カントレル五聯症:外心人④

心臓の先天奇形は農薬が原因か?
 ところで、私がこのニュースに興味を持ったのは、この先天異常が
農薬と関係するのではないかと直感したからでした。最初の男の子は
農村のはずれのあばら家に住んでいました。家の周りには青々とした
田んぼが広がっています。
 二例目の幼児も三例目の婉停も、家は農業でした。その周辺でも
きっと大量の農薬が、日常的にまかれていたのではないか。何といっ
ても、13億人の民を抱える中国は、食料増産は切実な問題、農薬
の多用が子供たちに影響しているのではないか、と直感したのです。
中国では、まだ下層まで「環境問題」意識が浸透していません。

(08年8月富山の有機栽培の実験田。トンボやサギもいました。)
 また中国では、先天性心臓病は「十歳以下は根治可。十歳以上は
難しい、二十歳以上は治せない」と言われているそうです。そのため
婉停を手術した上海遠大心胸医院でも、貧困家庭の子供の心臓病を
早期治療できるよう、基金を設けてに支援しているのです。…もちろん
貧困家庭―農村地域の―の子供に先天性心臓奇形が多いとは書いて
ありませんが、実態はどうなのか?
 それに、どこかで、農薬毒性の影響として「胸骨形成不全」という
症状があったと記憶していました。それで、この問題に最も詳しい渡辺
先生のサイトを覗いてみると、外国研究者がラットを使って実験した
フェニトロチオン(スミチオン)の生殖毒性の結果が訳出されていました。
  30 mg/kg投与では胸骨と頭蓋の骨化の遅れと、体重と体長の
  減少が見られた。
http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/archiv/pesticide/
insecticide/organophos/MEP/MEPtox.htm

 毒性が「弱い」とされているスミチオンでさえ、生体発達そのものを
阻害する作用をもっているわけです。中国の農薬規制がどうなのかにつ
いては調べる暇はありませんが、多種多用な農薬を、日常的に使い続
けているとどうなるか、幼い「外心人」たちの存在は、私たちに化学物
質に頼る生活の危うさを伝えてくれているようです。
2009.5.24

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/