「東大の水銀農薬」報道の「ごまかし」
このニュースにはさすがにぞっとさせられました。「水俣」
にも「イタイイタイ」にも学んでこなかった、この国
の産官学の実態を示す事件です。もっと大騒ぎしていいは
ずなのに、続報が少ない。それは、この↓最初の記事から
して、大きなごまかしがあるからです。
それも幾重ものごまかしが。
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禁止農薬:東大農場で使用 米栽培し販売…90年代後半
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081002k0000e040039000c.html
東京大大学院農学生命科学研究科附属農場(東京都西東
京市)で、使用禁止となっている水銀系農薬が少なくとも
3年間、米の実習栽培で使用されていたことが分かった。
収穫された米は地域の住民に販売されており、東大は残
留農薬などの調査に乗り出した。今のところ、健康被害の
情報はないという。
東大によると問題になっているのは、73年に使用禁止に
なった「酢酸フェニル水銀」が含まれる農薬。97~99年、
職員が米の種もみの消毒に使用。06、07年にも同じ職員が
カキやリンゴの苗木の消毒に使った。カキはまだ実をつけ
ておらず、リンゴは食用ではなかった。酢酸フェニル水銀
は農薬取締法で、研究目的での使用を認められており、使
用禁止後も農場に保管されていた。この職員は、大学の調
査に「使用禁止と知っていた。田んぼが荒れたり、稲に病
気が広がった時期があり、効果があったので使った」と説
明したという。
この3年間に収穫された米は4トン前後に上るとみられ、大
半が住民に販売されたり、学生が食べたりした。酢酸フ
ェニル水銀は長期間、摂取すると腎臓に悪影響が出る可能
性があるが、東大は「食べる段階まで残留していた恐れは
小さい」と話している。(以下略)
毎日新聞 2008年10月2日11時47分
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最初のごまかしは「研究目的での使用は認められている」っ
てとこ。実際は「新薬登録申請のため」などに限られ、
この件のように一般的な使用は明らかな農薬取締法違反です。
…で、彼らはなぜ、73年に「禁止された」農薬を、ごく
最近まで使っていたのでしょうか?
第二のごまかしがここです。農水省は、明らかな毒物で
ある酢酸フェニル水銀を含むこの農薬(クミアイ水銀錠剤)の
製造・販売は禁止したけれど、使用は野放しだったので
すね。東大だって、そこはわかっていて、ちゃんと開き直
っていますよ。
「使用当時(1997~1999年度)においては、登録失効とな
っていましたが、厳密に言えば使用禁止農薬とはなってい
ない状態でした。」
(http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_201002_j.html
:東大プ
レスリリース。マスコミはここを報道していません。)
第三のごまかしが、「少なくとも3年間使っていた」の
部分。記事は「97~99」までと、読者に予断を与える書き
方をしていますが、上の状況から考えれば、2003年に正式
に「使用禁止」とされるまで、この農薬をずっと使ってい
た可能性がきわめて高いのです。
四つ目のごまかしは、この事件を、特定の職員が引き起
こした「不祥事」として片付けようとしていることです。
本当は全国で同じようなことをやってたはずですが、最
高学府を叩くことで、他の事件をもみ消そうというわけ。
農水省の通知↓は、けっして調査と報告を求めていません。
「同様の事案の再発を防止するため、本日付けで農薬を
使用する可能性のあるほ場を有する教育機関等に対し、
指導通知を発出しました」
(http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouyaku/081003.html
農水省)
あるいはこの事件、日本の産業会が「水銀農薬」の「安
全性」を示すために行った、大学主導の大がかりな長期人
体実験かもしれません。
どうしてかって?
実は今、各国で水銀使用を規制する条約作りが進んでい
ますが、これが通ると、日本では「ごみ焼却」さえできな
くなるおそれがあるからです。妙な報道のウラには隠され
た「世界の動き」がある。そのことをいったいどれだけの
日本人が知っているでしょう。
(環境中の水銀については、「ごみを燃やす社会―ごみ焼
却はなぜ危険か」をご覧下さい。)