新潟県知事、がれき市長らにお手紙

  新潟県のがれき5市に、泉田県知事が懸念を表明するお手紙を出していたそうです。新潟日報はこれに対する首長たちの反応を伝えていますが、なんと、そろって「シカト」とか。行政担当能力以前に、基本的にコミュニケーション能力の欠如が疑われます。

震災がれき、5市に文書で懸念 県、放射能管理の原則主張
2012/12/12 08:48 新潟日報

 東日本大震災で発生した岩手県大槌町のがれき受け入れを検討している三条市
など県内5市に、県が焼却灰に含まれる放射性物質の管理方法などについて懸念する文書を出していたことが11日、分かった。県の文書は、泉田裕彦知事のこれまでの発言をまとめたもの。国際原子力機関(IAEA)の基本原則は放射性物質を集中管理することだとし、5市の最終処分場での長期的な焼却灰管理を懸念している県によると、長岡、三条、柏崎の3市には県の担当課が持参。「焼却灰の管理については具体的な協議が必要」として協議の場も要請した。新潟、新発田の両市にはメールで伝えた。三条市は本格的に受け入れた場合、焼却灰をコンクリート固化し、市内の最終処分場に埋め立てる方針。県の文書に対し、三条市の国定勇人市長は「そもそも(がれきは)一般廃棄物で市町村事務。知事は立場をはき違えている」と批判。また、新潟市の篠田昭市長は「真意が分からない」と述べた。県は「焼却灰の管理の在り方について協議が必要と考えているが、5市から反応がないので、あらためて知事の見解を伝えた」としている。
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20121212016382.html

 長岡、三条、柏崎には県の担当課が直接出向いて、文書を手渡し、「焼却灰の管理についての協議」を求めている。がれき焼却後の灰は有害産廃になるため、県が関与するのは当然です。
これに対し、三条市が「がれきは一般廃棄物で、市町村事務」と、知事の立場を批判しているのは、まちがい。都道府県には、基礎自治体の事務処理に対して、必要があれば、問題点を指摘、是正を勧告することができます(地方自治法245条の6)。
 「必要があれば」とは、県が、市町村の法令違反や不適正事務、公益侵害を認めた場合のことを指しますが、そもそもこれらの市町村のがれき受け入れは、県の環境基本条例に違反する、立派な違法事業なのです。 
 ★ここで注意。他の環境基本条例がある都道府県でも同じですが、誰もこの点を指摘しないと、行政は知らん顔で事業を強行するもの。一度やればそれが前例になり、こうして法令無視が当たり前になり、住民の権利が否定されてゆくのです。がれきに反対したければ、法令を身につけ、それをベースに行政と対峙して下さいね。
 また三条市は「がれきは一般廃棄物で市町村事務」と言っているのもまちがい。これは文章を二つにわけるべき。①がれきは一般廃棄物である、②一般廃棄物の処理は市町村事務である。
でもね、①=②ではありません。だから、本来は「がれきは一般廃棄物だが、その処理は市町村事務ではない」が正解。市町村事務なら国が大キャンペーンを打つ必要も、特別の手続きを経ル必要も、説明会の必要もないでしょう?
 ★ここでもひとつ注意。①についても、廃棄物処理法は「災害廃棄物」について規定しておらず、法廷産廃品目の中にないから、便宜的に一廃としているだけの話。本来なら、その性質上、特別管理産業廃棄物とすべきものです。
 ところで、新潟・新発田には直接持参ではなく、メールだったとか。これは両市とも、住民の強い抵抗で試験焼却が延期になったことを反映しているのでしょう。とにかく、県がわざわざ提示した「協議」の場、それに乗らない五市の首長はよほどがれきをあきらめたくない理由があるのでしょうね。私が話したいくつかの市の職員は、少なくともみんな「ほんとはイヤです」「止めてほしい」なんて言ってたから。
2012.12.14

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/