洋上風発、どの国でも漁師が反発

しばらくぶりに風発問題をチェックしましたが、どの国でも漁師を中心に大変な反発が起きていました。以下はイギリス、スコットランドの状況。

スコットランドの漁師、大規模洋上風力発電による漁業破壊を懸念 

2022年5月31日(原文:The Scotsman

シェットランド漁業組合(SFA)はスコットランド政府に対し、ScotWindとIntogによる一連の洋上風発について環境影響を検討するよう求めた。同海域は生態学的に敏感な地域であり、そこに風発を建設することによって、コダラ、タラ、サバ、ニシン、ブルーホワイティングなどの個体数が減少することが懸念されるからだ。

「スコットランド政府と洋上風力発電事業者は、魚の産卵場所の真ん中に洋上風発を設置することで、どんな影響が起きるかについて完全な調査を実施すべきだ」

「この地域は持続可能な漁業に依存している。その影響を十分に理解しないまま洋上風発建設を進めるのは、これら資源の持続可能性に対する大きな脅威だ」

同組合が、スコットランド政府のデータと120隻の漁船からの情報をもとに作成した地図によれば、開発予定地は、稚魚にとって重要な生態系と重なっており、風発のリスクは「明白な形で露呈」しているという。業者は18の区域で風発を設置しようとしているが、人気のある海産物のコダラの産卵地でないのは2か所しかない。

また、ロブスターやカニが、海洋エネルギー計画用の海底電力ケーブルの電磁波によって害を受けているという証拠も増えているという。「広大な海域を多国籍エネルギー企業の競売にかけた際、政府はこの海域が産卵場所だということさえ考慮しなかったのではないかと我々は疑っている」。(翻訳ここまで)

 どの国でも政府が漁業者の権利を踏みつぶして、アセスも行わず、海域を多国籍企業に売り渡しているのですね。しかもこの例は初めてではなく、すでに広い海域が風発で占領されており、その結果、豊かだった漁場が破壊され、漁民たちは生活の糧を失うなど深刻な被害が出ています。漁場の破壊とは、産卵場所の破壊だけでなく、水棲生物に対する生物学的悪影響も含みます。↓はこの4月の Daily Mailの記事から。

 「・・・最近発表された科学研究によると、洋上風力発電装置をつなぐケーブルが発生する電磁場によって、カニやロブスターが変形し、機能不全に陥っている。カニの場合、磁場に固定されてその場にとどまり、事実上動けなくなることが判明。ロブスターに関する別の研究では、子どものロブスターは通常の動きができないほど変形し、奇形になることが明らかになった。餌と繁殖のために海底を長距離移動する必要がある生物にとって、洋上風発は死刑宣告に等しいかもしれない。すでにイギリスやアメリカの大西洋沿岸水域では、何千もの風発装置が設置されているが、これは世界中のロブスター漁師にとっても死の宣告になりかねない。」

 電磁波放射装置(特に5G)は、陸上においてもあらゆる生物に深刻な危害を加えることが、ようやく知られるようになってきましたが、海底に網の目のように張られたケーブルのただなかで生まれる生物は、そのまま見えない電磁波のオリに閉じ込められて、死に絶えるしかありません。風発の不気味な形態は、それがクリーンやグリーンとは程遠い、異世界の殺し屋であることを物語っています。風発への幻想はすぐに捨てないと、その設置場所には予想もできない環境的、生物学的、社会的被害が起きることでしょう。2022.6.19

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/