久しぶりに農薬に関するニュース、しかも重要なニュースがアメリカから入っています。
ここ数年、世界的にミツバチが巣を捨てて姿を消す、不可解な現象、蜂群崩壊症候群(CCD, Colony Collapse Disorder
ミツバチの激減は、養蜂家に大きな打撃を与えているだけでなく、農作物の減収にも直結する深刻な問題ですが、その原因として、早くからネオニコチノイド(以下、ネオニコ)系農薬があげられていました。それを最も大量に製造し、使用しているのがアメリカです(日本もすごい)。そのアメリカ政府
この調査は2015年5月、カナダとアメリカ環境庁(EPA)、そしてカリフォルニア州農薬規制省 California Department of Pesticide Regulation
(CDPR)三者の協力のもとで、事前に用意した「ガイダンスPollinator Risk Assessment Guidance」に沿って行われました。対象とした農薬はクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ディノテフランの四種。EUではこのうち、前3種を2013年に使用禁止にしていますが、アメリカとカナダでも、ここ数年、ネオニコのミツバチに対する有害性を指摘する声が強まったことから、しぶしぶ腰をあげたのでしょう。EPAがレビューした研究論文は350本以上にのぼるとか。EPAの化学物質安全性・汚染防止局(Office of Chemical Safety and Pollution
Prevention)副次長補ジム・ジョーンズは、「EPAはミツバチの保護だけでなく、その回復にも取り組んでおり、初のアセスはネオニコチノイド系農薬に対するミツバチのコロニーの健康を調査した」「科学を道しるべとしたこの予備調査は、カリフォルニア州とカナダとの協力を反映し、EPAが求める最
新の調査結果を評価した」と述べています。
で、対象四種のうち、最初に出されたイミダクロプリドの調査結果で、「イミダクロプリドはミツバチの巣にとってリスクとなる可能性があるimidacloprid potentially poses risk to hives」とされたのでした。ネオニコ系農薬が散布された花々から蜜を集めたミツバチは、その汚染を巣に持ち帰り、巣全体に汚染を広げるということのようです(当たり前だけど・・・放射性物質も似たようなものなのですが)。他の三種についてと、その他の水棲動物や地上の動植物についての調査結果は今年12月に発表される予定です。今後、60日のパブコメ期間ののち、寄せられた意見を勘案して、ネオニコの規制強化などの措置がとられるとか。
ここまで聞くと、EPAってまともなのか、と誤解する人も出てくるかもしれませんが、帝国資本主義国のアメリカでは、そんな善意の解釈は禁物です。EPAは恐ろしいことに、新たなネオニコ系農薬サフロクサフロール(sufloxaflor)に許可を与えていました。幸い、この件は提訴され、それを審議した第九区連邦巡回控訴裁判所は、EPAがこれらの殺虫剤がミツバチやその巣に与える影響に関し、信頼に足る研究もないままに許可したことを連邦法違反とし、アメリカでは使用できないと判決したのです。反対があり、行動を起こしたから、歯止めができた一例(日本ではダメですよ。裁判所は権力の味方なので、訴えた方が負ける)。
どの国でも、環境や生命を守るためには、市民の必死の活動が必要です。その市民の圧倒的多数が沈黙している国では、行政や企業は「善をなす」どころか、法律も制度も私物化し、人権はじゅうりんされっぱなし。・・・農薬だけでなく、ごみやワクチンをめぐる状況も、似たようなものですけどね。2016.1.9
(下は関連サイト)
The risk assessment and other
supporting documents will be available in the docket today at: http://www.regulations.gov/#!docketBrowser;rpp=25;so=DESC;sb=postedDate;po=0;dct=SR;D=EPA-HQ-OPP-2008-0844.
EPA is also planning to hold a webinar on the imidacloprid assessment
in early February. The times and details will be posted at: http://www.epa.gov/pollinator-protection/how-we-assess-risks-pollinators