がれき移動ではなく、被災者の移動を!

  先日、東北の震災廃棄物(がれき)は市町村の焼却炉では扱えないと書きました。この記事について、何人かからお尋ねをいただいているので、ここでもう一度説明します。
 〇 まず、日本の法体系には、放射能汚染が社会に広がることを想定した法律はありません。爆発や放射能汚染に対処する法律を作ると、「原発は安全」との虚構を通せなくなるからです。だから、「万が一」のことを考えなかった。
 〇 次に、廃棄物処理法は、放射能汚染されたごみを除外しています。同法の「定義」では:廃棄物処理法(定義)

第二条  この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く)をいう
 つまり、今の廃棄物処理施設では(一廃施設でも、産廃施設でも)、放射能に汚染された廃棄物は処理する(燃やす)ことはできません。それどころか、現在のごみ焼却そのものも違法が問われているのです。
 〇たとえ放射線量が100ベクレル以下でもダメです。100ベクレルとは、原子力規正法で、原発から出る比較的汚染度の低い廃棄物(産業廃棄物)を焼却処理するために政府が勝手に決めた数値で、クリアランスレベルといわれています。従って、「100ベクレルなら安全、市町村で燃せる」というのは、がれきが「原発廃棄物」であると認めることになるわけ。
 〇 廃棄物処理は市町村の自治事務であり、国がその自治事務に口を出すのはれっきとした憲法違反、自治法違反です。これは…拙著「ごみ処理広域化計画」を読んでいただきたい。
 〇「広域がれき処理には根拠法がない」のは、環境省もはっきり認めました。根拠法なしの行政事務は完全に憲法違反であり、今の政府は異常すぎる…というより狂っています。
 〇「がれき特措法」は、いわゆる「徐染作業」などに予算をつけるための法律に過ぎず、広域がれき処理の根拠ではありません。
 
 広域がれき処理や徐染に何千億円、何兆円も出すくらいなら、なぜ線量が高い地域に住む被災者を汚染の少ないところに移動させるくらい簡単なはず。がれき移動ではなく、被災者を移動させるべきです
 どうしても、がれきを移動させたければ、現在、関東各市町村にたまり続けている下水汚泥や焼却炉の焼却灰をフクシマに逆移送すべきです。福島の汚染度の高い地域を無人区にして、そこに屋根つきの管理型処分場をいくつも作り、封じ込めるしかありません。それもなるべく早く。
 残酷に聞こえるかもしれませんが、現実的解決法はそれしかなく、それが原発を受け入れた地域の運命なのです。
2012.2.13

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/