炎をあげるインディアン・ポイント原発

 ニューヨーク市からわずか60キロのところにあるインディアン・ポイント原発で、爆発・火災事故がおきています。日本での扱いはごく小さく、寝ぼけた記事が多いのは、この事故が「再稼働の危険性」を証明しているからでしょう。で、そのあたりをしっかり書いているStephen Lendmanの記事を紹介しておきます(下線部分に山本の説明と感想をつけました。原文は⇒Indian Point Nuclear Power Plant: A Ticking Time Bomb? May 11, 2015)

NY市から38マイル、インディアン・ポイント原発は時限爆弾?

 すべての原発は本質的に危険だ。特に、老朽化しメンテナンス不良のものはなおさらだ。
 エンタジー社のインディアン・ポイント原発は、
ニューヨーク市から38マイルのところにある。1974の稼働以来、無数の事故を起こし、懸念されていた。最新の事故は5月9日に起きた。変圧器が爆発したのだ。炎と黒い煙が見えた。3号炉は停止された。行政は公衆の安全には何の脅威もないと発表したが、核の専門家は、インディアン・ポイントの恐ろしい歴史をあげるーー取り上げられることのない健康被害、安全操業違反、無数の事故と汚染などーーいずれも稼働以来、つきまとい続けてきた問題だ。

(山本注:38マイル=約60キロ。東京ー八王子間+10キロくらい。「核の専門家」=「原子力」なんて表現は日本だけで、どの国でも「原発」ではなく「核電」と表現しています。その方が実態をよく表しています。) 
 原発の排水はハドソン川の何百万もの魚や水棲生物を殺してきた。原発に近いコミュニティでは、どこでもがんの発生率が異常に高い – インディアン・ポイントは特にそうだ。原発を停止した地域で、乳児死亡率が下がったことが文書で裏付けられている。
(温排水による熱汚染で生態系が狂ってしまうのです。現在太平洋に面した米西海岸で見られている海棲生物の大量死、異常行動も海水温の異常な上昇のせいではないかとの指摘もあります)

 インディアン・ポイントは三つの地震断層の上あるいはその近くに建設されている。公式発表では、マグニチュード6.1までの地震に耐えられるように建設されたというが、地震学者はそれをはるかに上回る大地震が起きるだろうと予測している。
(川内原発をめぐる議論とそっくり。行政も業者も「警告」を無視しがちなのもそっくり)

 専門家は施設の停止(閉鎖)を求めている。すでに稼働限界を超えているからだ。壊滅的な事故の可能性を避けるために、早期停止が必要だ。そうしないと数百万人のNYと近隣市町村の住民がリスクにさらされることになる。この地域が完全に居住不可能なデッド・ゾーンになることを想像して欲しい。チェルノブイリのような、そしてフクシマのような。
(フクシマの指定区域解除ーーエートス作戦ーーが、海外には伝わっていないようです)

 NYデーリーニュース他の調査によって、インディアンポイント原発の火災感知、鎮火システムは非常にお粗末だったことが明らかにされた。NY司法長官エリック・シュナイダーマンは、同施設の連邦火災規則違反を「向こう見ずで受け入れがたい」と述べている。アメリカの原発オペレーターは、重大な安全規則を無視しており、周辺住民は重大事故の危険性に直面しているが、それらの情報は隠蔽されている。核専門家のハーベイ・ワッサーマンは「アメリカの原子炉はいわゆる「防火材」を用いた何千もの主要接続部で迷路のようになっている。それらは燃えると危険なチャー(炭化物)になって消防士の活動を妨げる」「アメリカの規制機関は無力で、原発所有者に、それらのひどく不適切な防火システムを強化させようとしなかった」。
  2011年、シナプス社(http://www.synapse-energy.com/)は、原発を停止し、代替エネルギーを考慮するよう提言するリポート Natural Resources Defense Council (NRDC)/Riverkeeper report をまとめている。「フクシマ大災害による人的コスト、経済的コストを、インディアンポインで事故が起きた場合のコストを比較し」、NY市に電力を送る必要はないと述べ、原子力規制委員会(NRC)は「地震活動によりもたらされる危険性を過小評価している」としている。「フクシマ規模の原発事故が起きれば、放出された放射性降下物はNY市南部まで到達し、何百万人もの市民が、シェルターに入るとか、避難が必要になるだろう。そのコストはフクシマの10倍、100倍にものぼるはずだ」「NY市をもっと安全にするために、風力、太陽光、その他の再生エネルギーを選べばいい」、リポートはそう述べている。

(ここでは再エネ批判はしません。最大の核電国、アメリカの事情は日本と単純比較できないので)
 NYには余剰な発電能力があり、安全で信頼できるオプションを導入する十分な時間的余裕がある。インディアンポイントは「稼働延長」の許可の下で運転されているが、それも今年で切れるため、エンタジー社はさらに20年再稼働を求めようとしている。(中略)
 危険は残る。専門家は、とりかえしのつかない破滅的事故が起きる前に、同原発を解体するよう求めている。
(この事故の結果、変圧器の大量の油がーーPCBを含んでいるかもーーハドソン河に流れ出していますが、これについては後ほど。なお、↓は日本の報道です)。2015.5.12

米の原発、変圧器火災で原子炉緊急停止 20150510
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http://www.yomiuri.co.jp/science/20150510-OYT1T50080.htmls
【ワシントン=中島達雄】米電力大手エンタジー社は9日、米ニューヨーク州にある同社のインディアン・ポイント原子力発電所3号機で変圧器の火災が発生
し、原子炉が緊急停止したと発表した。同社によると、原子炉は安全に停止し、周辺住民らに影響はない。米原子力規制委員会(NRC)の緊急事態の4段階の
分類のうち、最も低い「放射性物質の漏えいを伴わない異常」に該当するという。同原発はニューヨーク市中心部の北約55キロにある。3号機は1976年か
ら稼働した。電気出力は約100万キロ・ワットで、原子炉のタイプは北海道、関西、九州、四国の各電力などの原発と同じ加圧水型軽水炉。

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/