「狂人理論」のトランプを野放ししているわけ

  ここ半年ほど、アメリカ外交を巡るトランプの妄想と錯乱、そして「狂気」はさらに激しさを増し、アメリカ帝国を破滅と混乱の道に追い込んでいます。しかし、この状況こそ、トランプの後ろの勢力(ディープ・ステート)が望んでいることであり、トランプはそのための「狂人理論」のカードであることを、私たちは知っておくべきでしょう。「狂人理論Madman Theory)」とは、「(大統領が)予測不能で、矛盾した言説、暴力的行動も辞さない人物だ」と相手に信じこませて、相手の混乱や躊躇、譲歩を誘う政治手法。ニクソン大統領が始めたというのが定説ですが、恥知らずが政治家になった場合、これはごく当たり前に使われる政治的技術のはずです。

 トランプはもともと、傲慢無礼、自信過剰、規律無視、低倫理観で知られる人物でした。それが二期目の大統領として就任すると、彼はさらに破壊的、衝動的、好戦的な傾向を示すようになり、政敵や批判者に対し、ウソやはったり、殺人を含む脅しで攻撃するなど、およそ一国のリーダーにあるまじき行動を繰り返していたのです。・・・残念ながら、今のアメリカ帝国を動かしている連中には、このように危険でわがまま、制御不能な人物こそ政治リーダーにピッタリだったのです。彼が実際に破滅と混乱をもたらすために起用されたことを示すのが、イラン攻撃の「真意」がいまだに明らかではないことです。攻撃開始から三週間もたった今でも、攻撃の本当の目的を巡る議論はまだ決着していません。このトランプの態度は、「狂人理論」では許されるのです。

 もちろん、「狂人理論」ではウソも矛盾も許される。何を言っても誰も止めないし、訂正もしない。彼が3月12日に出した奇妙な「勝利宣言」は、その一例でしょう。

「トランプ米大統領は11日、イランとの戦争で米国が勝ったとして勝利を既定事実化しながらも任務を終えるまで軍事作戦を継続するといった。・・・『とても早く勝ったと言いたいわけではないがわれわれが勝った。最初の1時間だけで終わった』と話した。続けてイラン海軍艦艇58隻撃沈、ミサイルの90%とドローンの85%破壊など米軍が収めた成果を誇示した後、「すぐに離れたくない。われわれは任務を終わらせなければならない」と話した。・・・トランプ大統領は、アクシオスとの電話インタビューでは攻撃標的がほとんど残っていないとし、『戦争は私が終わらせたい時いつでも終わるだろう』とした。終戦のタイミングが自信の決断にかかっている点だけ強調し戦略的あいまいさを維持した。https://japanese.joins.com/JArticle/346075?sectcode=A00&servcode=A00

 アナリストでさえ「米側の誤算」というイランの激しい反撃、中でもイスラエルや湾岸諸国に対するミサイルやドローン攻撃の成功を無視した「勝利宣言」です。そして、その勝利宣言にもかかわらずまだ戦闘を続けるという明らかな矛盾。そして戦争は「自分の一存で」終わらせるという傲岸不遜な発言と、それに矛盾する「任務の完了」という不可解な一言。任務とは何で、誰が与えたものか?完了とはどんな状況を意味するのか、説明はありません。少なくとも、これらの矛盾した言動の裏には、戦争を私物化し、混乱を長期化させたいという意図が見てとれます。  

 そして3月20日の、トランプの「勝利宣言」も、多くの批判を集めました。例えば:

「金曜日、トランプ大統領は紛争“軍事的に勝利”を宣言したが、この主張は現場の現実とは全く矛盾している。イランは湾岸諸国の石油とガスの輸出を制限し続けており、同地域全域で一連のミサイルとドローン攻撃を開始した。イランと近隣の湾岸諸国の重要なインフラが標的にされ、原油価格の50%高騰の一因となり、世界経済ショックの懸念を引き起こしている。アナリストらは、戦争とその物語の両方をコントロールする大統領の能力が弱まり、大統領が政治的危険にさらされていると指摘している。・・・ホワイトハウス当局者らは、イランの最高指導者の排除、海軍の多大な損失、ミサイル兵器の損傷を指摘し、この作戦は軍事的に成功したと主張している。

「トランプ大統領の外交、軍事、政治における権力の限界がここ1週間で明らかになった。NATO同盟国やその他のパートナーはホルムズ海峡を確保するための軍隊の派遣に抵抗し、世界の石油輸送にとって重要な任務において米国はほとんど孤立したままとなった。・・・エピック・フューリー作戦が開始され、トランプ大統領は厳しい選択に直面している。さらにエスカレートして、イランの石油拠点であるハルグ島を占領するか、ミサイル発射装置を標的にするために沿岸部に部隊を派遣するか、勝利を宣言して撤退し、依然として重要な航路を支配している可能性のある敵対的なイランに対して脆弱な湾岸地域を危険にさらすかだ。イランは核兵器開発の意図を否定している。https://www.dailysabah.com/world/americas/week-4-of-iran-war-trump-claims-victory-amid-strikes-oil-surge (強調山本)

  しかしこの勝利宣言から二日もたたないうち、トランプはイランがホルムズ海峡を解放しなければ同国のインフラを攻撃するという「最終通告」を打ち出したのです。・・・戦争は終わっていない。アメリカは勝利していない。

