「再エネ」の中でも、「バイオマス発電」は風力やソーラーに比べて安全、有効、だなんて思っていませんか?
でも、昨日起きた山形のバイオマス発電所の爆発事件は、「バイオマス発電」なるものがいかに危険かをはっきり示しています。
まずは全国紙の報道から。
試運転バイオマス発電設備が爆発 「地面揺れた」 山形
朝日新聞デジタル – 2月6日(水) 20時2分
6日午後4時15分ごろ、山形県上山市金谷の工業団地で「爆発音が聞こえた」と119番通報があった。上山署によると、木のチップを使う木質バイオマス発電を手掛ける会社「山形バイオマスエネルギー」で設備の試運転を始めた直後、水素タンクのフタみられる直径約3メートル、厚さ約1センチの円形の金属板が飛び、南西に100メートルほど離れた民家の2階部分にぶつかったという。衝撃で室内の物が落ち、30代の女性が首にけがをした。また、周辺の三つの会社の建物で窓ガラスが割れるなどの被害を確認した。同社は、3月末に発電事業を始める予定だったという。現場近くで働く40代の女性は「屋根に大きな物が落ちたような衝撃音があり、直下型地震のように地面も揺れた」と話した。現場はJRかみのやま温泉駅から北東に約3キロの工業団地。自動車の部品工場などが集まっている。
海外では、バイオマス発電所は一般の廃棄物焼却炉(=発電所)より危険だとみなされています。ペレット処理の段階から毒性のある有機化合物(=ガス)が発生し、それを焼却するとなると、さらに高熱のガスが発生し、それをうまくコントロールしない限り、常に「暴走」の危険があるからです。それなのに、施設からわずか100メートルのところに民家があったとは、おそらくアセスなぞもまともにやっていなかったのではないか。
地元紙の山形新聞は、その爆発の衝撃をよく伝えています。
上山のバイオマス施設で爆発 民家に被害、女性軽傷
2019年02月07日 08:08 http://yamagata-np.jp/news/201902/07/kj_2019020700118.php
6日午後4時10分ごろ、上山市金谷の金谷工業団地内にある「山形バイオマスエネルギー」の発電施設で爆発事故が発生した。上山署によると、水素タンクの金属製のふたが吹き飛び、南西側の民家の壁を突き破り、中にいた30代女性が頭や首に軽いけがをした。周辺の工場や民家では爆風で窓ガラスが割れる被害が確認された。同署は7日午前に実況見分を行い、事故原因を調べる。
同署の話では、事故当時、発電施設は試運転をしており、稼働開始から10分ほどで水素タンクが爆発したという。吹き飛んだ金属製のふたは直径3メートル、厚さ1センチの円形。施設から約100メートル南西にある民家2階部分の壁を直撃した。けがをした女性は生後1カ月の娘とともにふたが壁を突き破ったのとは別の部屋にいた。女性によると、娘をあやしていた時に大きな衝撃を感じ、木片のようなものが頭に当たったという。「2階の部屋には、銀色の円盤のようなものも落ちていた。ぶつかっていたらと思うと怖い」と不安そうに話した。
施設の東隣にある少なくとも3カ所の工場などで、爆風により窓ガラスが割れているのが見つかり、他にも広範囲に爆発の衝撃や振動で建物の破損が確認された。事故があった発電施設は、建設業や産業廃棄物処理業の荒正とヤマコー(ともに山形市)などが木質バイオマス発電の新会社として設立した「山形バイオマスエネルギー」が運営。昨年12月に完成した。チップを高熱で炭化させた際に出るガスを燃焼させ、エンジンを回して発電する方式を採用しているという。現場はJR奥羽本線の茂吉記念館前駅から約500メートル南東側。
地震のような揺れ
