戻っておいで~汚染地に「基準を引き上げたから、安心だよ」

 …いずれこういうことを言い出すとは思っていましたが、行政機関ではなく、汚染を「規制」する側がそれを口にするとは。

除染基準「引き上げるべき」規制委員長が表明
http://www.sankei.com/life/news/180117/lif1801170068-n1.html
2018.1.17 20:09
 産経新聞

 原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長は17日の定例会合で、除染の目安とされている空間線量「1時間当たり0.23マイクロシーベルト」について「実証データから1マイクロシーベルトの所に居住しても年間の被曝線量は1ミリシーベルト以下になる」と指摘し、「改めないと帰還や復興を阻害する」として環境省は引き上げを検討すべきとの考えを示した。更田氏によると、帰還者らが身につけた線量計の実測値で判明したという。自ら同省に働きかける考えを示したほか、事務局の原子力規制庁は「どのような場でメッセージを出していくか検討する」としている。

 実証データも何も、行政のデータはみな作為的、放射性廃棄物(鮫川村)の焼却実験のデータはほぼ墨塗りであることは、山本も実体験しています。それに、廃炉・事故処理作業にあたる労働者の被爆に関してはデータも出さず、子どもの甲状腺がんに至っては福島県と共謀して、原発事故との関係を完全否定。

 今、福島県の子どもたちの193人が甲状腺がんを発症しています。この問題をずっと追っかけているサイト「福島原発事故の真実と放射能健康被害https://www.sting-wl.com/fukushima-children15.html」によると、その分布図は以下のとおり。

福島県子供の甲状腺がん市町村別地図の2017年6月30日版と2017年9月30日版の比較

 

「福島県の発表は甲状腺がんを、悪性…悪性とはがんのことですが『悪性ないし悪性の疑い』という言葉を使い、あたかも甲状腺ガンでない子ども達もこの中に含まれているように書くことで、焦点をぼかしチェルノブイリ原発事故との比較を困難にしています。
しかし手術を終えた160人の中で、良性結節だったのはたった1人にすぎず、157人が乳頭癌、1人が低分化癌、1人がその他の甲状腺癌との診断です。つまり『悪性ないし悪性の疑い』のうち99%は小児甲状腺癌でした

 

 同サイトによると、かつて「100万人に一人」といわれていた小児甲状腺がんは今や100倍以上に増えています。これは、原発事故が起きると、子どもがまっさきに被害者になるという証明でもあります。

「福島原発事故前まで日本国における小児甲状腺がんは年間100万人に0~3人で推移してきました。しかし今回の福島県の調査では年間100万人に301~401人と従来の100倍を超える小児甲状腺がんが見つかっています。

100万人に0~3人→100万人に301~401人」

 ところが昨年、それまですべて公開されていた小児甲状腺がんの発症者が住む市町村名は、突然、非公開となったそう。

「市町村名はすべて非公開になった…事のいきさつは、こうです。2017年6月5日の福島県の県民調査検討委員会の席上。今まで福島県内の甲状腺がん患者数を59市町村別で発表していたのに3本格検査からは市町村名はすべて非公開とし、福島県を4つの地方…具体的には中通り地方、浜通り地方、会津地方の3地方と避難区域等に4つに分割して発表すると福島医大の大津留晶教授が一方的に宣言」したとのこと

 またもや福島医大! なぜその時点で、突然市町村名の発表を取りやめたのか? 子どものプライバシーを守るためとかなんとか言ったようですが、そりゃないでしょう。このサイト主は、次のように推測しています。

「今まで甲状腺がんの子供が見つからなかったのに新たに甲状腺がんの子供が発見され、その市町村に配慮するために福島医大が市町村別を廃止したと仮定します。すると13町村だけが残ります…これは私の単なる推測ですが、ひょっとすると飯館村で甲状腺がんの子供が見つかったのではないか?私はそう考えています。」

中通り地方
国見町、小野町、矢祭町、浅川町、古殿町、天栄村、鮫川村、玉川村
避難区域
双葉町、広野町、楢葉町、葛尾村、飯舘村

 そうかもしれません。飯舘村で小児甲状腺がんが出たことがわかったら、すべての「避難民帰還計画」がダメになるからね。なお、私は「鮫川村」で見つかったのかもしれないと考えています。いろんなごまかしを重ねて放射性廃棄物の焼却実験を行い(その過程で爆発事故まで起こした)、終わったらさっさと解体して証拠隠滅を図った(そのデータは前述どおり、ほとんど非公開)。

 地形の関係から比較的汚染が少なかったといわれていた鮫川村、そこで、小児甲状腺がんが発症したとしたら、そりゃあ放射性廃棄物の焼却との関係を指摘するのが妥当な線でしょう。・・・あの下劣で不正直な鮫川村の市長や職員を考えると(環境省はもっとひどい)、自分たちの身を守るためならどんなことでもやらかすはず。

 原子力規制委員会が除染基準をあげろ、というのはいろんな問題をみんなぐちゃぐちゃにして上昇した汚染を「標準」とみなすことにする、という意味です。これって犯罪じゃないの? 2018.1.31

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/