先日、こういう↓驚くべきニュースが入りました。
洋上風力発電法が成立
2018年12月1日05時00分https://www.asahi.com/articles/DA3S13792784.html
海上で風車を回して発電する「洋上風力発電」の整備を促進する法律が30日、参院本会議で可決、成立した。国が促進区域を指定し、公募で選んだ事業者に最長30年の占有を認める。地元の自治体や漁業者、海運会社などの利害を調整しやすくするため、協議会を設けるなどとする内容だ。国は同法に基づき、近く5カ所程…
…国が、洋上風発建設、しかも大規模マリコン・事業者に直接、「お墨付き」を与える制度を作ったという意味です。この短い記事だけでも、この事業はさまざまな環境法に違反することは明らかで、深刻な影響をもたらすことがわかりすが、実は私は初めて聞きました。風発関係の団体は、この件を議論していたのだろうか…あまりに不可解なので、検索したら、なんとこの法律、最初から「閣議決定」で制定することが決まっており、3月には法律案が閣議決定されていました。実質的には国会論議がないということだから、国民はこんな法律ができたなんてことを知るはずはありません。・・・だから誰も騒がなかったんだ。
3月の時点で法律名も決まっています。「海洋再生エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」と。
2018/03/13 www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1803/13/news063.html
今後日本でも導入拡大が期待される洋上風力発電。政府は2018年3月9日、今国会に提出する洋上風力発電事業などを実施する際の一般海域の占用ルールを定める「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」を閣議決定した。政府が「促進区域」を指定し、そこで洋上風力発を行う事業者を公募で選定する制度を創設する。
現状、沿岸から近い港湾区域に利用については、2016年に港湾法が改正され、港湾管理者が公募を通じて洋上風力発電の実施計画を認定できるようになった。これにより、発電事業者は港湾区域内の占用許可を申請しやすくなった。その一方、海域の大半を占める一般海域については、現状、長期の占用を行うための統一的ルールが整備されていない。また、各都道府県の条例による運用では、許可される占有期間が3~5年と短期なため、長期の事業となる洋上風力発電を計画することは難しい状況だった。今回政府が新たに創設する法案では、こうした一般海域の占用ルールを定め、洋上風力発電の事業計画を策定しやすくする狙い。
法案では、まず政府が基本方針を策定した後、経産省および国交省が、農水省や環境省と協議し、一般海域の中から「促進区域」を指定。公募占用指針を策定する。その後、国交相と経産相が発電事業者を公募して選定を行う。選ばれた事業者には、最大で一般海域の30年間の占用が許可される。
発電事業者を公募選定については、「再生可能エネルギー固定価格買取制度」(FIT)と併せた運用になる。ただし、現状の風力発電のように一律の買い取り価格を適用するのではなく、入札制度で価格を決める。政府はこの法案に基づいて創設する制度で、2030年度までに5区域を洋上風力発電事業の促進区域として指定する方針。これにより、陸上と比較して規模が大きい洋上風力発電の導入を広げ、陸上を含む風力発電全体の導入容量を2016年度の330万kW(キロワット)から、2030年度までに1000万kWまで引き上げたい考えだ。
はっきり言えば、これは、海外事業者を含む巨大マリコンに便宜をはかるための法整備です。国策事業として、建設にはまちがいなく多額の税金がつぎ込まれるはずで、下手すると、ただでさえ高い日本の電気料金もヨーロッパや南オーストラリア並みに倍増しかねません。問題は、これらの施設建設には、前代未聞の大規模な海洋環境の破壊が伴うこと。しかもCO2削減には何の役にも立たず、逆に機械製作、運搬、建設の過程で膨大なCO2を発生させること。さらに、「30年後」、あるいはそれよりずっと早く、膨大な風発産業廃棄物が発生すること。同法案はこれらの問題を完全スルーしています。
ところがこの法律案は、7月の時点で「審議未了」、いったん廃案となっていました。
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DC842E.htm
それが秋の臨時国会に再提案され、再び閣議決定された後、議会でもすんなり通過したようです…その間の経過は検索しても出て来ない。
「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」を閣議決定
平成30年11月6日http://release.itmedia.co.jp/release/sj/2018/11/06/dc36ee025b39054c3accd7b3c0e55964.html
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1.背景
海に囲まれ、かつ国土の面積も狭あいな我が国にとって、海洋再生可能エネルギー発電事業の長期的、安定的かつ効率的な実施が重要であることに鑑み、海洋に関する施策との調和を図りつつ、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用を促進することが求められています。
2.法律案の概要
<占用までの手続きの流れ>
[1] 内閣総理大臣は、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用を促進するための基本方針の案を作成し、政府が閣議決定により定めます。
[2] 経済産業大臣及び国土交通大臣が、農林水産大臣、環境大臣等との協議や、関係者を構成員とする協議会等の意見聴取を経た上で、促進区域を指定し、公募占用指針を策定します。
[3] 事業者は、経済産業大臣及び国土交通大臣に公募占用計画を提出します。
[4] 経済産業大臣及び国土交通大臣は、発電事業の内容、供給価格等により最も適切な公募占用計画の提出者を選定し、当該公募占用計画を認定します。
[5] 事業者は、認定された公募占用計画の内容に基づきFIT認定を申請し、経済産業大臣はFIT法※に基づき認定をします。
(※ 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)
[6] 事業者は、認定された公募占用計画に基づき占用の許可を申請し、国土交通大臣は30年を超えない範囲内において占用を許可します。
添付資料
報道発表資料(PDF形式)
概要(PDF形式)
要綱(PDF形式)
法律案・理由(PDF形式)
新旧対照表(PDF形式)
参照条文(PDF形式)
お問い合わせ先
国土交通省港湾局 課長補佐 成澤
TEL:03-5253-8111(内線46657) 直通 03-5253-8674
内閣府総合海洋政策推進事務局(主担当) 参事官補佐 赤間
TEL:03-6257-1923(直通)
経済産業省資源エネルギー庁 課長補佐 中西
TEL:03-3501-4031(直通)
誤解している人もいるでしょうが、日本の産業界が求めているのはCO2削減ではなく、利益です。彼らは「ヨーロッパでは4000基以上の洋上風発があるのに、日本はまだ6基、しかも試験中」であることに大きな不満を持ち、日本での洋上風発を阻止している条件(漁業権、住民の自治権、環境保護への主張)をとっぱらおうとしているわけです。特に漁民の権利が狙われている。従って、現在、洋上風発の計画が出ているところ、過去に計画が出たところ、また、陸上の風発を容認しているところは、「促進区域」に指定される可能性大。すぐにそれを拒否するような体制を整える必要があります。だって、産業界は法律制定までに基本的な根回しは済ませているものなので。2018.12.2