「県内1ヶ所」か、「福島に集中」か 指定廃棄物処分場

  鮫川の焼却炉とウラオモテの関係にあるのが、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の各県に指定廃棄物の最終処分場を作るという「国の方針」。しかし、各地での反対運動も激しいようです。たとえば、栃木県はこんな↓感じ。

「矢板選定」から1年 指定廃棄物処分場
2013年9月4日

(写真:白紙撤回を求めて気勢を上げる市民ら=矢板市文化会館)

【人見正秋、毛利光輝】高濃度の放射性物質に汚染された指定廃棄物の最終処分場建設の候補地として、矢板市塩田の国有林が選定されてから1年。強い反対で国は候補地の選び直しを決め、議論が今もなお続いている。同市では3日夜、市民同盟会などによる「市民大集会」が開かれ「完全なる白紙撤回を」と訴えた。 市民集会には約1200人が参加。遠藤忠市長や同じく選定された茨城県高萩市の草間吉夫市長、吉川道隆議長らも出席した。 午後7時に始まった集会で、同盟会の小野崎俊行会長64は「(選定され)苦悩、不安のなかで、生活が脅かされるようになった」と語り、「(国の方針である)県内1カ所を容認した首長さんがいます。本当に自分のまちで受け入れる気持ちがあるのか」と訴えた。(中略)
 
 同市では候補地に選定されて
以来、住民らが同盟会を結成し、1万人集会を開いたり、東京都内でデモ行進をしたりするなど、市民総ぐるみで反対運動を続けてきた。環境省は選定プロセスの見直しを表明したが、「再度、選定される可能性を拭いきれない」との不安がある。遠藤市長はそれらの不安を踏まえ、「決して私どもは県内処理を了解したわけではありません。なんとしても矢板市塩田には造らせない」と語った。

 建設候補地の選定をめぐり、環境省は今年2月、県内1カ所に建設する方針は変えずに、候補地を選び直すことを発表。有識者会議で選定基準を決め、市町村長会議で合意を得る手順に改めた。しかし、4、5月の市町村長会議では、矢板や大田原、鹿沼の市長らから各県内に建設する国の方針自体に反対する意見が集中。「福島県に集約を」という趣旨の意見も出され、議論は入り口で止まった。その後、事務レベルで話し合う副市町長会議や、県市長会と町村会独自の会合を経て、福島県での処理の難しさなどから、県内処理で議論を収める方向に徐々に潮目が変わりつつあった。 8月27日の市町村長会議では、福田富一知事が議論を進めるように強く求めたこともあり、最終的には県内処理の方針に渋々了承を取り付けた形となった。 同省は今後、選定基準の議論に入りたい考えだが、その前段階として、処分場建設に対する理解を得られるかが焦点になる。首長からは住民の猛反対が必至な処分場は建設せずに、処理する方法を求める意見が出ている。同省が処分場の建設にこだわれば、議論は再び難航することが予想される。
http://www.asahi.com/area/tochigi/articles/MTW1309040900002.html

 
 一見、反対が強く、計画を撤回させられそうですが、そうじゃないんですね。この集会の一週間前に開かれた市町村長会議の記事を読むと、そのウラ事情が推察できます。

最終処分場設置 「県内処理 理解得た」 栃木

2013.8.28 02:20
 ■副大臣、入り口論ようやく決着

 1キロ当たり8千ベクレルを超える放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場設置をめぐり環境省が主催する第3回指定廃棄物処理促進市町村長会議が27日、宇都宮市昭和の県公館で開かれ、これまで入り口論で膠着していたが、この日は一転、国の基本方針である県内処理でまとまった。井上信治環境副大臣は会議後の記者会見で「首長さん方の合意というか、理解を得られた」と述べ、今後は県内処理を前提に議論が進むことになった。

 会議には、福田富一知事や県内の各市町長が出席。国側が平成23年11月に指定廃棄物の県内処理の基本方針を閣議決定した経緯と理由を改めて説明。国の有識者会議がまとめた新しい候補地選定手順とこれまでの市町村長会議で出された意見に対する回答を説明するなど首長側の理解を得ようとする丁寧な姿勢が目立ったが、「処分場は県内1カ所設置」とする基本原則は曲げなかった。
 一方、意見を求められた首長側は、遠藤忠矢板市長が「話は伺ったが、県内設置を了解したわけではない」とこれまでと変わらない姿勢を示したが、一具体的に県内処理に反対する意見は出なかった。

遠藤市長は「暫定的に今の保管場所を仮置き場にして、時機を見る」と新たな提案をし、高久勝那須町長も「最終処分場でなく、一時保管施設に置けばいい」と続いた。佐藤信鹿沼市長は「他県の先行事例を見守って、後から決める」といった案を示した。ここで国側が「県内処理は了解していただけるか。処理方法はその後考えたい」と問うと、津久井富雄大田原市長が「きょうは県内処分(の方針)でまとまると思い、会議に来た。やるなら国がやればいい。もっと前面に出てきちんとすべきだ」と発言。井上副大臣が「国が責任を持って県内処理を進めさせていただきたい。その上で、次の段階へ進みたい」と言い切り、入り口論を封印。会議は「県内処理」を容認する雰囲気で収束した。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/130828/tcg13082802200002-n1.htm

 「一時保管ならいい」「国がもっと全面に出ろ」なんて、すでに自治権を投げ出している。国が言う「住民の理解を得る」とは、「市町村長の理解を得る」ことだから、市長らは何らかの見返りを約束され、事実上の「県一」に向けて動き出しているように見えます。反対するなら「矢板を守り抜こう」じゃなくて、全体的な制度の見直しを求めないとね。2013.9.6

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/