風力発電に関する「報告書案」について、再確認しますが、環境省がいったんこれを認めると、すべての低周波音被害も一律に「なし」で片付けられてしまうことにご注意(行政の公平性)。法令じゃないので裁判でも問題になりません。低周波音被害は、実はエコキュートなどごく身近なところで発生しており、その数も多いのですが、風力発電をターゲットにしたのは風力の被害者はごく少数だから(それも泣き寝入りがほとんど)。でも、エコキュートなどの被害も、「被害が表れるのは一部だけ」「証明が難しい」ことから、これまでも政府・企業は知らん顔。でも今後は、「何言っとる。報告書で『低周波被害はない』とされとるだろうが」となるわけ。ま~確信犯ですねえ。
我が家の低周波音被害、低周
それにしても、環境省はなぜ、今の時点で低周波音被害を切捨てようとしているのか、セットバックさえ認めようとしないのか(これも報告書案にある)、関係者はなぜぎりぎりになってパブコメ情報のことを知ったのか?(山本がパブコメのことを知ったのは14日、締切り17日!)。不思議に思って調べたら、とんでもない ことがわかりました。
飯田哲也氏などが出資しているISEP(環境エネルギー政策研究所)が、世界風力エネルギー協会WWEAなどと共催で、この11月3~4日に福島市で第一回目の世界大会を開こ うとしているのです。その名も「世界ご当地エネルギー会議」。
以下はhttp://www.wcpc2016.jp/からの抜粋です。
「世界風力エネルギー協会、環境エネルギー政策研究所、全国ご当地エネルギー協会は、福島市長の招待を受け、 第1回世界ご当地エネルギー会議(World Community Power Conference, WCPC)を福島市にて開催いたします。世界ご当地エネルギー会議は、地域が中心となって進める自然エネルギー(コミュニティパワー)のリーダーたちが世 界各地から集い、世界的な自然エネルギーへの転換の中でコミュニティパワーの果たす役割を議論することを目的とします。また、この会議では、グローバルな コミュニティパワーの戦略や国・自治体レベルでの方向性も議論します。
世界ご当地エネルギー会議は、世界中の政府が2050年までに世界のエネルギー供給からの温室効果ガス排出を抑えること、つまり、100%自然エネ ルギーの方向性を合意したパリ協定の1周年の機会に開催されます。また、この会議は、福島原発事故から5年目、チェルノブイリ原発事故から30年目の機会 に開催されます。コミュニティパワーは、地域の人々が意思決定し、導入・所有・運営する自然エネルギーを意味します。コミュニティパワーは、自然エネル ギーの普及に好影響をもたらし、また、自然エネルギーの経済効果を高めることが立証されています。」http://www.wcpc2016.jp/
登壇予定者 (順不同
- ハラルド・ナイツェル(ドイツ連邦環境省)
- ピーター・レイ(世界風力エネルギー協会)
- ソーレン・ハーマンセン(サムソエネルギーアカデミー)
- クリスティン・リン(REN21)
- ステファン・シューリグ(世界未来協議会)
- ニコル・リセ(オンタリオ持続可能エネルギー協会)
- エリック・マーティノー(環境エネルギー政策研究所/北京理工大学)
- イブラヒム・トゴラ(マリ・フォルケセンター)
- ジョンダル・キム(国際ソーラー都市イニシアチブ)
- ウォルフガング・トイブナー(ICLEI)
- ベアトラム・ヒルゲン(カッセル市長)
- ライナー・ヴァルマン(ヴェラ・マイスナー・クライス議長)
- ロタール・ストック(ベルリン市)
- 関昇一郎(長野県)
- 加藤憲一(小田原市長)
- 高橋浩人(大潟村村長)
- 西原親(みやま市長)
- プレーベン・メーゴー(ノルディック・フォルケセンター)
- トア・ヴィツェリウス(ウィンド・フォー・ショア)
- モニカ・オリファント(モニカ・オリファント・リサーチ)
- カルロ・シック(フライブルク大学/世界風力エネルギー協会)
