ごみ「移動」は犯罪―国際社会はごみ輸出入をどう見ているか

 中国にごみを違法輸出しようとしていたイギリスの二つの会社が、罰金を受けるというニュースがありました。二社は259トンの混合廃棄物を、金属スクラップと偽って10個のコンテナに詰め、英国のフェリックストー港から送り出そうとしていたところを、環境庁の巡回監視に発見されたのです。同様の事件は、これが初めてではなく、2005年には、イギリスのごみ1000トン以上をつめたコンテナが、紙ごみ(資源ごみ)として輸出を待っていたのが、オランダで発見されています。
 ごみの輸出を規制する国際法にはバーゼル条約があり、OECDに所属するリッチな国々が非OECD諸国にごみを輸出する場合、「リサイクル目的」が義務づけられています。もちろん、一般廃棄物など混合ごみは、焼却や埋め立てなど「処理」するしかないから、輸出は厳禁されていますが、ごみ処理事業はどの国でも利権のかたまり。そのため、条約違反のごみ輸出があいついでいるのが実情。そのため、途上国側の要請で、一切のごみ輸出入を禁ずるバーゼル・バン条約が制定されていますが、先進国の多くはこれを批准していません。
 今回のケースでは、一般廃棄物に混じって、車のパーツ(多くはプラスチック)、銅のワイヤー、PC基盤、廃材、ガラス、レンガなどが発見されたとか。コンテナを仕立てたイギリスの車両解体業社が15,000ポンド、輸出代行の中英合弁企業が11,000ポンドの罰金刑を受けています。環境庁の弁護士によれば、二社が相手国の同意なしに、同様のごみを中国に輸出したのは初めてではないとのこと。環境庁職員は:
 「環境庁にとって、違法なごみ輸出を防止するのは最も優先度の高い問題であり、証拠を見つけたらすぐ行動しますよ」
 イギリス環境庁が、ごみ輸出防止のための国家環境犯罪チームNECT(National Environmental Crime Team) を設立したのは2008年。それ以後、ようやく違法行為の摘発が進み、2009年にはブラジルからごみを満載した90のコンテナがイギリスに戻され、2011年にはアフガニスタンに古いコンピューターが輸出されたのが摘発されるなど、つぎつぎに事件が明るみに出ています。違法輸出が止まらないのは、もうけが大きいから。たとえばイギリスで古いTVを処理するには50ポンドかかるけれど、それを海外に輸出すると平均1ポンド。
 なお、日本は環境省自らが、いかにバーゼル法を潜り抜けてごみ輸出できるかを指南しているのはよく知られた事実。それだけでなく、政府は業界を代理して、焼却炉売り込みさえ加担しています。その商戦の最先端にたっているのは、企業ではなく、県レベル――たとえば「エコタウン」で有名な福岡県と秋田県。両方とも、がれき処理に手をあげているのは偶然ではないでしょう。
 なお、相手国の住民は行政の焼却炉売り込みに大きな不満を募らせており、やがて国際問題に発展することも考えられます。これ以上、恥ずかしいことはしないでほしい。
 とにかく、ごみ移動は国際的に「犯罪」とみなされていることを知ってください。国内でも同じこと。放射能汚染の有無以前に、廃棄物そのものが危険なので、移動させてはいけないのだ。2012.3.9 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/