耳をつく爆音と地震のような揺れは工業団地の外にまで広がり、周囲の建物のガラスが割れた。「雷の何倍も大きな音だった」。夕方に起きた爆発事故に辺りは騒然となった。現場周辺は広範囲に警察の規制線が張られ、「何があったのか」と様子をうかがう人も。被害の確認をしていた消防団員は「けがをした女性の家は壁と屋根が吹き飛んでいた。もし直撃していたら命は無かっただろう」と語った。発電施設の約100メートル南西の女性方は小屋の窓ガラスが割れた。自宅で何かが爆発したかと思うほど大きな音だったという。女性は「被害が大きい家の人は親戚方に泊まるそうだ」と不安げな表情を見せた。現場の川向かいにある工場にも揺れは伝わり、社内が慌ただしくなった。従業員の男性は「会議中、ドーンというものすごい音と振動があった。これが爆発の威力なのか」と驚きを隠せない様子だった。施設から500メートルほど北西にある山形盲学校は部活動や放課後の活動中だった。すぐに生徒や教職員の無事を確認し、帰宅を呼び掛けた。大宮知徳教頭は「まるで建物に何かぶつかったか落ちてきたかのような大きな音だった」と話した。
まず、死者が出なかったのが何よりも幸いでした。この事件で思い出すのが平成15年、三重県でおきたRDF発電所の爆発事故です。火の気などないはずのRDF(有機ゴミを圧縮してクレヨン状にし、燃料化したもの)の貯留槽が高温となり、対処していた消防士二人が大爆発の犠牲者となったのです(参照:http://www.fdma.go.jp/ugoki/h1510/07.pdf)。これがきっかけで、環境省は強力に進めていたRDF事業をこそこそ引っ込めたのですが、田舎の中小企業や自治体にはそんな情報は伝わりません。おそらく、ごみマフィアが売り込む「再エネ」に、「儲かる」と飛びついてしまったのでしょう。
バイオマス発電会社を設立、17年春操業へ 山形環境荒正とヤマコーなど
http://biomass-energy-news.net/?p=143
山形環境荒正(山形市、荒井寛社長)とヤマコー(同、平井康博社長)などが、木質バイオマス発電事業を手掛ける新会社「山形バイオマスエネルギー」を設立した。発電施設は上山市の金谷工業団地内に整備し、2017年春の操業開始を目指す。森林関係業者とネットワークを結び、林業活性化にもつなげる。発電施設の敷地面積はプラント部分で約4300平方メートル。1時間当たりの発電容量は2千キロワット弱を想定しており、一般家庭の約1500世帯分に相当するという。再生エネルギーの固定買い取り価格制度を活用して東北電力に売電する予定で、年4億円程度の売電収入を見込んでいる。投資総額は約13億円。木材消費量は年約3万トン。村山地域を中心に購入するほか、間伐材や果樹剪定(せんてい)枝などの一般納入も可能とする。山形環境荒正が発電施設に隣接する形で新工場を設け、集めた木材を木質チップに加工。発電施設では、チップを高熱で炭化させた際に出るガスを燃焼させてエンジンを回し、発電する方式を採用することにしている。新会社の本社は上山市金谷で、資本金は1千万円。山形環境荒正、ヤマコーのほか、県内の森林関係事業を営む数社が出資した。代表は荒井社長で、今後も出資者を募る方針だ。太陽光発電パネルの販売なども手掛けるヤマコーの平井社長は「再生可能エネルギーの中で、最も安定した発電ができるのは木質バイオマス。森林の再生を図るために、一緒に取り組むことにした」と語る。雇用は発電プラントそのものは10人程度だが、チップ製造工場や木材供給業者など波及効果が大きい。発電で生じる余熱の利用、木質ペレットの製造なども考えており、障害者雇用も視野に入れている。荒井社長は「木質バイオマス発電事業の成功そのものが、大きな社会貢献になる。広い意味で林業の振興も図っていきたい」と話している。
ま~、とんでもない思い違い、というより無知ですね。バイオマスは「安定した発電ができる」どころか、常に火災と爆発がつきまとっていることくらい、投資の前に調べればわかるはず。それに、「森林の再生」どころか、事業と提携している森林組合の山林はあっというまに丸裸にされ、燃料が不足し、海外の輸入に頼らざるを得なくなるでしょう。現に、関西電力は山形に建設予定だったバイオマス発電所計画を、「燃料高騰」を理由に取りやめています。エネルギー関連事業は、虚偽と誇大広告に満ちた危ない業界であることを知り、部外者(特に自治体!)は手を出さないこと。そうしないと大やけどするよ。2019.2.7