放射能セメントが全国拡散する

 横浜市はこっそり「放射能汚染の下水汚泥」をリサイクルしていました。市民からの反対もないし、再開しても大丈夫と考えたようですが、大都市で発生する下水汚泥は量が違う。原発再稼働に反対なら、放射能セメント(原発の「トイレ」になる)にも反対して欲しいんですけどね…

放射性物質含む汚泥焼却灰 横浜市が建設資材化へ
2014年7月25日 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20140725/CK2014072502000118.html 

 東京電力福島第一原発事故の影響で横浜市の下水汚泥に放射性セシウムが含まれ、最終処分が凍結されている問題で、市が焼却灰を建設資材化する業者に試験的に搬出し始めたことが分かった。市は「資材に混ぜて薄めるため、放射性廃棄物として扱う必要がないレベルになり、安全と確認している」としているが、発表していない。 (橋本誠)

 毎日約四十トン発生する焼却灰は以前はセメント原料として業者に再利用されていたが、原発事故で停止。二カ所の汚泥資源化センターに保管されている量は約三万四千五百トン(六月末現在)になり、置き場所は限界に達している。市は新たに発生する焼却灰を南本牧廃棄物最終処分場(中区)の陸地部分に埋め立てる計画だが、住民や港湾関係者の反対で実現していない。保管している焼却灰の放射性物質濃度は、二〇一一年六月に測定された一キログラム当たり六四六八ベクレルが最高。国の基準の一キログラム当たり八〇〇〇ベクレルより低く、最近発生しているものは同数百ベクレルに下がっている。市によると、業者から「三〇〇~五〇〇ベクレルなら建設資材に使える」と提案があり、今月十八、二十四日に各約九トンを南部汚泥資源化センター(金沢区)から搬出した。二十五日にも搬出し、八月中旬からは毎日十トンずつ来年三月末まで運び出す予定。市が負担する処理経費は一トン当たり約三万円となる。市下水道施設管理課は「震災直後から保管している焼却灰は無理だが、日々発生している新たな焼却灰は処理できる可能性がある」としている。

◆「風評被害招く」と業者など非公表 市民ら懸念「計画明らかに」

 横浜市は焼却灰の建設資材化を始めたことを発表せず、資源化の詳しい方法や業者名も公表していない。「風評被害を招くため」としているが、関係者らからは疑問の声も出ている。本牧・根岸地区連合町内会の岩村和夫会長は「以前にセメント会社が引き取っていたように資源化できるのなら、資源化していただきたい」と一定の理解を示す。ただ、市から詳細は聞いておらず、「実際にやるなら事前に知らせてほしかった」とも話している。市民団体「hamaosen対策協議会」の大谷賢治共同代表は「搬出されている焼却灰の放射性物質濃度や使い方がはっきりしていない」と前置きしたうえで、「拡散につながるような使い方はやめてほしい。計画を明らかにし、民主的に進めてほしい」と懸念を示した。井上さくら市議は「薄めて拡散させるのではなく、濃縮して容積を減らし、管理すべきだ。少なくともデータを公表してほしい」と求めている

 灰を「濃縮して容積を減らす」とは「灰の溶融固化」を意味しています。その処理の過程で汚染物質がさらに外部へ拡散し、莫大なエネルギーが必要なので、環境省だってこの方式を事実上、取り下げているんですけどね・・・それにしても、世界がびっくり仰天することは間違いない「放射能汚染焼却灰のリサイクル」。その出所はもちろん環境省です。政府がセメント協会に「下水汚泥等をこれまで通り受け入れろ」と圧力を伴う通達を出したのは2013年6月28日。以下はセメント協会のHPから。http://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/110728.html

  ・・・政府(厚生労働省、経済産業省、国土交通省)から6月28日付けでセメント協会に対して、放射性物質が含まれている脱水汚泥等を安定的に受け入れるよう要請があり、会員各社に周知を行いました。  要請内容は以下のとおりです。

 ①セメントを生コンクリートや地盤改良材として利用する場合には、生コンクリートや土壌と混練する段階まで管理されていることから、少なくともセメントが2倍以上に希釈されることを考慮し、セメントの段階ではクリアランスレベルの2倍の濃度まで許容されることになる。ただし、セメントとして袋詰めで一般に販売される場合には、販売店に引き渡される前に、セメントの段階でクリアランスレベル以下とすることが必要である。セメント各社は、脱水汚泥等の放射能濃度の管理や希釈度合いをコントロールし、セメントを利用して製造される生コンクリート等が安定的にクリアランスレベル以下とすることにより、今後共脱水汚泥等を安定的に受け入れるようにお願いしたい。

 ②別添2では、セメントのユーザー団体(124団体)ならびに下水道管理者(都県ならびに市の24自治体)に、上記①の内容を満たしているセメントを利用して差し支えない旨の周知が行われています。

 なお、クリアランスレベルについては「セシウム134とセシウム137の放射能濃度の和が100Bq/kgである」ことが明記されています。

ーーーーーーーーーーーーーーーー  セメント協会の会員社ではこの要請を受け、放射性物質が検出された下水汚泥、浄水発生土の使用について慎重に検討し、セメントの放射能濃度が政府より示された要件を満足することを確認して、下水汚泥、浄水発生土の使用を順次、再開しております。セメント協会への要請文

 ①は、最終製品さえ100ベクレル以下なら流通させろ、②関係者の間ではちゃんと話がついている、という意味。そに流れる思想は「薄めれば安全」と、ごみ処理のコンセプト(循環型基本法)とまったく同じ。 ね? 知らないのは市民だけで、政府も地方自治体も企業も、とっくに「これまで通り」で動いており、そこに横浜市が加わるだけです。市民は、少なくとも焼却灰の行方が追えるように「台帳」「追跡調査」を要求すべきですが、大都市ではそんな声も出ないだろうなあ。2014.8.1

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/