世界各国で子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)に対する訴訟がおきていますが、それへの反撃か、アメリカなどでは女児だけでなく、男児にもHPVワクチンを打つ動きを強めています。
たとえばアメリカがん協会 (ACS)は7月、CDCの予防接種に関する諮問委員会である「ACIP」の方針に賛成し、女児だけでなく男児へもHPVワクチン接種を認めるという提言を発表しています。同時に同ワクチンに関するガイドラインを改正していますが、2007年に出された最初のガイドラインからして、当時、 男性への使用は承認されてもおらず、18歳以上への有効性の証明も不確かだったにもかかわらず、HPVワクチンが、子宮頚がんやペニス、咽喉がんなどを予防すると書かれていたのです。
で、今回の「推薦」と新ガイドラインをあわせると:
- 全児童へのHPVワクチン定期接種は、11歳から12歳で開始されるべきだ。ワクチン接種は9歳からでも始められる。
- HPVワクチンは、これまで同ワクチンの未接種者、あるいは三回のワクチンを完了していない13歳から26歳までの女性と、13歳から21歳までの男性にも接種されるべきだ。また、22~26歳までの男性も接種されるものとする。(ガイドラインでは、年齢が高くなってのワクチンのがん予防効果は低くなることを接種者に知らせるべきだとしているが、ACIPはそもそもこれれの年齢層にHPVワクチンを勧めていない)。
- 女性に対するHPVワクチンは、現在の三種類(2価ーサーバリックス、四価ーガーダシル4、9価―ガーダシル9)のどれでも推奨される。男性には4価か9価を勧める。
- また、26歳までの男性同性愛者や免疫不全症候群(HIV感染者含む)で、これまで同ワクチンを打っていない男性にも接種を勧める。
・・・若い男性すべてに接種を勧めているわけです。子どもの場合、ワクチン未接種は入学させないという形で95%以上の接種を達成しているアメリカですが、今後、社会人にも何らかの形で「強制接種」を仕掛けてくるはず。資本主義の原理が強いアメリカでは、この「推薦」をまとめた医師らは、世界各国で相次いでいるHPV訴訟や副反応については完全無視しているようです。なおガイドラインのurlは下につけました。
ところで、日本の少女たちに大変な被害をもたらした子宮頚がんワクチンの2価(サーバリクス)、4価(ガーダシル)については、「新型」が発売されたことをもって、使用を停止した地域が多いはず。たとえば、ミネソタ州の「児童ワクチンプログラム」には、ワクチンプロバイダー向けのこんな↓文書が発出されています;
「2016年4月11日
MnVFCプログラムにおいて、2価HPVワクチン及び4価HPVワクチンは、2016年5月1日より使用が停止されています。
(以後は)9価HPV(ガーダシル9)のみが使用されることになります。2価と4価は、新しいCDC小児ワクチン契約にもとづいて廃止されたため、今後は使えません。ワクチンの廃棄を最小化するため、プロバイダーは、新たな注文を出す前に、現在の2価と4価の在庫を有効利用してください。ちなみに、現在のACIPの「推奨」は以下の通りです。
- 11歳から12歳のすべての子どもたちにHPVワクチンを打つ
- 下記の者であってHPVワクチンを打っていない、あるいは三回接種を完了していない者にもHPVワクチンを打つ
○13歳から26歳の女性
○13歳から21歳の男性
○26歳までの特に高リスクの男性(MSM,HIV陽性を含む免疫不全症候群)」
・・・こうして、先進国で破棄された欠陥ワクチンが途上国に流れ、そこでさらに大きな被害を出しているわけです(コロンビア、インドなど)。もっとも、日本でも、厚労省は「積極勧奨」こそ中止していますが、2価と4価を破棄する度胸はなさそう。そのあたりを監視する市民運動がない限り、被害者は今後も出続けるでしょう。2016.8.13
(アメリカがん協会のガイドライン:Article: Human Papillomavirus Vaccination Guideline Update: American Cancer Society Guideline Endorsement. CA: Can J Clin. doi: 10.3322/caac.21355. URL upon publication: http://onlinelibrary.
この記事の参考:http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-07/acs-acs071416.php