国民の9割ががれき広域処理に賛成? 内閣府の怪しい調査

  今朝、こういうニュースにびっくり仰天された方、多いのではないでしょうか? 
がれき広域処理、賛成9割=内閣府が世論調査
事通信 84()174分配信
 内閣府が4日発表した「環境問題に関する世論調査」によると、東日本大震災で発生した災害廃棄物(震災がれき)を被災地以外で受け入れる広域処理について、「進めるべきだ」とする人が883%を占めた。「進めるべきだとは思わない」は88%だった。政府は、放射性物質が検出されないなど安全性が確認された岩手、宮城両県の震災がれきの一部について広域処理を進めている。環境省の担当者は、各地で放射能汚染への懸念が解消されているわけではないとしながらも、「広域処理への理解が徐々に進んでいることを裏付ける結果となった」と受け止めている。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/311eq_disaster_waste/?1344072909
がれき広域処理、「進めるべき」88%
TBS系(JNN 84()1817分配信
東日本大震災で発生したがれきの広域処理について、9割近くの人が「広域処理をすすめるべき」と答えたことが政府の世論調査でわかりました。これは政府が、今年6月に実施した「環境問題に関する世論調査」で、全国1912人から回答を得たものです。それによると、東日本大震災で発生したがれきを、被災した県以外で処理する広域処理について、「進めるべき」と「どちらかといえば進めるべき」と答えた人は合わせて88.3%となりました。「進めるべきだと思わない」と「どちらかといえば進めるべきだとと思わない」と答えた人は合わせて8.8%でした。環境省では
「広域処理への理解が進んできたと見られるが、単純にこの調査結果を国民の考えだと評価するのは難しい」としています。0501:23http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20120804-00000036-jnn-soci

 アンケートを実施したのは内閣府。内閣府の環境調査は、もともと国の「循環型社会(山本注:ごみ全量焼却社会)」を推進するためのもので、回答者が無意識に国の政策を認めてしまうように質問が並べてあります(生物多様性に関しては論評しません)。同省は今回、初めて「災害廃棄物に関する意識」という項目を追加し、次のような質問を盛り込みました。
11 〔回答票9〕東日本大震災により大量のがれきなどの災害廃棄物が発生し,被災地のみでその処理を迅速に進めることが困難な状況です。このため,政府は,放射性物質が不検出または低く,安全性が確認された岩手県及び宮城県の災害廃棄物の一部について,被災県以外で処理を行う広域処理を推進しています。あなたは,東日本大震災で発生した災害廃棄物の広域処理を進めるべきだと思いますか。この中から1つだけお答えください。
  ・進めるべきだと思う 63.5%
  ・どちらかといえば進めるべきだと思う 24.8%
  ・どちらかといえば進めるべきだと思わない 5.0%
  ・進めるべきだと思わない 3.9% 
httpp://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=20438&hou_id=15543 
 この調査を実施した内閣府とは、国の重要政策を実施・遂行するために、国民の思想調査・統制を行う機関。「法律上は
各省庁よりも高い位置づけを与えられており、優秀な人材を自前の職員としてはもとより、官民双方から登用することが目指されているなお、人事面での内閣官房、首相官邸との結びつきが強い」Wikipedia)とあるように、政府の最上位の機関といっていいでしょう。そこに「民」が堂々と入り込んで政策を立案しているわけで、そこにはTEPCOや原発メーカーから送り込まれた連中がいても、何の不思議もありません。がれきに反対する声が、政府にちっとも届かないのは、そうさせない制度・システムがあるから。このアンケートはその最たるもの。
 
「行政の民営化」が進むほど、市民の意見は無視され、行政との溝は深まってゆきます。
 なお、このアンケート調査は、調査員による訪問面接で行われていますが、回答者の選出過程は不明。内閣府のホームページを見ると、「本人であること」が何よりも重要視されており、回答傾向がわかる市民を選んでいるとの疑いがぬぐいきれません。もともと、アンケートというのは、一定の結果を導き出すための質問が用意されているものだから、「がれき問題」について無関心な人は、簡単に誘導にひっかかるでしょうね。同省のQ&Aには下のような弁明もあり、回答者が、半強制的に答えさせられていることがわかります。なお、回答者には「お礼」が渡されるようです。国への協力のお礼ね。 
【世論調査は義務ですか。拒否すると罰則があるのですか。】
・ 世論調査にお答えいただくことは、義務ではありませんので、拒否いただいても罰則はございません。
・ しかしながら、あなた様お一人のお答えが、全国の1万~3万人を代表する結果となりますので、仮にご協力をいただけないと、世論調査の結果が偏ってしまうおそれがあります。

・ そうすると、精度の高い世論調査の数字ができあがらず、世論調査の結果をお使いになる一般の方々、報道関係者やその報道をご覧になる皆様、学術関係者、政府の担当者などの
判断が誤ってしまうおそれがあります。
このように、正確な世論調査を実施するためにはあなた様のご協力が是非とも必要になりますので、趣旨をご理解いただき、ご協力をお願いします。











 


 http://www8.cao.go.jp/survey/faq.html#zenpan


 なお、調査に当たるのは内閣府職員ではなく、事業を請け負った民間企業です。内閣府のサイトには「(社)新情報センター」、「(社)中央調査社」、「(株)日経リサーチ」、「(株)日本リサーチセンター」の名前があがっています。相当な予算をつぎ込んで行われたであろうこの調査で、集めることができた標本数は2000足らず。それを、日本全国民の意思にしてしまおうというのは、政府とメディアによる国民の誤誘導作戦に他なりません。だから、環境省でさえ及び腰。がれき問題は終わったわけではなく、むしろ、ようやくその素顔が見えてきたというところでしょう。
 アンケートへの批判は、直接こちらにどうぞ(問題はメディアなんですけどね)。
 内閣府大臣官房政府広報室 世論調査担当:電話番号 03-5253-2111(大代表)

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/