米子産廃のキーパーソン、贈収賄で逮捕される

  鳥取、米子市の「淀江産廃処分場」問題で新たなニュースが入りました。

農地転用で収賄か農業委会長逮捕

0228日 1914https://www3.nhk.or.jp/lnews/tottori/20200228/4040004425.html

 米子市の農業委員会の会長が、農地を宅地などに転用する手続きで便宜を図った見返りに、不動産会社から現金60万円余りを受け取ったとして、収賄の疑いで逮捕されました。調べに対し、会長は容疑を否認しているということです。逮捕されたのは、▼収賄側が、米子市淀江町の農業委員会会長、高西史郎容疑者(82)で、▼贈賄側が、琴浦町赤碕の不動産会社代表、高力重儀容疑者(79)です。警察の調べによりますと、高西会長は、おととし4月から去年12月までの間、高力容疑者からの依頼を受けて、米子市内にある農地を宅地などに転用する手続きで便宜を図った見返りに、毎月3万円ずつ、合わせて60万円余りを受け取ったとして、収賄の疑いがもたれています。調べに対し、高西会長は、「現金を受け取ったことは認めるが、事実と違う部分もある」と供述し、容疑を否認しているということです。米子市農業委員会によりますと、農業委員は、地元の農家などが務める非常勤の公務員で、農地を別の用途で使用する場合には、農業委員会への申請が必要だということです。高西会長は、平成17年から米子市の農業委員となり、平成29年から会長を務めていました。米子市農業委員会の宅和茂史事務局長は、「大変残念だ。詳細は分からないので、捜査の状況を見守りながら対応を検討したい」と話しています。

 「産廃処分場」のことなんかどこにも出てない、と思われたことでしょう。

 実は逮捕された高西容疑者は、処分場予定地の直下の自治会の長でありながら、計画に「自治会として」「賛成」を表明している人物です(2020年2月時点での肩書は不明)。

 そして、その「小波上自治会」は、大山の伏流水が湧き出す「小波上の泉」で有名な地域で、休日ともなれば大勢の「水汲み」の人々でにぎわいます。その上流に、土壌や水系を汚染することがわかっている施設を受け入れようという人など、まずいないでしょう。では、この自治会はなぜ計画に「賛成」したのかでしょう。住民はこの計画をどれだけ「理解」していたのか、そしてその住民の意思を反映する手続きがきちんと行われたのか、という疑問を持たざるを得ません。

 こういう場合、ちゃんと調べて、手続きが不適正だったとわかれば、それを正し、「賛成」を「反対」に変えればいいだけの話です。でも、農山村地域の住民はーーたとえ「反対派」でもーー最後の最後まで対立を避けようとし、調査や説得をいやがり、結局は「権力」に押しつぶされてしまうことが多いのです。負け癖がついているというか・・・それは現地にさまざまな廃棄物産業が集積していることからもわかりますけどね。これまで戦ってこなかったわけ。そして、事業者はそれをよ~く知っている。

 そこで山本は、関連資料などを入手、道路払下げなどで行政が高西氏に便宜をはかった可能性があることを知りました。さらに、「誰も賛成なんかしていない」という住民が出てきて、同自治会の「決定」をひっくり返せる条件が整ったのです。ところが「反対派」はまったく乗り気ではなく、失敗。住民運動において、「身内の消極派」は、場合によっては事業者より面倒なことがあります。

 で、言いたいこと。まず、今回の「逮捕劇」は、淀江産廃計画にも同じような「癒着の構図」があったことを意味しています。

 ほとんどの「公害事業」は「農地転用」から始まることを考えれば、農業委員(特に委員長)に行政寄り、あるいは事業者寄りの人材を据えるのは常識。その人物の下で、一般市民がほとんど知らない「農地法」の手続きを粛々と進めることができるので、淀江産廃計画を主導している県にとっても、㈱環境プラントにとっても、高西氏はありがたい存在だったはず。「何をやってもかまわない」ことを学習した人間が汚職に手をつけるのに時間はかかりません。

 そしてもひとつ言いたいこと。産廃計画がかかわっている以上、たかが「63万円の贈収賄」で済むはずはない。

 他の報道によれば、「調べに対し高西容疑者は『ちょっと違う』、 髙力容疑者は『便宜を図ってもらったことはない』とそれぞれ容疑を否認」(https://www.bss.jp/news/)したとのことですが、カネのやりとりがあったということは、何らかの「役務の提供」があったという意味。背景を考えれば叩けばいくらでもホコリがでてくるはず。

 さらに、今回、「問題の場所」は公表されていませんが、本来なら米子市が発表し、責任を取るべきです。なぜなら、高西氏は、特別職公務員として、「地方公共団体の行政の民主的かつ能率的な運営並びに特定地方独立行政法人の事務及び事業の確実な実施を保障」する(地方公務員法第1条)という責務に背いたわけだから。こういう不誠実で不正直な人物を15年も農業委員に任命し、さらに委員長にまでつけたのは、彼の淀江産廃における重要な役割を評価したとしか考えられず、任命権者の米子市長の責任が問われるわけです。2020.3.1

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/