本ブログの過去記事「緊急のお願い(風車「報告書案」にノーを) (09/15)」に関するパブコメの結果を、環境省が公表しています。以下は環境ビジネスの報道。環境省のサイトは記事の下につけました。
「風力発電所の騒音、評価手法の報告書が公開 測定は「四季ごとに昼夜2回」など
2016年11月29日 https://www.kankyo-business.jp/news/013858.php?utm_source=mail&utm_medium=mail161130_d&utm_campaign=mail
環境省は、「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会」の報告書を取りまとめたことを発表した。あわせて、2016年8月19日から同年9月17日までの間に実施した意見募集(パブリックコメント)の結果も公表した。この報告書では、主に商業用に用いられる一定規模以上の風力発電施設を対象とし、現時点までの知見・風車騒音の評価方法について取りまとめた。報告書では、これまでに得られた風車騒音の知見や研究結果、風車騒音の評価の考え方、調査・予測、対応策や、今後必要な取り組みなどが記載されている。報告書の概要は下記のとおり。
「風車騒音は超低周波音の問題ではない」
風力発電施設から発生する音は、通常著しく大きいものではないが、もともと静穏な地域に建設されることが多いため、比較的小さな騒音レベル(A特性音圧レベル)であっても苦情等の発生事例がある。これまでに得られた知見として、風車騒音は超低周波音ではなく、通常可聴周波数範囲の騒音の問題であること、騒音レベルは低いが、より耳につきやすく、わずらわしさ(アノイアンス)につながる場合がある。風車騒音の評価は、風力発電施設を新設する場合が対象となる。評価の目安となる値として+5dbに収まるよう設定する。測定は、原則四季ごとに、昼間と夜間のそれぞれの時間帯で行うとしている。パブリックコメントは、89通の意見提出があった。整理された意見総数は451件で、その概要と意見に対する考え方がまとめられた。
【参考】環境省 - 風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書について
★風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書について
予想通り、環境省はパブコメを「聞きおく」だけ、報告書(案)の中身を変えるつもりはありません(一部の語句は修正予定)。
つまり、「耳には聞こえない低周波、超低周波」の存在は認めるけれど、「聞こえないから音じゃない」→「聞こえない音の被害なんて存在しない」というわけ。その結果、今後の風力発電は、低周波音に関する規制ゼロという「法の空白」を縫って突っ走る体制が整えられたわけ。
上記★の環境省とりまとめを読むと、二つの特徴があきらかになります。
ひとつは、市民意見が「技術論」に集中していること。これは、募集にそった意見なので当然といえば当然ですが、一般市民には理解できず、せいぜい何らかの「線引き」が問題になっているだけというイメージを与えることでしょう。本来なら、風車騒音被害を可聴音だけに限定するのなら、非可聴音(低周波音)を規制する別のルールが必要ですが、そういう議論がまったくないまま現在に至ってしまっているようです。こういう、法律に規定のない公共事業は、何よりまず「法制」を問題にしないと、技術論議に終始しがちで、その結果、現状追認の形になってしまうものです。ま~、これは「反風力」の運動が全国化しなかったため(全国展開を阻むものがあった)、論点も明確にならなかったのでしょう。
次に気づくのが、事業者の居丈高な意見が多いこと。例えば:
25 ・風車によるわずらわしさ(アノイアンス)の要因として、景観等の騒音以外の要素の寄与が大きいことが示されていながら、騒音に対してことさら厳しい目安を設定することは不合理である
57 ・風車騒音と睡眠障害の間に関係があると結論付けることは不適当である。
71 ・・・・苦情事例の中に、風車騒音には悪影響があるという思い込みによってわずらわしさ(アノイアンス)や他の健康影響を訴えることによる苦情が含まれている可能性があることを追記すべきである
風力事業者がいかに被害者の人権を無視し(被害の存在そのものを否定しようとしている)、規制を嫌っているかがよくわかりますが、パブコメでこういう露骨な意見が出る例を私はあまり知りません。彼らはおそらく、「風力には明日がない」ことを認識して、今のうちに稼いでおきたいのでしょう。中にはこういう↓具体的な要求も。低周波被害を認めない環境省は、事業者の求めには応じている。
なお、低周波音の存在とその得意な性質は、環境省でさえ認めています。
29 ・低周波音は通常の騒音に比較して家屋等により遮音されづらく、家屋内では低周波成分の影響が相対的に大きくなり、悪影響を及ぼす可能性がある→・ご指摘のとおり、低周波音は通常の騒音と比較して家屋等により遮音されづらい特性を持っていることから、留意が必要である点を報告書(案)の p.6 に記載しています
当然、各省庁は「低周波被害」についてもよく知っています。たとえば↓の質問趣意書のように、1970年代、80年代の国会議員は、「低周波音空気振動」(当時はこう呼ばれていた)を深刻な被害をもたらす公害と認識していました。
html – 質問主意書:参議院 … 高速自動車道に係る低周波空気振動による周辺住民の健康被害問題が顕在化してからすでに相当の年月を経過しているにも拘らず現在まで何ら有効な対策が講ぜられていないことは誠に遺憾である…
それが「学識経験者」らがカネで買われた結果、被害問題は完全につぶされてしまったのです。40年後の今、「風力」の登場で問題が再度浮かび上がってきたのだけど、学者たちは本当のことを言わず、おバカな官僚は彼らのニセ作文をそのまま信じ込み、法律をいじくりまわそうとしている。
以下は私の質問ですが、それに対する意見は「答え」になっていません。
・「評価の目安となる値」の、法的拘束力等の位置付けを明らかにされたい。
→・本報告書(案)は技術的、専門的な観点からの知見に基づく考え方を取りまとめたものであり、風力発電施設の設置等に当たり、騒音問題を未然に防止するために対策を講じ、生活環境を保全する上での参考となるよう、評価の目安となる値を設定したものです。
実際は、「法的根拠にはならない」という意味だ。だから、事業者がどれだけこの価を振り回しても、住民はこれを拒否できます。第一、「聞こえない」とするなら、それを「騒音」の範疇に入れるのも不適当なんですけどね。やはりこの問題には法律論議が必要だと思います。2016.12.1