- サラム・アル・カティーブ(同志社大学)
- ラウパッハ・スミヤ・ヨーク(立命館大学)
- 諸富徹(京都大学)
- 倉阪秀史(千葉大学)
- 豊岡和美(徳島地域エネルギー)
- 鈴木亨(自然エネルギー市民ファンド)
- 小林稔(飯舘電力)
- 佐々木寛(おらって「にいがた」市民エネルギー協議会)
- 丸山康司(名古屋大学)
- バーバラ・メーレンディック(ケルン市)
- 井上保子(宝塚すみれ発電)
- 三浦規光(三浦電機)
- イェルテ・ハーンマイヤー(ジェームズ・ハットン研究所)
- タリン・レーン(エンバーク)
- ロバート・スナイダー(アイランド研究所)
- エミリア・ノーデック(サステイナブル・モロカイ)
- レア・ゴローニョ(ノルディック・フォルケセンター)
- アンナ・クレンツ(ノルディック・フォルケセンター)
- コンラッド・モレノ(再生可能エネルギー技術研究センター)
- ヴォルデマリアム・ウォルデ・ジオルジス(インサイト開発研究所)
- セルジオ・セランスキー(ヤンサ)
- ニール・タウンゼント(ジャスト・エナジー)
- タナイ・シドキ・ウヤー(トルコ再生可能エネルギー協会)
- 山下紀明(環境エネルギー政策研究所)
- 磯部達(みやまスマートエネルギー)
- クラウス・ジードホフ(オスナブリュック電力公社)
- ハインリッヒ・バーテルト(ジェネラル・ウィンド)
- ハリー・レーマン(ドイツ連邦環境庁)
- ピーター・モーザー(ディーイーネット)
- ダニエル・クレーマー(ドイツ-日本研究所)
- 川又孝太郎(在ドイツ日本大使館)
- クリスティアン・ディマー(早稲田大学)
- 松原弘直(環境エネルギー政策研究所)
- 原亮弘(おひさま進歩エネルギー)
- 辻村千尋(日本自然保護協会)
- 吉田明子(パワーシフトキャンペーン/FoE Japan)
勝手にこういうことを決めているわけですが、なかなかすごい布陣です。WWEAは世界100カ国600人・組織が参加するNGO(非営利団体)で、コンサルタント会社、研究機関、大学が名を連ねている模様ですが、メンバーリストにはHPからアクセスできません。でも、この規模の国際会議開催には数百万の費用が必要なはず。会議参加は無料なので、企業や政府が支援しているだろうことは推測できます。参加リストや記者発表 http://www.isep.or.jp/library/9625 を見ても、多くの「地域」が巻き込まれているようで、相当、見えないお金が飛び交っていることでしょう。甲状腺調査中止、避難者家賃補助打ち切りの福島県、市は、まさかこのビジネス大会にお金を出すんじゃないでしょうね。
さて、会議の狙いは、日本人をだまくらかし(再エネはすばらしい、世界中で評価されているんだ!)、日本を規制なき再エネのメッカにすることではないかと思います。世界では、ポーランドの風力建設禁止、ドイツの2キロのセットバック設定、各国で強い反対運動、裁判多発が報じられていますが、日本では風力を疑問視する人はほんの一握り。それを知っている環境省は、報告書案に任意の(⇔法定の)パブコメを実施しても意見書は少ないと予測し、「日本人は低周波音を問題にしないことに同意した」という結論を出そうとしているのです。はい、この「国際会議」に集まる、風力ハゲタカたちへの何よりのプレゼント。
なお、この会議の前、10月31日~11月2日にかけては、東京(東大・本郷)で「第15回世界風力エネルギー会議及び展示会」http://wwec2016tokyo.com/が行われます。こちらはスポンサーが日立、日立造船、住友電気、JWD日本風力開発㈱、グリーンパワー投資グループ、そして電源開発。・・・はい、日本でひそかに「風力」をあおっているのは、電力系企業、経済産業省(こちらは露骨)、そしてゼネコン。事業の性格も利権の構造も原発とまったく同じ。フクイチの処理さえできない連中がクリーンな事業などできるはずがないのです。2016.9,20