がれき受け入れは復興の「邪魔」

 こころ優しい神奈川の人々は、「がれき受け入れは被災地復興につながる」といわれると、ノーと言いにくいかもしれません。でも、実は、これは東電を含む大企業のための利権事業であり、復興どころか現地の必死の努力の邪魔をしているだけなのです。たとえば、被災地の本当の話を知るべし! 陸前高田市長が見た「規制」という名のバカの壁とは?という記事を見て下さい。これは、『被災地の本当の話をしよう -陸前高田市長が綴るあの日とこれから-』(ワニブックス)について、フリーライターの浮島さとしさんが著者の陸前高田市の戸羽太市長にインタビューをした記事です。ご存知の方も多いでしょうが、以下にその一部を引用します(言葉使いは意味を変えないように一部編集。強調山本)。

――被災地を取材していますと、どこへ行っても「法律や条例の壁があって何もできない」といういら立ちの声を耳にします。戸羽市長もそれをずっとお感じになってきたのではないでしょうか。


戸羽市長(以下、戸羽) そのくり返しに尽きますね。たとえば、がれきの処理というのは復興へ向けた最重要課題のひとつなわけですが、現行の処理場のキャパシティー(受け入れ能力)を考えれば、すべてのがれきが片付くまでに3年はかかると言われています。そこで、陸前高田市内にがれき処理専門のプラントを作れば、自分たちの判断で今の何倍ものスピードで処理ができると考え、そのことを県に相談したら、門前払いのような形で断られました。


――県が却下した理由は何なのですか。


戸羽 現行法に従うといろいろな手続きが必要になり、仮に許可が出ても建設までに2年はかかると言うんです。ただ、それは平時での話であって、今は緊急事態なんですね。こんな時にも手続きが一番大事なのかと。こちらも知り合いの代議士に相談し、国会で質問してもらったのですが、当時の環境相も「確かに必要だ」と答弁してくれた。さあ、これで進むかと思うと、全く動かない。環境省は「県から聞いていない」と言い、県は「うちは伝えたけど国がウンといわない」という。そんな無駄なやりとりをくり返すうちに1ヶ月、2ヶ月が過ぎてしまう。ですから、どこが何をするかという基本的なことが、この国は全然決まっていないんですよ。
――そういう場合に、県や国は決して代案を出しませんよね。「ダメ」「無理」で話が終わる。


戸羽 そうなんです。がれき処理に限りませんが、プランを練り上げて持って行って「ダメ」と言われたら、我々は振り出しに戻るしかない。せめて「この部分は方法論として無理だけど、代わりにこうしたら目的は果たせますよ」と、解決の道を一緒に模索してくれたら、あっという間に決まるんです。よく国会議員の方々は「未曾有の国難」とか「千年に1度の災害」とか口にされていますが、であるなら、千年に1度の規制緩和をしてくれと、未曾有の国難に対応できる法律を早く作ってくれと、3月11日からずっとそれを言い続けてきてるわけです
 実は規制緩和どころか、放射能汚染ガレキの広域処理、という「超法規的」な事業を進めるために、現地の要望を門前払いしたわけですが、激動の中にいる戸羽氏にはそんな判断はできなかったのでしょう。彼が述べている通り、他県のガレキ受け入れは、被災地復興の邪魔になりこそすれ、決して支援にはなりません。市民のみなさん、安心して「反対」して!
 それから公務員のみなさん、みなさんの良心と服務の根本基準にもとづいて、この不公正で無法な汚染拡散事業を止めさせ、現地封じ込めという現実的な対案を早くまとめて下さい。それは、これまで原発推進を下支えし、この事態を招いてしまったみなさんの、せめてもの償いなのです。
2012.2.4

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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