メルトダウンを事前に知っていた

  政府が昨日(2012年3月9日)発表した原災本部の議事概要は、彼らが311当日、フクシマのメルトダウンの可能性を認識していたことを明らかにしています。 
 炉心溶融の可能性指摘 対策本部議事概要
 毎日新聞 3月9日(金)11時49分配信

 政府は9日、東京電力フクシマ第1原発事故への対応を行った原子力災害対策本部の議事概要などを公表し、事故が発生した昨年3月11一午後7時過ぎに開かれた第1回会議から、炉心溶融(メルトダウン)の可能性が指摘されていたことが明らかになった。翌12日正午過ぎからの第3回会議でも炉心溶融を懸念して避難範囲の見直しに言及した閣僚もおり、政府が早い段階から炉心溶融の可能性を認識していたことがうかがえる。(後略)
http://mainichi.jp/select/science/news/20120309k0000e040175000c.html

 当時、国外にいた私は、正式な情報を得るため、何回も政府のサイトを検索しました。でも、その時点で、文書も議事録も見当たらず、へんだとは思っていました。行政の仕事は「記録を取ること」に尽きると言っていいからで、問題の大きさを考えると、アップが遅れているとは思えなかったのです。
そのうち、フクシマの状況悪化に気をとられて忘れていました。
 一番重要な情報を、「議事録を作成していなかった」、という理由で隠し続けてきたというのは、犯罪者集団がやることです。でも、このニュースは決して新しいものではありません。2011年3月28日には、共同通信が、「保安員が炉心溶融の可能性を、震災当日に予測していた」という特ダネを流しています。文書や関係者談話を元にしたもので、当日のうちに報告は管総理まで届いていたとのこと。http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2011032802100014.html


 また2011年9月3日には、3月11日のうちに「翌日に福島でメルトダウンが起きる」ことが管首相にまで伝わっていたが発覚した、というニュースも流れました。 http://news24.jp/articles/2011/09/03/07189922.html 
 いずれも、政府が事前にメルトダウンを察知していたことを示しています。もっとも、記事の目的は、すべての責任を管元首相に集めることが目的のようですが、実際には、多くの政府関係者が組織的に沈黙を守っていたこともまた明らかになっています。議事録を作らなかった、というのも、何らかの緘口令が敷かれたことを意味しています。ここでこう聞きたくなる人もいるのでは。
 
 「なぜ政府はみすみすメルトダウンを回避するチャンスを生かさなかったのか?」って。
 この質問は的はずれ。上の経緯をたどると、メルトダウンを期待していた向きがあったことがわかりませんか? なぜ? もちろんカネのためです。汚染や事故、戦争は大きいほど、修理・修復・復旧のために多くのカネが動くもの。原発メルトダウンとくれば、将来数十年にわたって、関連産業は安泰なわけです。アメリカのように戦争特需を期待できない日本は、くり返し「公害特需」を自ら演出してきたのです。事故後一週間、東電社長が雲隠れしていたのも、このシナリオの中で読み解く必要があるでしょう。
 だから、以後の政府発表はうそばかり、こう思って間違いありません。がれき広域処理に関する報道がそのいい例です。まさかそこまで…と思いたくなるようなことをやるのが、今の社会。政官財学媒の鉄のペンタゴン(五角形)の基礎にメスを入れる気概がないと、市民は自分の身さえ守れません。マスコミ報道はウラ読み、分析しないと、かえって妙な情報をばらまくことになりかねないのでご注意あれ。2012.3.10

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/