48時間以内にホルムズ開放を トランプ米大統領、発電所破壊を警告―イランは「完全封鎖」でけん制 2026年03月22日23時45分【ワシントン、カイロ時事】トランプ米大統領は21日、イランに対し、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の事実上の封鎖を48時間以内に「完全に」解除するよう要求した。米東部時間同日午後7時44分(日本時間22日午前8時44分)にSNSに投稿した。応じなければ、米軍がイランの発電所を攻撃すると強調した。 トランプ氏は、「イランが今から48時間以内にホルムズ海峡を脅かすことなく、完全に開放しなければ、米国はさまざまな発電所を攻撃し、完全に破壊する」「まず一番大きい発電所から始める」と述べた。イラン軍中央司令部報道官は声明で、米国が発電所を攻撃すれば「発電所が再建されるまで、ホルムズ海峡を完全に封鎖する」と警告。米軍基地がある中東の周辺諸国の発電所が「正当な標的になる」として、報復攻撃の強化を示唆した。一方、イスラエル南部ディモナとアラドでは21日、迎撃に失敗したイランのミサイルが着弾した。地元メディアによると計170人以上が負傷した。ディモナ郊外には核施設があり、核開発が行われているとされる。イランメディアは同国中部ナタンズのウラン濃縮施設が攻撃を受けたことへの報復だと伝えた。

たとえ法律を知らなくても、交戦相手国の人々が頼っているインフラ施設を破壊するのはまずいと、直感的にわかるでしょう。しかし、「狂人」大統領は、相手をねじ伏せるためなら、たとえ国際法違反でもためらわず、それを公言できる人間。彼は、ここでいう国際法ージュネーヴ条約ーの規定など無視してもいいのだと言っている。

食料、食料生産のための農地、作物、家畜、飲料水施設および供給設備、灌漑施設など、民間人の生存に不可欠な対象物を、民間人または敵対当事者の生存に必要な物資として利用できないようにする目的で、攻撃、破壊、撤去、または無用化することは、民間人を飢餓状態に陥れるため、民間人を避難させるため、またはその他のいかなる動機によるものであっても、禁止される。https://ihl-databases.icrc.org/ru/customary-ihl/v2/rule54

 このトランプの脅しに対し、イランはすぐに「報復として湾岸諸国の淡水化施設を攻撃する」と発表しました。UAEやサウジアラビアなど、米国の基地を構えている国々には淡水資源がなく、飲料水のほとんどは大規模な淡水化施設で製造されています。その施設が攻撃を受ければ、おそらくこれらの国々は数日で白旗を上げざるを得ないでしょう。逆に言えば、イランはこれまで、「敵国」でも、淡水化施設の攻撃は控えてきたのです(攻撃された施設もあったかもしれませんが、未確認)。米の発電所攻撃がそのイランの自制を破るとしたら、アメリカの責任が問われます。そしてアメリカという国は、ベトナム戦争でも、農地や水系にナパーム弾、枯葉剤を撒くなど数々の戦争犯罪を平気で犯してきた国。国の構造が変わらない限り、正気には戻らないでしょう。正気に戻すには、普通の人々の連帯と力が必要です。

 なお、このタイミングで日本の首相がトランプ詣でしたのは偶然ではありません。彼女は「有意義な会談ができた」などとアバウトなことを言っていましたが、「ルール破り」の一方的攻撃を仕掛けたトランプに「自衛隊派遣」を求められて、それをきちんと拒否できる人間とはとても思えない。なぜなら日本はアメリカの要求を断ったことはほとんどない。他の国は「有志連合」から逃げても、日本だけはアメリカの求めに応じて動くと判断されている。アメリカとディープ・ステート生き残りのために、アジアで起用されたのが彼女です。2026.3.23

https://www.youtube.com/embed/AVcJr6MD5TU イランのミサイルとドローンによる攻撃は、西アジア全域の米軍拠点を破壊し、かつてトランプ大統領がアメリカの優位性の証として掲げていた基地を壊滅させた。主要メディアが検証した新たな分析によると、イランの攻撃により、米国関連の施設にすでに約8億ドルの損害が発生しており、カタールからサウジアラビア、バーレーンにかけて少なくとも17か所が攻撃を受け、11の軍事基地が完全に破壊されたと推定されている。衛星画像によると、アル・ウデイド、アリ・アル・サレム、プリンス・スルタン、バーレーンの米海軍第5艦隊といった主要拠点が繰り返し攻撃を受けている一方、ヨルダンにある約4億8500万ドル相当の高価値レーダー1基が破壊され、その他インフラにも約3億1000万ドルの損害が出ている。ワシントンは、この地域への増援を急ぐことを余儀なくされており、すでに戦争の初期費用が数十億ドルに達し、これまでに少なくとも13人の米兵が死亡したと報告されているにもかかわらず、数千人の追加部隊が配備されている。この動画では、イランが組織的に空軍基地、レーダー、兵站拠点を標的にしている仕組み、衛星画像から明らかになる攻撃パターンの変化、そして戦争が長引く中で米国が金銭、装備、そして人命においてどれほどの損失を被っているのかを詳しく解説します。

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/