ドイツ公共第一放送 福島のチョウの奇形
「(フクシマでは)放射能が生態系全体を崩壊させた」・・・深刻な警告のビデオです。
この番組に出ていた野原千代さんが、10月30日、急性心不全で亡くなられていました(ずっと忙しくて、国内情勢にあまり目を向けられず、知りませんでした)。
ヤマトシジミの研究については本ブログでも、琉球大学の大瀧丈二准教授が率いる研究として紹介しましたが、この調査のきっかけは、大学院生から「ボランティアや炊き出しは他の人でもできる。私たちがやるべきことは生物への影響の調査では」という声が上がったことだったといいます。
この進言をしたのが野原さんで、彼女は当時、同大学院理工学研究科・海洋自然科学専攻・博士課程前期終了の大学院生でした。もと文系というキャリア、女性、そして年齢を考えると、彼女は強烈な使命感にかられてこの研究チームに入ったことがよくわかります。スイスなどでの講演でも大きな反響を呼び起こしたのも当然でしょう。
チームは事故2ヶ月後には福島県入りし、もっとも重要な「初期被爆」を含む生物調査を始め、翌年にはその成果をNATUREなどに発表し、高く評価されたようです。しかし、「避難者の帰還」「復興」をめざす政権は、これをほうっておかなかった。そこで、文科省はすぐ、研究費カットという挙に出ています(福島第一原発事故 ヤマトシジミ奇形論文の琉球大学研究費カット 2013年6月25日 )。減額ではなく、打ち切りというから、「報復」「見せしめ」としかいいようがありません。
この国では「事実」は伝わらない仕組みが出来上がっています。事実を伝えようとする人は妨害されるし、足を引っ張られる。野原さんも、さぞ悔しい思いをされたことでしょう。そして、失意の中の突然の死・・・。
「(福島から)みんな避難して欲しいですね」
「(内部被曝などは)軽視できるリスクではありません。それにやり直しのきかないリスクです」
「お母さん方が後で、福島に残ったことを後悔するようになってほしくないです」
これらの言葉は政権にとっては絶対に許しがたかったでしょうが、市民にとっては生き方の指針になります。2015.11.27