祝園弾薬庫問題ーー自衛隊の軍備増強の波

前記事の続き。「迷走台風の陰に軍事問題が隠れている」と指摘しましたが、実際に、私が住む関西地域ですでに大問題が起きていました。以下は朝日新聞の記事の一部。

「祝園弾薬庫問題」大学習会に500人超 元自衛官が講師に Msn 2024年9月2日 10時15分 https://www.asahi.com › articles › ASS913V2MS91PLZB00WM.html 陸上自衛隊祝園分屯地(京都府精華町と京田辺市)の火薬(弾薬)庫建造問題について、住民団体が8月25日、精華町で「夏の大学習会」を開き500人超が参加した。元自衛官で軍事評論家の小西誠さんが講師をつとめ、大量の公文書をスクリーンに映しながら現状を分析していった。小西さんは、「台湾有事」を口実にして日米両政府は中国に軍拡競争をしかけていると指摘し、沖縄など南西諸島にミサイル部隊をおき全国各地で弾薬庫を整備する軍事化を日本政府が急速にすすめていると分析した。戦争になれば弾薬庫はかっこうの攻撃対象で、とくに祝園分屯地は国際人道法に反して住宅地に近く危険きわまりないとも訴えた。防衛省は横柄にも情報を公開せず住民説明会も開こうとしていないが、沖縄県うるま市の住民運動が陸自の訓練場整備を4月に白紙撤回させたように、住民が本気になれば弾薬庫建造を止められるとも語った。主催した「京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク」は、住民説明会をもとめる防衛省あて署名が5千筆を超えたと発表した。年内の1万筆をめざしている…

 祝園(ほうその、と読みます)という地名は、近鉄を利用する度に気になっていました。一見、のんびりした田舎町、実は、人口が少ないことと、地の利を生かし、戦争をバックアップする巨大なコングロマリットとして繁栄してきた歴史がありました。今回の計画も、何年も前から仕込まれていた全国規模の計画ですが、記事にある通り、説明会などないから、住民は着工の直前まで何も知らない。

 そして、これは奈良県や関西だけの話ではありません。日本政府は今、国民に知らせないまま、全国規模の戦闘力強化作戦を急速に進めているのです。↓は南日本新聞の記事。

海自鹿屋航空基地に弾薬庫2棟新設検討 戦闘継続能力強化へ全国で130棟増やす方針 陸自瀬戸内分屯地でも増設探る 防衛省 2024/8/31(土) 南日本新聞 | 鹿児島  https://news.yahoo.co.jp › articles › fb9f2058d86d387d7c731f307c1f9847306c0068   防衛省は2025年度、海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)に弾薬庫2棟を新設するため、地形地質や測量などの適地調査を始める。同基地では、老朽化した格納庫などの建て替え工事にも着手する。30日に発表した25年度予算の概算要求に関連経費を盛り込んだ。 弾薬庫は全国に約1400棟あり、政府は戦闘継続能力の強化に向けて32年度までに約130棟を新設する方針…

  陸自と海自の軍事力強化に加えて、多くの人にショックだったのが、岩国市、そして周辺のいくつかの自治体の「オスプレイ受入れ」発表でしょう。

[山口県]オスプレイ配備 岩国市長了承「生活に大きな影響なし … 8月28日 米海軍の輸送機CMV22オスプレイと最新鋭のステルス戦闘機F35Cが機種更新に伴い、年内にも米軍岩国基地(岩国市)に配備される計画を巡り、岩国市の福田良彦市長は27日、基地周辺住民の生活に大きな影響は与えないとして、「機種更新について了承する」と配備計画の受け入れを表明した。28日には周辺自治体の和木、周防大島両町も「了承」の意思を示す方針で、山口県は市町の判断を踏まえ、国側に態度表明する。

 問題山積のオスプレイと最新鋭のFC35を受け入れる理由は、「日米政府が開発段階から安全性を確認して量産しており」「機体の安全性は問題ない」そして、「適正な防衛力と抑止力の維持は、安全保障上必要」だから、ということのよう。いずれも裏付け/根拠なし、確認する能力もなし…それでもいいんだ、米NATOの戦争準備に従うんだ、ということですね。オスプレイ配備に関しては、住民もこれまで、ひとかたならぬ拒否を表明してきたはずですが、自治体は気にかけない。納税者として、「首長」と議員の資格と、その存在を根本的に問い直す時が来ていますね。

 なお、祝園学習会の講師は、パワポ資料を公開しています(https://www.youtube.com/watch?v=oIfRFgxgBzY)。私はまだ見ていませんが、「台湾有事を口実に日米両政府は中国に軍拡競争をしかけている」「沖縄など南西諸島にミサイル部隊をおき全国各地で弾薬庫を整備する軍事化を急速にすすめている」との分析はだいたい賛成できます。ただし、実際の「有事」は、中国がにらみを利かせている台湾より、米傀儡のマルコスJr.大統領のフィリピンの方がきっかけとなる可能性が高い(BBCでさえ、「マルコスJr.は汚職政治を復活させようとしている」と報道。中国を取り囲んでいくつかの軍事同盟ができているし、すでに「ニセ旗」っぽい事件もいくつか起きています。

フィリピン大統領が南シナ海情勢で中国側に警告 軍事的な対応 … 2024年6月1日南シナ海で威圧的な行動を続ける中国に対して、フィリピンでは各地で抗議活動が行われ…

 「民主主義」と呼ばれている戦争経済体制では、「右肩上がりの経済発展」とは、終わりなき戦争のこと。グローバルエリートは、すでに、「ウクライナ敗戦後」、「ガザ消滅後」を見据え「新たな戦争」を起こす火種を着々と準備しているわけ。私たちが注意すべきは、上記のような情報は、台風報道と時を同じくして拡散されたことです。しかし今の人々は、社会的責任感、理解力、共感力といった、人間の基本的な感性を失いつつあり、これらの重要な情報も、対象地域以外の人々には、何の意味ももたないかもしれません。2024.9.03

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/