4月9日、日本学術会議東に本題震災復興支援委員会が、「災害廃棄物の広域処理のあり方について」という提言を出しています。http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t-shien5.pdf。この委員会には東大や名大のセンセイと並んで、原発メーカー・東芝の研究員の名前もあり、提言も予想通りぴったり政府に寄りそっています。以下、長い文章を独断と偏見ではしょって、意見を加えました。みなさんはぜひ原文もお読み下さい。なお、赤字は山本の説明です。
現状及び問題点(学術会議の現状認識のこと)
・国が定めたセシウムの基準値以下なら、作業員の年間被爆量は、ICRP が定める追加線量の基準を下回ると考えられる。一般公衆も、最終処分場の跡地に居住した場合でも、掘削をしないなど十分注意すれば、年間被ばく線量は、自然放射線と比較して100 分の1 以下に留まる。(なんと、閉鎖処分の宅地開発を想定していた……学術会議は人体実験を推進する気か?)
・溶融炉周辺住民が粉塵を吸入することによる被ばくや、近隣の農作物、畜産物、養殖魚類の摂取による被ばくは、さらに10,000 分の1 以下と推計される。(溶融炉とはガス化溶融炉=焼却炉のこと。一万分の一以下とは、学術会議が「排ガス中の放射能はバグフィルターで99%除去できる」というウソを採用しているという意味。バグフィルターを簡単にすり抜けるPM2.5の存在には触れないし、汚染されたフィルターの行方にも触れていない)
・搬出、搬入時にモニタリングを行うなど、慎重な手続で行う限り、健康被害を引き起こすものではない。(「健康被害」について定義はありません。福島だけでなく、各地で子どもたちの健康被害が報告されていますが、これは健康被害じゃないのね。)
・文科省の調査で、空間線量0.1μSv/h 以上は福島県から北関東にかけて分布し、岩手・宮城県においては、宮城県南部の一部を除き、高線量の地域はほとんどない。フクイチから100 km 圏内の周辺部ではセシウムの汚染が少ない。(広域処理推進派とまったく同じ主張。広域処理するがれきは安全、って。)
・岩手・宮城両県でも低濃度ながら放射性物質が測定されており、分別や運搬の過程で、汚染廃棄物が移動、混合される可能性があり、管理手順と基準を守る必要がある。また、がれき焼却によって、焼却灰、特に飛灰(ばいじん)やその溶融物にセシウムが濃縮され、ストーカ炉で飛灰が3%発生するとしたら、濃縮率は33.3 倍となり、元のがれきのセシウムが240(≒8,000/33.3)Bq/kg 以下なら、焼却灰になっても8,000Bq/kg を下回ることとなる。灰の溶融処理では濃縮率は最大100 倍程度になるため、焼却灰濃度が8,000 Bq/kg 以下になるよう配慮すべきだ。(どっちみち混合されて焼やされるんですけどね。それに、市の焼却炉で放射性物質を焼却することは想定されていないし、違法ですっ! 33.3倍だの100倍だのというのは、どこかで行った実験に基づくものですが、その実験の正確や妥当性、法律解釈には大きな問題があり、実験そのものが違法だと思います。)ここまでが前提で、その後、以下の4項目の提言があります。提言は原文のまま。
提言1:被災自治体は、災害廃棄物の組成及び量をより正確に把握して、可能な限り多くを地域内において再利用した上で、残りを処分又は焼却、あるいは広域処理するという観点から処理計画を更新していくべきである。国は計画策定、及び実施を支援するための技術的助言、財政的支援を強めるべきである。→何のこっちゃない。広域処理推進の共謀者でした。
提言2:国は、災害廃棄物を防災林の基盤や防潮機能を持つ高台の造成に利用するために、不純物除去費用等の追加的な費用を財政的に支援するとともに、再利用できる災害廃棄物を増やすために、選別技術の向上等に努めるべきである。→除染やがれきの再利用、分別・処理技術にいくらでも税金をつぎ込みなさいよ、という意味。
提言3:岩手県・宮城県で生じた災害廃棄物に含まれている放射性物質濃度は、多くの場合、十分に小さく、放射性物質汚染対処特別措置法及び災害廃棄物広域処理推進ガイドラインの処理・処分基準を満たすかぎり健康被害を引き起こすものではなく、県内処理も広域処理も可能である。しかし、基準は再生利用の有無など処理方法によって異なることから、広域処理を進めるに当たって、国は、被災地側の希望と、受入地側の廃棄物の種別、放射性物質濃度に関する条件が適合するよう調整し、広域処理が円滑に進む環境を整えるべきある。 →岩手・宮城の放射能は十分低いから、どこで処理してもOK、埋め立てる時だけ8000ベクレル以下にするようにしなさいよ、ということで、まさに放射能の拡散派。学術団体ということを考えるととても悪質。犯罪的です。
提言4:国及び自治体は、災害廃棄物の処理にあたって、県内処理か広域処理かにかかわらず、放射性物質、その他の有害物質の含有量が搬入前、処理後に、安全基準を下回るかを継続して確認し、そのデータを公開するべきである。とくに、国は、災害廃棄物の処理を行う自治体が、住民と十分なリスクコミニケーションが取れるよう、基準の設定過程や設定根拠を含めた関係情報の全面開示、線量測定をはじめとする含有物測定に関する技術的及び財政的支援、中立的専門家による工程点検の機会保証等に当たるべきである。→根拠のない安全基準をかかげて、いくらデータを公開しても無意味です。それにリスクコミュニケーションとは偽の合意形成手続きにすぎないし、中立的専門家とは御用学者のこと。日本学術会議が御用学者の集団だということはわかっていたけど、ここまでひどいとは思わなかった。甘かった。なお、この結論を導いたのも有名な御用達連、審議会の常連です。
提言の作成にあたり、以下の方々に御協力いただきました。(敬称略)
花木啓祐 第三部会員東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授
森口祐一 連携会員東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授
酒井伸一 連携会員京都大学環境安全保健機構附属環境科学センター長・教授
日本の学者、そして産官学トライアングルは、私たち市民の生命をもてあそんでいます。いいかげん根底から世直ししないと、市民はいつまでたっても浮かばれない…2012.4.13