また311がやって来る

 あのフクイチからそろそろ3年、時々、この事故をいまだに拒否したがっている自分がいることに気づきます。市民運動にたずさわる者として、私は基本的に現実的ですが、そのリアリストの私でさえ、なかなか受け入れにくいのが「フクイチとその後」。理由はわかっています。「読めなかった」こと、そして、自分の理解や把握能力をはるかに超えて事態が進行しているからです。事情はTEPCOも政府も社会全体も同じだから、いつまでたってもウソが振りまかれ、大局は見えず、有効な対策が打ち出せない。・・・そこで暗躍しているのが、「公害で儲ける」企業群とその配下なのですが。

 でも、私以上に現実が受け入れられず、途方にくれているのは被災地の人々でしょう。何事もなかったかのように生活していても、子どもに忍びよる被害を考えれば、誰だって心穏やかではいられない。大部分の住民はーー程度の差はあれーー内心では不安と絶望の中で暮らしているはずです。なのに、一つにまとまって大きな行動に移すことができないでいるのは、「運動」には最初から、政官財の意図を受けた「分断工作」がつきまとっていたからです。これも時の経過と共にあきらかになってゆくでしょうけどね。

 ところで、先日、日本、フランス、インド、韓国、ポーランドの活動家たちが、日本外国人特派員協会で、フクシマで見聞したことを語っている動画を見ました。https://www.youtube.com/watch?v=Me9YHYEvMtQ 以下、「フクシマ・ウィットネス・ツアー」(グリーンピース主催?)記者会見から、印象に残った発言をいくつか。

「どの国も、まだ、このような事故に対する備えはない。ヨーロッパでこんな事故が起きたらどうすればよいかわからない。日本は原発や核物質を輸出するべきではない。永久に原発のない国にするのが、地球に対する責任だ」(仏)
「二年以上原発計画と戦ってきたが、フクイチ事故前はその危険性がよくわかっていなかった。私たちは日本の人々を愛しています。でも、ダーティな原発は愛していない。安倍さんは歓迎しますが、原発という技術は歓迎しない。この破壊的な技術をもちこなまいでほしい。世界の人がみな立ち上がって反対しないと」(インド)
「福島の住民の生存権は侵害されている。原発事故は、どんな企業も政府もコントロールできず、人々を守れないことがよくわかった。韓国は、原発密度が世界でも最も高いのに、さらに、今の23から39基に増やそうとしている。ほとんどの原発は東海側にあるから、事故がおきれば日本は深刻な影響を受けるはず。原発だけが答えではない」(韓国)

 ちょっと驚いたのは、Q&Aで「原発に反対というが、それならCO2問題はどうするんだ」という質問が出たことです。「人為活動によるCO2増加ー温暖化ー原発が必要」という、とっくに破綻した理論を、外国人特派員が持ち出すとは(日本ではほとんど報道されなかったが、欧米では大騒ぎになった)。私が回答者なら、「原発はCO2削減に寄与しない」、あるいは「停止後何十年も冷却が必要な原発は、トータルで考えるとむしろCO2を増加させる」などと答えたでしょう。でも、GPジャパンの答えは「CO2問題も忘れていない、今後も取り組む」いうものでした。
 ふ~ん、「原発=CO2削減」は否定しないのかあ。大きなNGOが政治的思惑で動くのは仕方がないけど、根本の部分で推進側と共通しているの?・・・フクシマの被災者は、海外メディアに頼る前に、自分たちで考えて行動し始めないとね。2014.2.25

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/