日の出処分場の反対グループに呼ばれ、日本の廃棄物政策について話してきた翌日、こういう記事に気がついた。
帰ってきたカヤネズミ、谷戸沢処分場内で撮影 2011.2.26 http://sankei.jp.msn.com/region/news/110226/tky11022620170003-n1.htm
東京たま広域資源循環組合が管理する谷戸沢廃棄物広域処分場(日の出町平井)内で、都の絶滅危惧種に指定されている国内最小のネズミ「カヤネズミ」の姿が撮影された。かつては武蔵野のススキ原などに生息していたカヤネズミの姿が場内で確認されたのは、昭和59年の開設以来初めてという。同組合は、埋め立てを終えた処分場内の自然回復に取り組んでおり、委託を受けて調査にあたっている麻布大学獣医学部の調査チームが撮影に成功した。処分場内の沢では、国の絶滅危惧種に指定されたトウキョウサンショウウオの産卵が確認されているほか、昨年夏には都の絶滅危惧種でトンボの一種、コサナエの生息が確認された。
何とうそっぽい・・・。私は二ツ塚の新処分場と、旧処分場の谷戸沢(1998年閉鎖)の両方を歩いたけれど、そこはもはや、動植物の住処などではなくなっている。二ツ塚は、しっとりした杉林と明るい雑木林が混じる美しい谷だったけど、どこか重たく、冷たい。案内人が「鳥の声が聞こえないでしょう」と聞いた時、初めてそのわけがわかった。静か過ぎる。生き物の気配がしないのだ。また、ここには、現在、エコセメント工場が24時間操業をしており、そこから吹き付ける有害物質を含んだ風のせいか、高いフェンス沿いの樹木も、枝や葉の異常や病気、枯死や色あせなどが多く見られた。
谷戸沢の方は表面はもう固まり、高いフェンスに囲まれ、一見、無害なグラウンドだ。でも、処分場の有害物質をずっと調査し続けてきた案内人によると、処分場の排水に含まれる毒物の数値は上昇しているし、地下30メートルのところで温度70℃を記録したという。今なお、何かしらの化学反応が続いているのだ。
そんな場所にカヤネズミが突然現れたというのは、かなり不自然(サンショウウオも同様)。ま、調査した大学は「営巣を確認した」のではなく、「撮影に成功した」だけだから、ネズミちゃんは撮影用だった可能性もなきにしもあらず。ここに「跡地利用」計画でもあれば、その可能性はさらに高くなる。環境アセスのでたらめさを知る人は、この意地悪な見方にきっと賛成してくれるだろう。
日の出の処分場。人口わずか16000人の町が、多摩地区370万人分のごみと焼却灰の受け皿になっている。町の住民は、遠くの処分場のことなど考えずごみを出し続け、焼却灰に含まれた毒物が多摩川に流れ込み、汚染された水を飲み続けている。私たちはいつまで、美しい谷奥の自然を、処分場に差し出し続けなければならないのだろうか。2011.3.9
(参考)たまあじさいの会
http://www011.upp.so-net.ne.jp/tamaaji/influence.html