フクシマの事件を海外の学者はどうとらえているのか。今日は、「社会的責任を求める物理学者」の設立者であり、放射線医学の医師、反原発の科学者として世界的に有名な、ヘレン・カルデコット氏の談話を、二回にわけて紹介します。これは2011年3月18日、カナダ・モントリオール出行われた講演会の後の記者発表談話ですが、事故から間もない時期で、彼女の怒りが伝わってきます。なお、()は訳者注、原文(下記)にはグローバル・リサーチの詳細な注釈がついています。
フクシマを考える
ヘレン・カルデコット博士
(訳:山本節子)
最初にお示しするのは、ニューヨーク科学アカデミーがこのほど出した、チェルノブイリのリポートです。これはロシアで発表された5000本もの記事を、初めて英訳したもので、ネットでダウンロードできます。これによると、WHOやIEAEの報告と違い、もう百万人近くがチェルノブイリ事故の結果としてなくなっています。これは医学界の歴史の中でも最大の隠匿事件のひとつであり、すべての人がこのことを知る必要があります。
次に、日本についてですが、フクシマの状況はチェルノブイリよりずっと、何桁も悪いのです。私は、六つの原子炉が同時に危機におちいることがあろうとは、思いもしませんでした。これらの原子炉、マークⅠの設計に関わったGEのエンジニア3人が、その危険性を知って退社していますが、日本はその危険な原子炉を地震断層の上に建てたのです。
原子炉の一部は地震に耐えたようですが、外部電源の供給が絶え、これら六つの原子炉に送り込む、1分あたり百万ガロンにのぼる冷却水が供給できなくなりました。冷却水がないと冷却プールの水位がさがり、(むき出しになった)燃料棒は熱で溶けてしまいます。スリーマイル島や、チェルノブイリの時と同じように。緊急用ディーゼル発電機――これは普通の家ほどもある巨大なものです――も津波で破壊され、もう原子炉の中の冷却水を循環させることができなくなりました。
また、原子炉の上には――原子炉格納庫内部ではなく――冷却プールがあり、そこから毎年、最も汚染された燃料棒を約30トン除去します。燃料棒は長さ12フィート、厚さ2インチです。そこから出る放射線は非常に強く、そのそばに数分間立っているだけで、その場でというわけではありませんが、死に至るほどです。リティヴィネンコのことを覚えているでしょうか。あのロシア人はプルトニウムで毒殺されたのですが、彼のように死ぬのです。髪が抜け、鼻血が止まらず・・・ちょうどエイズ患者のように。
また(使用済み)燃料棒はとても熱いので、巨大な冷却プールで休むことなく冷やし続けなければなりません。でも、このプールには屋根がありません。これまでおきた3度の水素爆発で、建屋の屋根が――原子炉格納庫ではなく、吹き飛ばされてしまったからです。
冷却プールのうち二つは水がなく、干上がっています。燃料棒はジルコニウムという物質で被覆されていますが、これは空気にさらされると、燃えます。引火するのです。現在、2つの冷却プールが燃えていますが、冷却プールから放出される放射性物質は、炉心から出るものよりはるかに強く、10倍~20倍になります。一方、炉心では半減期が非常に長い放射性物質が――ヒロシマの原爆級の1000倍というレベルで――生み出されています。私たちが扱っている原発は、地獄のエネルギーなのです。
E=MC2(アインシュタインの方程式)は核爆弾を吹き飛ばすエネルギーです。アインシュタインは、とんでもないやり方で水を沸かすのが原発だと述べました。なぜなら、どんな原発も、高熱で水を沸騰させ、それを蒸気に変えてタービンを回転し、電気を起こすからです。
ウラニウムを核融合させると、新たな物質が200も生成されます。これらの物質は、もとのウラニウムよりはるかに毒性が強く、人体に危険なのです。アメリカはこれ(劣化ウラン弾のこと)を、ファルージャでも、バグダッドでも使いました。その結果、ファールージャでは、赤ちゃんの80%がすさまじい障害を抱えて生まれてきました。脳がなかったり、眼がひとつだったり、腕がなかったり。小児ガンは約12倍にも増えました。
これはジェノサイド(大量無差別虐殺)です。イラクで進行中の核戦争なのです。米軍が使っているウラニウムは、45億年以上も残ります。私たちはこうやって、文明の発祥地を汚染し続けているのです。“The coalition of the willing!”
原発内部は放射能が非常に高く、放射性物質が200種類もあります。数秒でなくなるものもありますが、何百万年も残るものもあります。放射性ヨウ素は6週間残り、甲状腺がんを起こします。「ヨウ化カリウムを摂った方がいい」と言われているのは、それが、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれるのを妨げてくれるからです。(続く)
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