米子産廃、伊木米子市長のウソ

ちょっと目を離していたすきに、米子の産廃処分場計画がまたも妙な方向に向かっていました。この事業には地元の淀江漁協が強烈な反対に立ち上がったため、実質的には先へ進めなくなっていたのですが、事業主体(県などが出資する「事業センター」)は産業界からせっつかれたのか、さらに手続きを進めようとしているのです。具体的には、センターは鳥取県条例にもとづいて、県に「(説明会についての)実施状況報告」を提出し、関係6自治会と自治体(米子市)から、その報告についての「承認」を得るというもの。これが終わると、手続きはさらに一歩進みます。

 もっとも、この鳥取県条例自体が違法の塊なのです。だって、本来は事業者の責務とされた産廃処理を、県が肩代わりするというのだから、廃棄物処理法に完全に違反しているのは明らか。また、同条例で決める「関係住民」とは、半径500メートル以内の自治会の会員その他だけで、その自治会をはずれた501メートルの住民は、意見書も出せず、説明も聞けません。しかも、条例をよくよく読むと、「自治会長が賛成すれば着工できる」という仕組みになっているのだ。

 そして、米子市の伊木市長は、今日29日午後に行われる全協で、平井鳥取県知事にあてた下のような回答(案)を発表するとのこと。これがまたひどい・・・問題箇所に下線を引きました。

               (案)                  資料2

環政起第2532号-3

平成29年 月 日

烏取県知事平井伸治様

米子市長伊木隆司

実施状況報告書について(回答)

 平成29920日付け第201700154632号で照会のあったことについて、次のとおり回答いたします。

 公益財団法人鳥取県環境管理事業センターが作成した実施状況報告書については、周知の対象とした地域、広告及び縦覧に関する事項、説明会に関する事項について相違ないことを確認いたしました

 また関係住民の状況については、本市が聞き取りを行った結果、別紙のとおり事業計画について一部の自治会の会員の中に理解を得られていない方がある状況と考えております。こうした関係住民の状況を踏まえ、今後、鳥取県廃棄物処理施設の設置に係る手続の適正化及び紛争の予防、調整等に関する条例の規定による意見調整等が行われる場合においては、関係住民と事業者の相互の意見及び見解の理解促進を図るとともに、烏取県廃棄物審議会の意見を聴きながら手続きを行っていただきますようお願いいたします。なお、関係住民への説明会、関係住民から提出された意見書及び再意見書において、生活環境影響調査の結果、搬入管理、遮水構造、集中豪雨への対応、地震による影響、放流先の水質への影響、地下水への影響等のご意見があったものと考えておりますので、専門家で構成される鳥取県廃棄物審議会の意見を聴くなど、施設の安全性について十分に確認していただきますよう要請いたします。

 腹が立ってワナワナします。

 1 まず、市にあてた実施状況報告を一般市民は見てもいません。見てもいないものを「相違ない」といわれても、それが事実かどうか判断できない。

 2 「本市が聞き取りを行った」のは、自治会長と役員会のみ、一般の住民はそもそもその実施状況報告さえ見ておらず、県市が聞き取りを行ったことも知りません。自治会長らが勝手にOKすれば、それでいいのか。

 3 「一部理解を得られてない方がある状況」は、真っ赤なウソじゃないの。だって、「関係6自治会」のうち、4自治会では過半数の住民がこの事業に反対の意思を示した署名に自筆でサインしており、その反対署名簿一式(原文)をあなたに届けたじゃないの。それをなかったことにして、「一部理解が得られていない」? こんなウソは地方自治体の長として許されない暴挙。正直に、「四自治会では過半数の反対がある」といわない限り、住民は許しません

4 「関係住民と事業者の理解促進」と、他人事みたいに言うんじゃないの。なんてったって、この事業は米子市が土地さえ提供しなければ実施できないのに、市長は本会議でもその事には触れようとせず、この文書でも言及を避けている。これはすでに水面下で土地提供を承諾しているからだと考えられるけど、それは特別背任行為にあたるよ。

5 鳥取県廃棄物審議会とは、環境省と県、そして産業界の飼い犬。田中勝会長は昨年?の段階で、「この事業は安心、安全」などと発言したことが報道されているし、今の廃棄物処理に関する問題意識などゼロ。むしろ、こういう連中の関与は拒否したい。

6「施設の安全性」など確認できないって。事業者は説明会でPRTR物質のひとつさえあげることができなかったし、それどころか「雨で汚染を洗い流して、だんだん汚染度を減らしてゆく」と明言してるのよ。・・・これは、汚染水は薄めて川から海に流すから心配ないという意味。どれだけ地域住民を馬鹿にしているのか。

7 それ以前に、事業計画周知の段階で、「土地関係調書」約50ページを抜き取った責任はどうするのよ。抗議されてこそこそ公開したけれど、その後も、説明会資料を真っ黒に墨塗りにして出すというお粗末。・・・この事業には隠したいことが山のようにあると考えざるを得ないじゃない。

