原発40年定年ルールを自ら破壊する原子力マフィア

 原子力マフィアは、やはり、老朽原発を60年稼働できるように画策していました・・・規制庁自ら法律を破るというとんでもない違法行為。他の省庁もないわけではないけれど、原発の場合、そりゃあ許せない。

規制委 高浜1、2号機で原発40年ルール緩和
毎日新聞2016323
http://mainichi.jp/articles/20160324/k00/00m/040/109000c
 原子力規制委員会は23日、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1,2号機(福井県)について、今年77日が期限となっている運転延長のための法的手続きの要件を一部緩和することを決めた。蒸気発生器など1次系冷却設備が想定する地震の揺れに耐えられるかの確認作業を、期限後に先送りする。高浜1,2号機は同日までに安全審査の合格に加えて工事計画認可などを得る必要があり、間に合わなければ廃炉になる。規制委は当初、工事計画認可の手きの中で耐震安全性を確認する計画だったが、関電が確認方法を変更する方針を示したため、期限後の実施を容認した。難航していた作業が後回しになったことで、運転が延長される可能性が高まった。こうした先送りが他の原発でも踏襲されれば、原発の運転期限を原則40年とする「40年ルール」が空洞化する恐れもある。

 でも記事の中身はあまりはっきりしません。たまたま入ってきた「原子力規制を監視する市民の会」の<共同声明>原子力規制委自ら法令違反/耐震安全性の裏付けなしで40年超え高浜原発1・2号機の認可は許されない は、もっと難解。そういえば、反原発派はずっとこうやって技術論争してたんだっけ・・・で、久しぶに原子炉等規制法を読みました。同法は、フクイチ事故を受けて改正(悪)がくりかえされ、さらにわかりにくく複雑になっています。なにはともあれ、この件の関係条文は43条3「発電用原子炉の設置、運転等に関する規制」の32です。



(運転の期間等)



第四十三条の三の三十二
 発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉の設置の工事について最初に第四十三条の三の十一第一項の検査に合格した日から起算して四十年とする。




 前項の期間は、その満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けて、一回に限り延長することができる。




 前項の規定により延長する期間は、二十年を超えない期間であつて政令で定める期間を超えることができない。




 第二項の認可を受けようとする発電用原子炉設置者は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、原子力規制委員会に認可の申請をしなければならない。



 原子力規制委員会は、前項の認可の申請に係る発電用原子炉が、長期間の運転に伴い生ずる原子炉その他の設備の劣化の状況を踏まえ、その第二項の規定により延長しようとする期間において安全性を確保するための基準として原子力規制委員会規則で定める基準に適合していると認めるときに限り、同項の認可をする
ことができる。

 なんと40年超え稼働もOKとあるではありませんか。しかもフクイチ事故後2012に改正されていた! 慄然。あの激しい反原発運動はいったい何だったのか、と。・・・気を取り直して。稼働延長を止めるには「基準に適合していない(マーカー)」ことを示せればいいのです。実際は、同法「施設の維持」で、古い原発でも「新」基準に適合するよう求められているし、老朽原発には非常にハードルが高いはず。


(発電用原子炉施設の維持)



第四十三条の三の十四
 発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。ただし、第四十三条の三の三十三第二項の認可を受けた発電用原子炉については、原子力規制委員会規則で定める場合を除き、この限りでない。


 この条文については、アトミカでさえ、「バックフィット(遡及性あり)」という言葉を使い、新規制基準への適合義務付けを強調しています。(なお条文中、「ただし~」以下は廃炉の場合で稼働延長とは無関係)。
「新
たな規制項目として「発電用原子炉施設の維持」が設けられ、「発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会で定める技術上の基準に適合する
ように維持しなければならない」として、既に許可を得た施設に対しても新基準への適合(バックフィット)を義務づけている」
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=10-07-01-05

 
そこでニュースに戻りますが、関電は、今のままで高浜1,2号炉の耐震安全性評価(確認作業)を行うと、新規制基準に適合しない恐れがあったため、規制庁を抱き込んで、先に「稼働延長」の許可を得、その後、新基準に合わせた工事の認可を得ることにした、というわけです。つまり、新基準に合格しそうもない廃車ぎりぎりの車が、とりあえず車検を通してもらい、その後から新基準に合わせて車を改修する・・・つまり、取締官を抱き込んで車検制度をスルーするようなもんで、もろ違法じゃないの。

 「市民の会」によれば、関電は、通常5%とされる減衰定数(経年劣化の指数らしい)を1~3%に低く見積もるとか、必要な加振試験や打撃試験も行わないなど、すでに勝手に規制を破っている、一方、これを規制すべき規制委は、関電のルール破りを大目に見るどころか、法の穴抜けまで教えてきたというのです。規制庁による安全審査の実質的放棄・・・これって、取締相手に調査の日や逃げ方を教えるようなもので、少なくとも公務員法違反。しかも、人の生命に関わる公害事業に関することだから、公害犯罪処罰法にも違反するし、詐欺罪にもあたるのでは?

 これが通れば、車検制度だって撤廃を求められるのではないでしょうか。署名活動なんかするより、原発安全審査と車検撤廃を組み合わせた運動をやったり、関係者を刑事告発すればいいのに、と私は思うのですが。2016.3.25

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/