厚木爆音訴訟、住民敗訴

 風力とは直接関係しませんが、重要なニュースが入っているので再エネのカテゴリーに投稿しておきます。

 騒音に苦しめられている米軍基地住民の訴えを、この国の裁判所(特に最高裁)は認めようとしません。

 

厚木基地騒音訴訟 自衛隊機飛行差し止め請求棄却 最高裁

毎日新聞20161281515(最終更新 1290917)

厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)の周辺住民約7000人が米軍機と自衛隊機の飛行差し止めと損害賠償を国に求めた「第4次厚木基地騒音訴訟」の上告審判決で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は8日、自衛隊機の夜間・早朝の飛行禁止を命じた2審判決を破棄し、住民側の差し止め請求を棄却した。飛行差し止めについては住民側の逆転敗訴が確定した。2審判決のうち、過去の騒音被害に対する国の賠償を約82億円とした部分は既に確定していた。1、2審は米軍機飛行差し止めの請求は退けたものの、全国で初めて自衛隊機の飛行差し止めを認めたため、最高裁の判断が注目されていた。小法廷は、2審が今月末までの将来分の損害賠償として約12億円の支払いを認めた部分も破棄した。過去分の騒音被害を金銭で救済する従来の司法判断の枠組みに後退する内容となった。周辺住民らは当初、民事訴訟を起こし、騒音被害に対する損害賠償と米軍機、自衛隊機の飛行差し止めを求めていた。最高裁は1993年2月の1次訴訟判決で、差し止め請求を退ける一方で国の賠償責任を認め、全国の基地訴訟で賠償によって被害救済を図る司法判断が定着した。一方、93年判決は自衛隊機の運航が「防衛庁長官(当時)の公権力の行使に当たる」との判断を示し、行政訴訟であれば差し止めが認められる可能性を残した。このため住民側は4次訴訟で民事訴訟とともに初めて行政訴訟を起こした。米軍機に対する差し止め請求は却下されたが、1、2審で自衛隊機の夜間、早朝の飛行禁止が認められた。 小法廷は、飛行禁止時間の延長を求める住民側と、差止めの取り消しを求める国側の双方の上告を受理。審理対象を自衛隊機の差し止め部分に限定し、2審の結論見直しに必要な弁論を開いた。

 国は「米軍機の騒音を被害に含めるのは誤りだ」と主張。自衛隊の活動には公共性があり、夜間・早朝の飛行も防衛相の裁量権の範囲内にあるとした。一方、原告弁護団は「睡眠障害などの健康被害は金銭では回復できない。2審判決は深刻な被害を解消する第一歩」と強調。原告の住民は「爆音にさらされる状況は今も変わらない。飛行差し止めを認め、裁判を終わらせてください」と訴えていた。 今回は、基地の騒音を巡る行政訴訟で初の最高裁判決となった。【島田信幸】

 

 ほんとにひどい判決です。去年の二審判決で、「流れが変わった」と思ったのもつかのま。最高裁は戦争できる国に向けてひた走る安部政権のサポートに回ったのです。ま~、今度に限ったことじゃないけど。

 神奈川県は沖縄に次いで米軍基地の県です。その中心は横須賀軍港と厚木海軍飛行場(厚木基地。綾瀬市、大和市、海老名市にまたがる)は、海自と米海軍が共同使用しているため、多くの航空機が日常的に離発着しています。厚木の騒音は横須賀港に米空母が入港する時、さらに激化します。それは空母艦載機は入港中の空母に発着艦できないため、入港前に洋上から厚木基地へ飛来し、出港後には洋上の空母に帰艦すること、またその間の活動も厚木基地を拠点とするからです。現在、横須賀を母港としているのが「原子力空母ロナルド・レーガン」であることも要注意。この空母はフクイチ事故直後、なぜか福島県の沖合いに急行して放射能を浴びた汚染空母(おそらく汚染を恐れて日本におっぱらった)で、何人もの水兵が放射線障害を受け、あるいは死亡していることから、訴訟が起こされています(その件で小泉元首相ー横須賀出身ーが空涙を流したのは有名な話)。

 さて、その米軍航空機に関しては、地元の自治体は何の権限もありません。以下は神奈川県のサイトから。強調山本。

「県をはじめとする地元自治体は、米軍機の飛行に関する許可や管制の権限などを有していません。また、米軍は運用上の理由から、飛行計画や経路などを明らかにしていないため、飛行情報を入手するのは困難な状況にあります。(例外として、NLP(夜間連続離着陸訓練)は実施の一週間程前に、防衛省から関係自治体に対して通告がなされることが通例となっています。)

飛行時間は、日米の政府間合意「厚木飛行場周辺の航空機の騒音軽減措置」(昭和38年9月合意)で、22時から翌朝6時までは原則的に禁止されています。飛行高度は、日本の航空法で定められている最低安全高度の直接的な適用はありませんが、日米両国政府間で「日本の法令を尊重し、国際民間航空機関や日本の航空法により規定される最低高度基準を用いる」ことが合意されています。そのため、人または家屋の密集している地域の上空にあっては、当該航空機を中心として水平距離600メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から300メートルの高度となっています。

「厚木基地には昭和30年代から、米海軍のジェット機が飛来するようになり、騒音問題が表面化しました。特に、昭和57年2月から厚木基地において空母ミッドウェー艦載機による夜間連続離着陸訓練(NLP)が始められ、騒音は一層激化しました。平成5年、米側に東京都小笠原村硫黄島の訓練施設が提供されて以降、近年ではNLPのほとんどが硫黄島で実施されています。最近では、NLPそのものによる騒音ではなく、その前後や日常的な訓練による騒音に対する苦情が多く寄せられています。

 強調部分にご注意。夜間飛行の禁止は政府間で「合意」されているにもかかわらず、米軍は(海自も)それを守らず、NLPをくりかえし、その後も裁判に訴えてようやく認められたことがわかります。こうして占領国・アメリカはずっと法令遵守義務に違反してきたのに、日本は文句をつけるどころか、住民の不満を押さえつけてきたわけ。どういう国だろうね、まったく。もっとひどいのが裁判所で、米軍の飛行差し止めについては1審でも2審でも「国の行政処分ではない」としていますが、これは米軍がやることは、国家権力をもってもとめられない、裁判所は米軍に関する件は判断できないし、したくないという意味で、実態上も、日本は完全に米軍の支配下にあることを示しているのです。少し前、メディアは若者たちの「民主主義を守れ」という運動を大報道していましたが、あれもやらせ。日本にはそれっぽい制度があるだけで、まだ守るべき民主主義はないのよ。他国、しかも世界最大の戦争中毒国に喜んで国土を提供しているような国に民主主義などありえないのは当たり前です。なお、この記事では書きませんが、航空機騒音も低周波を発生させており、住民の被害は複合的なもののはずです。爆音を阻止しようと思えば、基地をなくす運動をしないとね。2016,12,10

 

 山本の別ブログの関連記事⇒ 沖縄の「北部(戦争)訓練場」返還のニュースのウラ (12/08)

 爆音を動画で⇒厚木飛行場 周辺地域の航空機の爆音被害 – YouTube(34秒)

 その厚木に飛来する軍用機のカタログあり⇒主な航空機 – 厚木爆同

 怒りの原告団のサイトはこちら⇒第四次厚木爆音訴訟原告団
 騒音問題への意見のあて先はここ⇒県及び関係機関連絡先

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/