徳島広域ごみ、「反対」無視して今年度中に基本計画決定

 自治体間の不均等・不公正を拡大し、汚染の再生産を増長させる「広域ごみ処理」。でも、住民がそれらの問題に気付くのはずっと後の話で、計画段階ではあたかも「何も問題がない」ような形で進められます。

 

広域ごみ施設整備負担額 石井25億円 徳島市が計画案公表

11/30 14:00 http://www.topics.or.jp/articles/-/132166

  徳島市は29日、周辺5市町と計画を進める広域ごみ処理施設の整備を巡る各市町の負担額を市議会文教厚生委員会に示した。徳島、小松島両市以外の4町の負担額が明らかになるのは初めて。維持管理費の増加などを理由に、生ごみを使うバイオガス化施設の整備を見送ることなどを盛り込んだ基本計画の素案も公表した。本年度中に基本計画を策定し、2027年度の利用開始を目指す。

   用地取得費などを除いた事業費は概算で約444億円。国の交付金などで賄う分を除くと6市町の負担額は計約200億9千万円となる見通しで、各市町の負担額は均等割、人口割で算出した。徳島市90億7千万円▽小松島市34億5千万円▽勝浦町9億円▽石井町25億1千万円▽松茂町17億4千万円▽北島町24億2千万円―となっている。施設は徳島市飯谷町枇杷ノ久保の民間採石場を最有力候補地とし、熱回収により発電する焼却施設とリサイクル施設を整備。焼却炉の処理方式は建設費が比較的安価な「ストーカ方式」を採用し、処理できるごみの最大量は1日当たり396トンと想定している。バイオガス化施設では生ごみを原料にメタンガスを発生させて発電に利用できるが、維持管理費がかかるとして導入を見送る。委員会では、武知浩之氏(朋友会)が事業費について「用地取得費を含めると大きく膨らむのではないか」と質問。森井嘉一氏(交志会)は「バイオガス化施設の整備を見送ると再資源化に対応できない」と指摘した。谷口出穂環境施設整備室長は「想定外に上がらないと考えている。熱回収による発電などで再資源化は可能だ」と答えた。市は基本計画の素案について、12月中旬からパブリックコメント(意見公募)を行う。

 市はこの基本計画素案で、「最有力候補地」として徳島市飯谷町枇杷の久保 11.7haをあげ、地形は「採石場、概ね平坦な地形、下の道路から約30m上がったところにあり。資材等置き場として利用」などと記しています。

 ごみ処理の問題を知らない人は、これを読んで、「あ~新しい施設ができるんだ」「まあ、妥当な土地では」と思うかもしれません。でも、この土地はひどい汚染をもたらしている産廃処理施設の隣接地であり、周辺住民はすでに長年にわたり、その汚染への対応を求めてきました。徳島市はその声を聞き届けるどころか、さらなる汚染をもたらす計画を実行しようとしているのですが、地元紙でありながら、徳島新聞は一切、そのことを書いていない。こうして行政に協力しているのですね。

 腹が立つのは、この予定地のすぐ隣にある美しい鳴滝とハイキング道橋は、すでに産廃施設に侵食され、一部産廃などが散乱していること。この鳴滝はとくしま市民遺産の一つであり、市民が将来に引き継ぐべき宝物とされているのに、その隣を汚染源にしといて、いいの?と言いたい。 

鳴滝

鳴滝、じゃらんでも「夏に訪れたい場所」の一つに推薦していた(https://www.jalan.net/news/article/98838/2)

 

 この基本計画が決まった後になって、問題に気づいた人々が「なぜここなんだ?」「どこで決めたんだ!」と怒り始めるわけですが…実際は、計画策定までの間、住民がおとなしくして、反対さえしなければ、場所はどこでもいいのです。たとえ反対運動があっても、有効な動きができない場合、行政はむしろその運動を利用して「条件闘争」へ向けるもの。その一方、行政側はイエスマンだけの「学識者」「市民」を集め、何度も形式だけの「会議」を開き、いかにも合法的に見えるように計画を固めてゆくもの。

 山本はこの前段の計画(予定地佐那河内村、村民の反乱でつぶれた)にかかわり、徳島市などで、計画が決定されるまでの経緯をじっくり聞きだしました。その結果、誰がいつどう関与して、計画を固めて行ったのかを示す資料はないこと、担当者でさえ文書の記述や組織などについて説明できないことを確認してきました(予想通りでしたが)。

 ごみ処理施設は「生活に欠かせない」と言いながら、その建設計画は、法律から離れて根拠を示せない形で練られ、市民に押し付けられているのです。これは徳島市に限らず、他の地域でもすべて同じ。なぜなら、廃棄物処理施設はすべて利権に関係しているし、公害源として法定されている(廃棄物処理法、大気汚染防止法など)ため、住民に知らせないのが最も都合がいいからです。

 また、この徳島広域の基本計画は、それを審議する市民会議は単なる通過儀礼であり、すでに来年3月までに決定することまで決まっていました。それを示すのが下の資料。徳島広域ごみ処理施設は、飯谷町民だけでなく、多くの徳島市民の不安を無視して強行されることはほぼ間違いありません。

 わずか二週間のパブコメ期間中、市民はできることをやらないとね。2018.12.4

 

 

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/