/japanese/video-51015863)。しかし、彼の死に涙した高齢の最高指導ハメネイ氏も、6年後の今回の攻撃初日に、米中央情報局CIAによって暗殺されてしまう。それだけでなく、イラン南部ホルムズガン州ミナブでは、小学校を空爆し、幼い少女、少なくとも175人を殺害するという残虐な作戦を展開しています。この件では、トランプは、「私は知らない、イラン軍がやった」と関与を否定し、責任転嫁していましたが、その後、米国メディアの調査と、米軍の予備調査によって、空爆はアメリカによるものと結論づけられています(意図的攻撃の可能性大だけど、おそらく最終報告では「誤爆」とされるでしょう)。これらの事件がアメリカに対する不信感や警戒感から、一歩深まって、敵意、復讐心、国家防衛意識の高まりになったことは容易に想像できます。

 さらに3月17日には、イスラエル国防軍が、イラン国家安全保障最高評議会(SNSC)書記アリ・ラリジャニ氏とIRGC傘下の民兵組織バスィージの司令官ゴラムレザー・ソレイマニ氏、ラリジャニ氏の息子モルテザ氏、側近の1人と複数の護衛を空爆で殺害した、と誇らしげに報告しています。ラリジャニ氏とは、2004年以来ハメネイ師の安全保障顧問を務めてきた、ナンバー2の人物であり、核協議でも主席交渉官を務めてきた人でした。アメリカ・イスラエル軍は、イラン政権の重要人物たちを用意周到な計画で殺戮してしまったのです。

「『ラリジャニとバスィージの司令官は昨夜(16日夜)排除され、地獄の底にいる殲滅計画の責任者であるハメネイや悪の枢軸から排除されたすべての者に加わった』と、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は述べた。

 こんな極悪非道の政権を相手に、まともな交渉ができると思うのは妄想です。トランプ発言には「他の意図」がある、というのが常識的判断。しかし西側メディアの多くは、彼の発言をそのまま受け取り、「イランも停戦を望んでいる」「水面下交渉が行われている」などと伝えています。これらの報道は、イランによる反撃で原油生産の停止や、海上要路であるホルムズ海峡の封鎖、そしてそれによる原油価格の高騰で、経済的破滅に追い込まれている経済界、特にサウジやUAEなどイランと敵対する湾岸諸国の要請によるものかもしれません。トランプ発言で、事態の鎮静化と一時的停戦を望んでいるはずだからです。市場はトランプ発言に敏感に反応しており、過去数日間だけでも何兆円もが取引された(ある者は大儲けし、ある者は大損した)ことがわかります。

 一方、イランはトランプ発言を受け、すぐに「イランはアメリカとはいかなる会談もしていない」と公式声明を出したほか、繰り返し、米国との協議を否定しています。最新の否定は3月26日のイラン外相によるもの。強盗、殺人犯と交渉などできるはずがない。

イラン外相、米国との協議実施を否定 交戦終結案検討も交渉の意図なし 2026年3月26日午前 [25日 ロイター] – イランのアラグチ外相は25日、イランと米国との​間でいかなる協議も行われ‌ていないと述べた。トランプ米大統領はイランと協議を行って​いるとしており、双方​の主張は食い違っている。アラグ⁠チ氏はイラン国営テレ​ビで、米国はさまざまな仲介者​を通してメッセージを送ってきているが、仲介者を介したメッセー​ジの交換は米国との交渉が​行われていることを意味するもので‌はな⁠いと指摘。トランプ米政権がイランに提示した交戦終結に向けた15項目の計画を検討し​ていると​しな⁠がらも、イランには米国と協議する意図はな​いと語った。また、米国​は迅⁠速な勝利の達成のほか、体制転換を含む戦争目標の達成に⁠失敗​したと言及。近隣​諸国に対し、米国から距離を置くよ​うメッセージを送るとも述べた。

 この「協議」に関し、トランプは、マフィアの親玉でさえ言わない言葉を口にしています。 

 「私たちはイランの指導者を全員殺し、新しい指導者を選ぶために集まった人々を全員殺し、今は新しいグループをもっている。これは本当に政権交代だ。なぜなら(新しいグループの)指導者は最初に問題を引き起こした人々と全く異なるからだ」「私は誰も信用しない。(しかし)私は正しい人々と取引している。彼らは素晴らしいプレゼントをくれた。指導者が全員殺されていなくなった、新しい指導者もひどいめにあった。第三層の多くの人々もいなくなった…イランはミサイルを発射することができない。アメリカは世界最高の軍隊を持っている…」軍事攻撃後、トランプ大統領は「我々はイランの指導者全員を殺害した」と発言 | APT 2026/03/25https://www.youtube.com/watch?v=095TQVThhvk

  つまり、アメリカは、イランのレジーム・チェンジのために、重要人物だけでなく、中間層の人々も次々と殺し、さらに自分たちの言うことを聞く新しい(傭兵)グループを組織し、彼らにイラン国内から体制を変えさせるべく画策しているわけ。いわば「クーデタ協議」ですが、これはベネズエラで取ったのと同じ戦略で、ベネズエラの場合はマドウーロ政権の女性副大統領とその有力な兄を買収することによって、大統領を誘拐・拉致したのです。これがうまくいったので、イランでも、高位政治家を抱き込んで、アメリカに忠実な政権を運営する取り組みが進んでいるかもしれませんが、イランはベネズエラと違って宗教国家、そうはうまくゆくはずはない。この攻撃は、イランよりも、アメリカ国内の体制変革を促すでしょう。

 なお、トランプが、そのイラン「クーデタ協議」の交渉のために選んだメンバーには、ウクライナ問題やイスラエル・ハマス紛争の交渉でも暗躍したウィトコフ中東特使と、トランプの娘婿、ユダヤ人のジャレット・クシュナー氏がいます。クシュナーの父親は、有力ながら、脱税、証人買収、選挙資金の違法献金など計18件の訴因で実刑判決を受けた人物。そして、トランプの娘イヴァンカは、結婚前に夫の宗教(ユダヤ教)に改宗しており、トランプが意外なほど深く、ユダヤ、イスラエルとかかわっていることがわかるでしょう。つまり、現段階で報道から見ても、トランプは、米国、米国民の利益より、イスラエルの利益のために動いていると思える面が強く、ひいては、イラン壊滅、大イスラエル実現、エプスタイン関連情報の隠蔽など、イスラエルの野望を満たすために動いているのかもしれません。2026.3.26

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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