フクイチを経験した市民に課せられていること

 高浜原発の警報音は「ブー」ではなく、甲高い「ファンファン・・・」だったそうです。

 ・・・この日は午後2時から送電開始が予定されており、トラブルは開始直後だった。
「投入します」。中央制御室の運転員がこう告げて送電開始のレバーをひ
ねった瞬間、「ファンファンファン」という甲高い警報音が鳴り響き、警報盤のランプが点滅した。運転員らは原子炉の状態を示す計器の確認作業などに追わ
れ、「トリップ(自動停止)確認して」「異常なし」などの声が制御室に交錯。緊迫した雰囲気に包まれた・・・」(毎日新聞

 再稼動直後に止まったのは不幸中の幸いでした。これがフル運転に入っていたら、フクイチと同じように、老朽原発は暴走し、誰にもそれを止めることはできなくなっていたでしょう。おまけに高浜原発4号炉はMOX燃料を使っている。地元の方々の怒りと不安はいかばかりかと思いますが、国・電力業界・原子力規制庁・メディアが一体化しているため、地元の動きは首都圏にはほとんど伝えられません(なお、メディアは、今回の緊急停止に対しても、「もっと安全審査を厳しくしろ」という論調が多く、決して「原発廃止」を主張していません)。

 日本では、第二の原発銀座・福島の原発事故で、関東~東北の多くの地域が汚染されました。そのうえ、第一の原発銀座・福井でコトが起きれば、京都・大阪・名古屋のような日本の中心部が汚染されます。九州の川内原発もいつ何がおきるかわからず、かろうじて汚染が少ない地域としては北海道と沖縄だけが残るということになってしまいかねない。なのに、推進派の頭にはカネのことしかなく、行政は私物化され、主権者の声は届かない・・・しかも、反対派の主流は高齢者で、海外では市民運動の中心を担う若者の姿が、日本の運動にはありません。日本はーー教育と社会情勢のせいでーー若者は市民運動から切り離されているからです。若者の爆発的な力がなければ社会はなかな変えられない。革命には高齢者の知恵とともに、若さが必要なのです。

再稼働反対派が警察官と一時緊迫 高浜原発、「負の遺産」と抗議
2016年1月29日午後9時50分 福井新聞  
 
 「再稼働反対!」「再稼働やめろ!」。原発に反対する市民団体などは29日、高浜原発周辺や福井県庁前で抗議活動を繰り広げた。警察官と押し合いになり、
緊迫する場面もあった。高浜原発周辺には、県内外の市民団体メンバーら数十人が早朝から集まった。「また『核のごみ』が増える」と憤るのは原発反対県民会
議事務局次長の石地優さん62=福井県若狭町。午後5時の再稼働直前まで大声で反対を訴え続けた。滋賀県の市民団体「反戦老人クラブ滋賀」から参加した高
瀬慶臣さん70=栗東市=は「次世代に負の遺産を残さないよう、今後も活動を続けたい」と誓っ
た。鹿児島県の川内原発のお膝元、薩摩川内市で抗議活動を続けている福田良典さん63=東京都=も「反原発の議員を選挙で支援するなどさまざまな手だ
てを尽くす」とした。「原発住民運動福井・嶺南センター」代表の北原武道さん70=福井県若狭町=ら4人は、再稼働の中止を求める申入れ書を提出しようと
高浜原発を訪れたが、関電側は受け取らなかった。(以下略)


高浜原発4号機再稼働、検証求める声 「福島忘れたか」

2016年2月27日05時31分

 「原発は重大事故を起こしかねず、人類の手に負える装置ではない。原発の即時全廃をたたかいとる」4号機が再稼働した午後5時すぎ、高浜原発前に集まった約50人の市民は決議を採択した。市民らはこの日午後、太鼓を鳴らしながら拳を振り上げ、「原発反対」などとシュプレヒコールを繰り返していた。九州電力川内原発鹿児島県薩摩川内市)の再稼働の反対運動にも参加した溝口松男さん67は鹿児島市から駆け付けた。「実効性のない避難計画、使用済み燃料の行き場など、高浜原発も同じ課題が残る。事故が起きれば住民がふるさとを失う。日本中の原発を廃炉にしなければならない」と訴えた。「5年前の福島の原発事故をもう忘れたんでしょうか。あの時の怒りは続かないんでしょうか」。
  福井県庁前で毎週金曜の夕方、原発再稼働反対のデモを続けてきた主婦の小野寺恭子さん59=福井市=は、この日も声を振り絞った。関電大飯原発3、
4号機がいったん再稼働した2012年7月から、県内の10~20人が続ける。その回数はこの日で185回目を迎えた。小野寺さんは先頭に立ち、片手で横
断幕を、もう一方の手でハンドマイクを握って音頭をとってきた。集会を始めた頃より参加者は減ったという。「もう一度、福島の事故を思い出してほしい」と
問いかける。3人の子の母でもある。小野寺さんは「原発事故が起これば、ふるさとを離れなければならない。自分たちの子どもを守るため、誰もが安心して暮
らせる生活を守るため、全部の原発を止めるまで反対の声を上げ続ける」と力を込めた。
   一方、地元経済界には安堵感が広がった。高浜町商工会の田中康隆会長59は「少しずつ元の高浜の姿に戻っていく」と歓迎した。町では男性労働人口の3割近くが原発関連の仕事に就いているという。1月に3号機が再稼働するまで、全4基の長期停止が続いた。田中会長は「先が
どうなるのか分からない状態が続き、将来設計や投資ができないなど不安が広がっていた。2基の再稼働でひとまず安心できる」と話す。(大久保直樹、大野正智、小川詩織)

 高浜を止め、全原発を廃炉に追い込むのは、フクイチを経験した市民すべての責任だと思いますが、原発や基地など、公害施設を受け入れた地域は、こうして事実と歴史に目をとざし、ウソをばらまく社会になってしまう。事実を示して、現状を変えるしかないでしょう。関電と東電の営業免許を没収するように求める訴訟を起こせないのでしょうか。会社を解散に追い込み、その資産と営業権を、脱原発の経営陣に引き渡す・・・とか。
 高浜原発に関しては、「福島原発事故の実態と被害を無視 高浜3・4号の再稼動を止めよう」のリーフレットにわかりやすくまとめられているので、ぜひ目を通して下さい。2016.3.3

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/