カントレル五聯症

 先日、中国テレビの科学番組で、驚くような画像を目にしました。
 十歳くらいの男の子が上半身裸になっています。その胸のまん
中に大きな突起があり、それがびくびくと激しく動いているのです。
 でも、薄い皮膚で覆われているそのこぶは、腫瘍などではなく
彼の心臓でした。少年は「カントレル五聯症」と呼ばれる、先天
性の複雑な奇形の持ち主だったのです。
  心臓が外に飛び出しているのは、
肋骨や横隔膜が欠損しているからですが、症例は少なく、世界で
これまで200例くらいしか報道されていないといいます。その症
状から、出世時に生命を絶たれる例が多いのではないでしょうか。
この少年にも上唇裂症の奇形もあり、生まれたとたん、病院で
「要らないだろう」と言われたのを、おばあちゃんが「要るさ!」
と救ったと言います。
 でも、命は助かったものの、両親はそれかあ厳しい現実に直
面しなければなりませんでした。学校は表に飛び出した心臓を持
つ子を受け入れてくれません。両親は借金をしまくり、各地の病
院を尋ね歩きますが、治療どころか病名さえわからなかったのです。
 そんな時、母親はどこからか、上海の心臓専門病院で同じよう
な症状の女の子の手術が成功したという情報を耳にしたのでした。
両親は最後の望みをかけ、息子を連れて上海に出向きます。上
海心臓専門医院での診断の結果、彼は心室に穴があき、位置が
表裏逆についているなど、十もの奇形があることがわかりました。
 しかし、この病院は特別医療チームを作り、外部から腕効きの
心臓外科医を招いて、病院あげてこの難手術に取組んだのです。
高額の手術費はテレビでこのことを知った人々からの寄付金など
でまかなうことができました。数時間にわたる手術は成功し、少
年の心臓は、ようやく胸腔に収まります…。
 この後、カメラは田舎に帰った一家を追います。「大きくなったら
何になりたい?」というリポーターの問いに、少年子ははにかみな
がら「警察官になりたい」。「なぜ?」「祖国を守りたいから!」。
 日焼けした母親に彼が甘える最後のシーンに、ほっとすると共に
なぜこういう奇形が?と思ったものでした。2009.4.23

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/