がれき受け入れは環境基本条例違反

 がれきを受け入れている、あるいは受け入れようとしている自治体は、すべて「環境基本条例」を策定しています。県レベルのものもあり、市レベルのものもある。この条例、以前は、「公害防止条例」と呼ばれていましたが、環境基本法の制定によって名称が代わり、同時に、「公害」という表現も消されてしまったのです。法律から「公害」という言葉が消えたことをもって、公害をもたらしてきた企業軍は、「日本は公害を克服した」と主張し、海外に公害防止装置や環境装置(ごみ焼却炉も含みます・・・冗談じゃなくて)を売り込んでいるわけ。
 でも、名称が変わっても、環境基本条例にはまだまだ公害防止の精神が残っています。特に激しい公害を経験した地域の条例は、公害防止のさまざまな「措置」を定め、市民を守る手立てを提供しています。たとえば「三重県環境基本条例」には、次のようなすばらしい「前文」がついています。

「三重県環境基本条例 平成七年三月十五日三重県条例第三号
 前文

私たち三重県民は、県土にはぐくまれてきた豊かな自然環境と先人たちの残してきた歴史的文化的な遺産や生活環境を誇りに思い、再び四日市公害の轍(てつ)てつを踏まないとの決意を持って、健全で恵み豊かな環境を県民共有の財産として保全し、これから生まれてくる子供たちに引き継ぐことを目指すものである。さらに、私たちは、人は環境の創造物であるとともに環境の創出者であり、多様な生態系の中で生きているということを理解し、私たち自身の営みによって地域環境のみならず地球環境を傷つけている現状を深く反省し、安全で安心できる恵み豊かな環境を念願し、生命の尊厳を深く自覚しつつ、参加と協働の精神を高く掲げ、私たちの経験と技術を生かして世界の人々と共に環境を守ることを決意した。そもそも、私たちは、良好で快適な環境を享受する権利を有しているとともに、健全で恵み豊かな環境を保全し、将来の世代に残していく義務を負っている。この認識の下に、私たち三重県民は、持続的発展が可能な社会を構築し、生態系の均衡を保持し、快適な環境を確保するとともに、環境を健全で恵み豊かなものとして維持継承するために、この条例を制定する。」
http://www3.e-reikinet.jp/mie-ken/d1w_reiki/40790101000300000000
/40790101000300000000/40790101000300000000.html

 この条例に照らせば、がれき受け入れなんてできるはずはないのです。環境基本法は放射性物質の拡散防止を求めているので(行政の不作為はあるけど・・・説明略)。でも、市民が法律に目を向けず、歴史を忘れてしまうと、そこから法律はどんどん効力をなくしてゆくものなのです。権利の上に眠る者は保護されない。がれきに手を上げている地域の方々、みなさんの自治体の環境基本条例をチェックして下さいね。2012.10.15

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/