中国のPM2.5汚染

  今年初めから中国のPM2.5汚染が大きなニュースになっています。とりあえず、私の「がれき焼却で何がおきるか」の動画と、拙著「ごみを燃やす社会」をあわせてご覧いたけば、問題の深刻さがわかるでしょう。
 まず、中国のPM2.5は「霧(ウー)」という自然現象とともに出現します。
http://news.xinmin.cn/shehui/2013/01/16/18193060.html (南京市)
 これはNASAの地球観測所(EARTH OBSERVATORY)が発表した写真。
http://www.chinanews.com/tp/hd2011/2013/01-16/166179.shtml#nextpage
 霧だけなら単なる自然現象。風がない朝など、放射冷却で地表面の温度が下がって大気の逆転現象が起こり、よどんだ大気が都市の上空をすっぽり包んでおきるのが汚染霧。南京に住んでいた頃、町をすっぽり覆う霧に何回も出くわしました。ひどい時は交差点の向こう側もはっきり見えず、道路を渡るのが怖いほど。CCTVは「本日の空気質量」情報を流していたし、「軽度汚染、外出はなるべく控えて」なんて注意もありました。当時、「南京だより」でこういう風物についてせっせと書き送ったものです。その後、霧の影響がほとんどない山東省に移り(毎日、青空!)すっかり忘れていました。
 中国北部は地理的条件(黄土高原、砂漠地帯、乾燥、冬季の石炭暖房)から、もともと霧が出現しやすいのです。それが「世界の工場」と化し、経済発展によって、工場排ガスや自動車排ガスが増え、問題が深刻化しました。政府は新しい「空気質量標準」を定め、観測地点を増やすなど対策におわれていますが、焼け石に水。現状では大都市はどこも50μg/立米を超え、WHOの「安全値」10μg/立米を大きく上回っています。それが今回、200とか300になったのだから、人が住める状況ではありません。
 でも、日本だってほんの数年前までPM2.5についての情報はほとんどありませんでした。今回、国立環境研究所↓の「説明」を発見しましたが、以前はこういう分類さえ見当たらなかった。
 http://www.nies.go.jp/kanko/news/20/20-5/20-5-05.html
  (SPM、PM2.5、PM10・・・、さまざまな粒子状物質)
 昨年12月は大坂のがれき試験焼却でPM2.5が大きく増えた時、環境省は「中国の黄砂のせい」と説明。今後も「日本の大気汚染は中国のせい」と言いたいようですが、違うって! 大坂の試験焼却当日は、関西付近は風がないおだやかな天気、それに黄砂の影響を最も強くうける九州や北陸は安全圏でした。つまり、大坂のPM2.5は国産だったのです。
 中国は、今回のPM2.5の排出源として、6割が化石燃料の焼却(暖房用)にあることを認めています。これは組成分析すればすぐわかるので。
http://business.sohu.com/20130117/n363708876.shtml
 焼却炉は、もっとも多種多様なPM2.5を、最も大量に吐き出す施設ですが、環境省は一切その組成分析を行わず(御用機関の調査は信用できない)、焼却炉を「クリーンセンター」と称して市民も職員もだましているのです。昨年、がれき問題に関し、各地で行政職員と話し合いましたが、PM2.5という言葉を知っていた職員は一人もいませんでした(橋下大阪市長含め)。行政は、自分たちの事業がどれほど市民を傷つけているか、いいかげん認識すべきです。自分たちだって市民なんだから。2013.1.17

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/