 また↓の「別紙」にも腹が立ちます。

(別紙)

A自治会 H29.9.25(月)午後130分~140

  • 説明会の状況、意見書、地域振興についての事実関係は、センターの見解のとおり

  • 自治会の状況は、センターの見解のとおり。

B自治会 H29.9.22(金) 午後350分~4 

  • 自治会の状況は、センターの見解のとおり

  • 自治会として反対はない

C自治会 H29.9.22(金)午後245分~340

  • 説明会、意見書についての事実関係は、センターの見解のとおり

  • 処分場がどこかに必要であることは理解している。

  • 事業内容は、概ね理解していると考えている。

  • 処分場の設置については、消極的に同意しているというスタンスである。

  • 地域振興については、センターに対し要望を示し、委員会を設置してセンターと打ち合わせをしているが、細かな話はしていない。

D自治会

  • 自治会の状況について聞き取りをお願いしており、後日面談する予定

E自治会 H29.9.21 (木)午後650分~735分。

  • 自治会の状況は、センターの見解のとおり

  • センターは丁寧に対応しており事業計画は理解したが、何度も同じような内容の説明会で、全体の進行状況がわかりにくい。

  • 今後は、環境保全協定や地域振興など、テーマがわかるように話をしてもらいたい。

F自治会 H29.9.22(金)午後140分~2

  • 会員から提出された意見書、見解書の内容は確認していないが、意見書を提出した経緯はセンターの見解のとおり

  • 自治会の要望、理解については、センターの見解のとおり

農業者 H29.9.21 (木) 午後0時~030

  • きちんとやることさえしてくれたら反対ではない。

  • 処分場がどこかに必要であることは理解している。

  • センターの事業計画や説明内容については理解した。

  • 見解書については、具体的な数値の回答がなく不満だが、今後、環境保全協定のなかで協議していくという話があれば、意見書を提出しなくてもよかった。

水利権者 H29.9.21 (木) 午前930(電話)

  • 米子市の確認を拒むものではないが、実施状況報告書の記載内容がわからないので、対応できない。

  • 後日面談する予定

 

 回答した6自治会とは、小波上、小波浜、上泉、下泉、西尾原、福平。 水利権者には報告書さえみせず承認をとろうとするなど、相当あせっていますね。また、もっとも被害が大きいはずの農業者がOKしているのは悲しい。

1 「関係6自治会」のうち、一自治会以外はすべて「センターの見解どおり」とあるけれど、実施状況報告を見たのも、県市の聞き取りに対応したのも自治会長と役員だけで、一般住民はそんなことが行われていることさえ知りません(確認してもらいました)。これで済ませるとはあまりに非民主的。「自治」が聞いてあきれる。事業者にとってはその方が都合がよくても、自治法に反します。

2 しかも、回答していないその一自治会の「実施状況報告」のは「反対はない」と書いてあるなど、住民が訂正を求め、さらに承認しないよう騒いでいるとのことです。

3 この事業について、リスクとベネフィットをまともに論議した上で総会決議を行った自治会はありません。会長らに住民を代表して、県市と交渉する権限もないはず(あれば自治会規則で決めているはず)。

4 しかも、役員には公務員も、産廃事業などにかかわる人もいるでしょう。そういう場合、この問題では利益相反の立場にあるため、基本的に役職は避けるというのが常識。鳥取県の自治会・町内会にはそういう常識は通じないのか。

5 上述通り、4自治会では反対多数だというのに、見返り(地域振興)を話し合っているのは、金の亡者が仕切っているからか。

 要は、「処分場」の害がまったくわかっていない、自治会長や役員の多くは(全部じゃないでしょうが)カネにしか目が行っていないということです。

 そして最後に、

6 市長が「医療廃棄物の処分場が必要だ」発言をして、私も初めて、淀江に医療廃棄物が来ることを知りましたが、説明会記録を読む限り事業者は一切そのことについて説明していません(墨塗り部分がそうなのか?)。また、住民もそのような認識はなく、熱心に反対運動をしている水の会のメンバーも「そんなこと聞いていない」でした。医療廃棄物には「感染性」「放射性」など、そのほかの産廃と性質がまったく違うため、環境への負荷も人体への影響も大きく、欧米では大きな反対運動がおきて普通の産廃より立地が困難なのです。医療廃棄物を入れるというなら、これまでその問題に触れなかった=だましていた=ことから、手続きを一からやり直し、説明を尽くさなければなりません。でも、今の事業センターは当事者能力ゼロということは誰にでもわかるので、次からはやはり産業界と産廃業者が出て来ないとね。

 ・・・この記事、昨夜のうちにアップしたはずですが、なぜか消えていました。なので、書き直しアップしましたが、間にあう人はどうぞ本日午後、議会全協にかけつけてください。2017.9.29

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/