台風19号の大雨と暴風で、私が懸念していたのは風発・ソーラーパネルの倒壊、流出と、フクイチ関連の被害でした。特に、福島県では阿武隈川が各地で氾濫し、最多の死者を出していることから、原発関連施設、特に除染廃棄物の仮置き場では深刻な事態になっていると考えました。ところが、福島県の報道は極めて少なく、いったい現地で何が起きているのかわかりません。↓は検索して見つけた記事です。
原発事故の除染ゴミが川に流出、保管場浸水 福島・田村https://www.asahi.com/articles/ASMBF4DVLMBFUGTB01Z.html …
除染で出た草木など廃棄物が入った袋(フレコンバッグ)が、仮置き場から川に流出。現場には2667個が保管されており、市はすでに6個を回収したが、他にも流出したものがあるとみて確認を進めている。市によると、12日午後9時20分ごろ、「フレコンバッグが川を流れ、6個を回収した」と、近くの土木業者から市に連絡があった。市が確認したところ、同市都路町岩井沢にある仮置き場が台風19号による大雨で浸水し、約100メートル先の川に袋が流されたという。保管されていたのは1袋約1立方メートルの大きさで、シートで覆うなどの台風の雨や風への対策はしていなかったという。市の担当者は環境への影響について、「環境省と連絡を取り、確認中」と述べた。
2667分の6?ウソだろ~というところです。↓の読売の報道では2667分の10ともほぼ同じ内容。
汚染土詰めた土のう、川に流出…10袋回収
2019/10/13 18:32 https://www.yomiuri.co.jp/national/…
福島県は13日、台風19号の大雨の影響で、東京電力福島第一原発事故後の除染作業で出た汚染土や草木などを詰めた大型土のう(フレコンバッグ)が12日夜、同県田村市の一時保管所から付近の古道川に流出したと明らかにした。10袋は回収されたが、県などは他にも流出した袋がないか調べている。県や市によると、一時保管所には2667袋が置かれており、12日午後9時20分頃、運搬を請け負う建設業者から流出したとの連絡があった。袋は直径約1メートル10、高さ約1メートル、容量は約1立方メートルで、空間放射線量は毎時1マイクロ・シーベルト以下という。
フレコンバッグが流出した時間も、本当はいつその「報告」が入ったのかも不明。しかし、福島県がこの件を発表したのは翌13日。そして報道はもっと遅く13日夜と、「報告」から丸一日後のことです。この時間差は、実態を軽く見せるため、メディアも含む関係者間で根回ししていたからでしょう。それを受けて、環境相も15日になって、「容器の破損はなく、環境への影響はない」と発言。流出量は言わず、メディアも追っていない。
進次郎環境相「調査中」除染廃棄物の流出量明言せず …
従って、流出汚染土の実態は、この報道よりはるかに大きいはず。しかしメディアがこの件を重視していないのは、まちがいなく政府・業界の意を受けてのこと。原発政策をプッシュしてきた政府は、今さら汚染土流出による環境汚染など心配するはずはなく、実態を隠そうとするのは当然です。というより、今回の事態は彼らにとって渡りに船だったのではないでしょうか。
なぜなら、①除染廃棄物のフレコンバッグが流されたのはこれが初めてではない(起きうることはわかっていた)、②フレコンバッグの総量は数十万個の単位に登っている(一個でも「消したい」)、③フレコンバッグの劣化はわかっているが詰め替えは無理、⓸政府は「汚染土再利用」を含め、汚染の拡散政策を決めているーーからです。
たとえば①については、2015年9月にも、同じような豪雨の被害でフレコンバッグが流される事件がありました。しかし、当時も全貌は明らかにされず、うやむやのまま終わっています。
除染廃棄物の袋が川に流出 30袋回収も「全体の数は分からず」福島・飯館村 2015.9.11 17:35更新 https://www.sankei.com/affairs/news/150911/afr1509110071-n1.html
そして、②フレコンバッグの総量はすでに、百万トン単位に達しています。
福島県内の国直轄除染の仮置き場だけで 搬入廃棄物175万㎥。
東京ドームの1.4倍分が積み上がる。さらに増加(福島民友)…リンク切れ
下は富岡町の仮置き場のドローン映像。2015年のものなので、今は空き地はないでしょう。
Nuclear Waste: Drone buzzes Fukushima temporary …
見ての通り、仮置き場は海岸線沿いの低地で、豪雨や高波、台風、津波に弱く、今回も相当数が流されたのではないでしょうか。
また③フレコンバッグの「劣化」は早いうちから指摘されていました。今回も、台風の豪雨に叩かれ、もろくなったバッグが相当数破れ、中身が環境中に漏れてしまったと想像できます。なのに報道は皆無。
⓸「除染土の公共事業への再利用」方針は、公共事業だけでなく農用地にも使うというめちゃくちゃな汚染拡散策。
つまり「自然」災害による除染土の流出は、政府と業界にとっては、処理対象の汚染廃棄物の減少につながり、本音では歓迎しているはず。海に流れ出し、生態系を汚染しようが、近海漁業がつぶれようが、魚を多食する人々が放射線被害によって病気になろうが、先天障害児が生まれようが、彼らは気にしません。とにかく「経済」さえ無事にまわってゆけばいいのだから。
311直後、「がれき問題」で全国各地で盛り上がった市民運動は、当時から激しい切り崩しに会い、それよりはるかに深刻な「汚染土再利用」問題に応答していません。汚染土は「福島県外」で処分することが決まっているのに。2019.10.16