京都市が灰処理施設の契約を解除

 ごみを燃やし、灰を溶融固化して再利用する→→これが、環境省の「循環型社会」の根幹です。このシナリオがいずれ破綻することは、当初からわかっていたのですが、フクイチ事故で拍車がかかっています。ところで、市町村はとっくに自治体は溶融固化施設なんかあきらめたと思っていたら、まだこの計画にしがみついていた自治体がありました。京都。

 単体の巨大焼却灰処理施設を作るというから、非常に実験的な試みです。しかもその規模は330トン/日処理量と、これを聞いただけでも、スケールアップに伴う問題が出てくることは想像できます。それを受けた住友重機は、なんとでもごまかせると思っていたのかも。しかし、京都市は、性能発注という形式でプロジェクトを公募し、問題があればメーカーの責任にするという約億を取り交わしていたのです。
 その結果…出るわ、出るわ。試運転開始後、すぐ、耐火煉瓦の亀裂、ダイオキシンの基準値越え、減温塔での目詰まり、ダストの堆積と落下現象などなど。焼却灰には、ごみ焼却の際に出た汚染物質が移行していますが、それが、灰溶融炉の高温で、また環境中に出ているのですね。ここでは調査していないようですが、おそらく、有害重金属もガス化して相当拡散されているはず。・・・で、この八月末の引渡しなどとんでもないということで、京都市はようやく目がさめ、契約解除に至ったもの。

京都市が工事契約解除へ
トラブル続発、伏見の焼却灰施設

京都新聞-2013/08/01 http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20130801000025
 トラブルが相次ぎ稼働のめどが立っていない京都市のごみの焼却灰溶融施設(伏見区)について、市は31日までに工事を請け負う住友重機械工業(東京都)との契約を解除する方針を固めた。契約で決めた8月末までの引き渡しが「不可能」と判断したためで、8月1日に同社に解除方針を通告する。ごみの焼却灰を高温で溶かして、体積を半分に圧縮する施設で、市は今後50年間利用する予定の市東部山間埋立処分地(450万立方メートル、山科区・伏見区)を20年程度延長するため稼働を急いできた。すでに建屋は完成しているが、同社に撤去を求める方針で、計画が振り出しに戻ることになる。市は2005年、プラント施設の建設工事を114億円で同社と契約したが、施設内の排水から基準値を超えるダイオキシンが検出されるなどトラブルが続出。同社は12年7月、改善した上で今年8月末までに引き渡すとしていた。6月中旬から試運転を行ったが、同月27日に溶融炉内でダストが堆積する不具合が見つかり、試運転を中断。市は原因調査と改善策を点検・評価するため、学識経験者らと「性能評価会議」を設置し、同社が示した改善策を検討してきたが、「有効性を確認できない」と判断した。8月末の期限までに引き渡せない見通しとなり、契約解除を求めることにした。焼却灰溶融施設は当初、10年6月稼働を予定していたが、トラブル続出で、同社から遅滞損害金として約22億円が市に支払われた。市は溶融炉の運営基金として積み立てている。市幹部は「トラブルが多く、安全な施設として引き受ける状況になく、市民にも納得されない。契約解除をせざるを得ない」と話し、今後、新たに同様の施設を建設するかは未定という。

 でも、少し前だったら、試運転後の調査なんかもぜ~んぶ関連業者に丸投げし、業者の適当な報告を、適当に聞き置いて、本格稼動に入っていたはずです。フクイチ事故後、公務員が多少危機感をもつようになったのか、あるいは有能な事務官がいたのでしょう。
 市町村の炉だから、市町村が中止できる。
 盆地の京都市は、非常に汚染物質がたまりやすい地形的特長があるから、今後、焼却施設も段階的にとめていって欲しいな。2013.8.6

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/