公共事業における自治会の役割 ②長野県のケース

 ついでなので、この際、行政がいかに地元ボスをまきこみ、あるいは結託して事業を進めているか、という実例をいくつか。いずれも、ネット検索にひっかかったものだけで、山本は関与していません。まず、長野県伊那市のケース。

北新区
新ごみ中間処理施設建設同意

伊那毎日新聞-2013/11/25 http://inamai.com/www/ictnews/detail.jsp?id=35087
 上伊那広域連合が計画している新しいごみ中間処理施設の建設候補地の地元区のひとつ伊那市富県の北新区は、施設建設に同意することを決めました。25日は北新区の間澤傳区長ら役員3人が伊那市役所を訪れ上伊那広域連合の白鳥孝連合長に建設同意を伝えました。広域連合は建設候補地となっている伊那市富県天伯水源付近の地元北新区と桜井区に建設同意の申し入れをしていました・・・協議により地域の道路改良や定住対策のほか、建設期間と可動期間を合わせた33年間の環境保全協定を締結し、この間の協力費を8,500万円とすることなどが決まりました。

 予定地が伊那市の水源である天伯水源地域ということから、かなり強い反対があったところです。それを、33年間わずか8500万円の協力費で売り渡してしまったとは。反対を押して建設合意にまで至った理由は、地元自治会長らが2009年にはアセス調査に同意していたから。アセス調査は建設受入れを前提にしているから、この時点で、自治会は内諾を出したようなものです。

新ごみ処理施設アセス同意
桜井区が報告
 
2009/12/16
http://inamai.com/www/ictnews/detail.jsp?id=25327
  上伊那広域連合が計画している新ごみ中間処理施設の建設候補地となっている富県桜井区の鹿野博愛区長らが市役所を訪れ、12日に臨時代議員会で開票した結果などを報告し、小坂市長にアセス実施の同意を伝えた。
鹿野区長は「施設の安全性など環境整備をお願いしたい」と
上伊那広域連合に対し要望した…

 新聞報道だけでは、「ああ、住民もOKなのか」と思ってしまいますが、もちろん、そうじゃない。どんなに焼却炉神話がはびこっている日本でも、ちゃんとまともな人がいて、反対派を形成するもの。ここでも、このあとに「反対組織」が設立されています(サイトはないようです)。また、地元住民からはこういう↓ウラ話が(個人のブログです)。

哀れな上伊那広域連合の関係者
2009-12-01 
http://d.hatena.ne.jp/komachan/20091201/p1
 上伊那広域連合のゴミ焼却場建設予定地では、建設を急ぐ伊那市の闇の手が伸びている。
 地元から入った情報によると、環境アセスメントへの同意を求める市と自治会の一部役員がつながっていて、早期の同意を強引に決めてしまったようだ。重要課題にもかかわらず自治会の代議員会で決めたことも、住民を無視している。自治会には重要な事項を決定する総会と、総会を開くほどの重要性がない日常の諸課題を決める代議員会がある。
 代議員会には重要議題を議決する権利は与えられていない。だが、伊那市の北新区では、代議員会で環境アセスの同意を決めてしまった。これには裏があって、来期の自治組合の代表予定者がゴミ焼却場誘致に反対しているからだ。今の役員で決めてしまわないと、長引くと見た為政者が強引な議決を促したと噂されている。その後に開かれた総会では、代議員会による強引な議決に批判が噴出し紛糾したという。
 もう一方の建設予定地である桜井区が全住民による投票を選択したのも、北新区が強引に代議員会で決定したことに危機感をもったことが影響しているらしい。裏から延びた為政者の手が、こういった非民主的な住民自治を手引きしているとしたら、彼らが計画しているゴミ焼却施設そのものの正当性も疑わしい。様々な検討も結局のところはポーズに過ぎず、出るごみを燃やすというお役人の安易な考え方が反映されたものになるだろう。(中略) 今の伊那市長は、ゴミ焼却場の建設が目的であって、規模を小さくすることには全く関心がない。市長が関心をもたないことにお役人が力を発揮することは、ほとんどない。(中略)
上伊那はゴミの排出量が全国的に見ても少ない方だ。だが、さらに大幅に削減することも可能な地域だ。関係者がその気になれば、全国のトップランナーと肩を並べることも不可能ではない。その気にならなければ、同規模自治体並みの大きな焼却炉を作ることで落ち着く。やる気を出せばできるのに、やろうとしない関係者は自責の念を感じないのだろうか。可能性にチャレンジすることはお役所ではタブーなんだろう。哀れだな・・・。

 哀れなのは、こういう行政や地元ボスに対抗できない住民なんですけどね。行政と一部役員とのつながりや、「闇の手」をほうっておいた結果が、2013年の建設合意に至ったわけだから、とっとと刑事告発でもすればよかったのになあ。・・・でも、まだ建設差し止めのチャンスはあると思います。伊那を汚して欲しくない。2013.11.30

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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