シーテック、官民共同で国定公園も保安林も破壊

 「シーテック」の続き。ドロナワですが、こういう事件でもないと、再エネ問題はなかなか追えないので…これは、評価が定まっていない(というか、失敗が保障されている!)分野で、企業と行政が結びつくと、どうなるかを示す見本です。原発と同じだよ。

 シーテックは中部電力の子会社として、主に電気設備事業・ケーブルテレビなどをてがけていましたが、2006年2月、三重県の青山高原に初の風力発電機8基を設置、稼働を開始しています。これが「ウインドパーク美里」。ところが同じ時期、すでに新たに20基を建設する計画「ウインドパーク笠取」のアセスを進めていました。場所は同じ青山高原。http://www.ctechcorp.co.jp/news/pdf/18-2-17.pdf

 青山高原は、北陸から伊勢湾に抜ける「風の通り道」と呼ばれ、「風速毎秒7メートル以上の風が安定してい吹いている」ことから狙われた模様。ここでは、三セク「㈱青山高原ウインドファーム」がすでに風力発電事業に取り組んでいましたが、シーテックは2007年、同社の株式1,060株をJFEエンジから取得して筆頭株主となり、堂々と公共事業に乗り出す下地を整えています(この合法性については問題があるような気がしますが・・・)。

 シーテックが未経験の事業にいきなり進出したのは、国が再エネを国策事業とし、多額の税金を注ぎ込むこと、早いうちなら規制も緩いことを知っていたから。さすが国策と密着した電力事業者、抜け目のない「投機」というべきでしょう。この官民結託の結果、青山高原には2010年(平成22年)までに、1期と2期のウインドファームがめでたく完成、稼働を始めました。

  • 2月22日 – 風力発電所「ウインドパーク笠取」(第1期)営業運転開始[6]
  • 12月15日 – 風力発電所「ウインドパーク笠取」(第2期)営業運転開始[7]

 恐ろしいのはこの後。シーテックは、市民の認知度が低いのをいいことに、さらに青山高原で風車を倍増させる計画を立て、それがあっさり許可されているのです。

風力発電40基増設へ 三重・青山高原 計91基に

2012年4月11日 http://www.asahi.com/eco/news/NGY201204100036.html

 三重県は10日、県内の津市と伊賀市にまたがる青山高原に風力発電施設を増設する計画を、自然公園法に基づく特例として許可した。両市と中部電力の子会社シーテック(名古屋市)が出資する第三セクター「青山高原ウインドファーム」(津市)に風車40基が増設される。 青山高原にはウインドファームや津市の風車が51基あり、増設されれば計91基となる。県によると、増設分40基の最大出力は約8万キロワットにのぼる。一般家庭の約5万5千世帯分の電力を賄える計算で、担当者は「同一地域で一度にこれほどの増設許可が出るのは、国内では最大規模ではないか」としている。計画では、青山高原の国定公園内に22基、国定公園外に18基の計40基を2017年3月末までに増設する。森林法に基づく保安林の解除を農林水産大臣が許可した後、今年7月にも着工される見込み。 

 森をつぶし、空気を切り裂く風力発電施設は、環境保全や生物多様性も破壊する危険施設です。それを91基、そのために国定公園への建設を「特例」として許可し、保安林まで解除するというのは狂気の沙汰です。環境省と資源エネルギー庁は、2007年3月、風力発電施設と自然環境保全に関する研究会を設けていますが、すでにその論点整理 でも、環境保護より風車建設が優先されていました…市民の動きが活発になったのは、この後のことでした。

市民団体が「増設やめて」 伊賀市に反対署名 青山高原の風力発電施設

 室生赤目青山国定公園内に風力発電施設を増設する計画に対し、伊賀市の市民団体「青山高原を守る会」(武田恵世代表、会員21人)が1月25日、これまでに全国から寄せられた2342人分の反対署名と要望書を地元の伊賀市に提出した。受け取った岡本栄市長は「趣旨はよく理解した。市のスタンスとして、これからどうするか考えていきたい」と述べた。
(中略)同守る会によれば、増設する40基のうち32基は伊賀市内に建設予定だという。反対する理由として▼青山高原の既存施設による二酸化炭素排出削減の実績データがなく、増設しても削減できる見込みがない▼伊賀市の自然環境や自然景観に与える影響が大きい▼AWF社は環境影響評価で、伊賀市長の意見を無視したままとなっている、などを挙げている。武田代表は「保安林解除などが認められたのは伊賀市も入った第三セクターであるためだ。将来的な撤去費用も多額を要すると考えられるが、伊賀市に巨額の負担を強いる可能性もある」と訴え、第三セクターからの撤退を求めた。これに対し、岡本市長は「先の展望に向けてしっかり考えていきたい。既存施設や増設計画に対し、AWF社に尋ねている件は、私からも話しておく」と答えた。同守る会では今後、AWF社と津市にも要望書を提出する予定。

 この後、シーテックの風車の落下事故が起き落下した風車は直径83メートル、運転開始からわずか2年、低周波・騒音被害の声も大きくなってきていますが、それでも工事は止まらず・・・青山高原ウィンドファームは「地球にやさしいクリーンエネルギーを生む」というデマを掲げて事業に邁進しています。シーテックは、三重での「成功」をバネに、他県にも進出しているんですね。「再エネは自然にやさしい」というデマにだまくらかされている市民が多い限り、この事業は「追い風」が続くでしょう。

 この構図、実は原発とそっくりなのですが、それもそのはず、再エネ事業には必ず電力会社かその子会社、さらに原発メーカーがかかわっています。たとえば関東では東電が再エネ事業に熱心だしttp://www.tepco.co.jp/csr/renewable/megasolar/index-j.htmlEPCO

風力発電は原発の代替にならない www006.upp.so-net.ne.jp/junc/hokoku0128.html風力というのもホント。風力発電や太陽光発電で原発がなくなると思っているなら、それは無邪気すぎ。幻想は捨てて、省エネ、生産・消費体制の見直しという、「基本」に目を向けなきゃね。2014.7.26

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/