マルクール事故(フランス)① 放射能もれなし、ってほんと?

  遅くなりましたが、フランスで起きた原発関連施設の爆発(9月12日)について一言。

 


 仏南部の核施設で爆発1死亡 4人負傷


20110913 14:41 発信地:コドレ/フランス  



913 AFP】フランス南部マルクール(Marcoule)の放射性廃棄物処理施設で12日、爆発があり1が死亡、4人が負傷した。原子力庁(CEA)によると、爆発があったのは仏電力公社(EDFの子会社SOCODEI低レベル放射性廃棄物処理施設セントラコ(CENTRACO)。フランス原子力安全局ASN)は事態は収束したと発表する一方、負傷者のうち1は重体であると明らかにした。(①後略

 爆発したのは、ごみ問題に関わる人ならおなじみの「溶融炉」のようです。フランス政府はすぐに、「放射能漏れなし」[負傷者に被曝もない」と発表、各紙も「廃棄物貯蔵施設の火災」「産業事故に過ぎない」などと伝えましたが、原因は不明。死者の遺体が完全に炭化していたとの報道もあり、爆発による放射能汚染も強く疑われますが、以後、続報は見当たりません。


 


 報道規制も強いようです。これはおそらく、マルクールが「国防施設」だからでしょう。マルクールはフランスの「核」武装のための材料供給基地として1956年に開設されました。プルトニウム生産のデータ提供を皮切りに、より強力な破壊力を持つ核兵器の開発が求められるに伴い、熱核爆弾の燃料として、トリチウムを生産する原子炉も設けられたのです。②


 


 今は、高速増殖炉(フェニックス実験炉)、Mox燃料製造工場(使用済み核燃料使用、メロックス)、高レベル核廃棄物の研究所(アタランタ)、そして今回事故をおこした、核廃棄物の処理センター(セントラコ)など、官民入り乱れた一大核コンビナートのようですが、事業の中心はおそらく、核廃棄物の処理でしょう。つまり、東海村と六ヶ所村、敦賀が一緒になったような場所です。


 


 爆発した溶融炉では、防護服や手袋など可燃物と共に、バルブやポンプ、工具などの金属も一緒に処理していたというから、炉温も1000℃以上はあったはず。実は日本でも、1997年、動燃(東海村)のアスファルト固化施設でよく似た事故が起きています。溶融固化物を詰めたドラム缶から2メートルの火花が上がり、いったん消火したものの、しばらくして建屋が爆発したという事故。当然、このときも放射能漏れと作業員の被曝が報告されていますから、マルクールで放射能漏れがなかったなんてありえない。


 


 核廃棄物の「焼却」「溶融」処理は、こうして潜在的な危険がつきまとっているため、立地も限られます。マルクールでも、各地の原発から押し寄せる大量の核廃棄物をせっせと処理していたのでしょうが、それが「危険」なことがばれると、フランスでも「原発ノー」の声が高まりかねない。だから、政府も産業界も(もちろん御用学者も)、完全に情報を遮断し、環境汚染や人体被害については口を閉ざしているのです。原発をとりまく状況は、どの国も同じなんですね。2011.10.3


http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2826822/7761376


②http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-14879557




 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/