少し前に、沖縄県までもがれき受け入れを検討中、というニュースが流れました。政府は当初、運搬費が高いことなどを理由に沖縄を完全に除外していたから、これは単なる方向転換ではありません。運搬費がいくらかかってもいいという不合理な要請は、汚染の全国均一化(=分かち合い)を意味しているとしか言えません。
2012年2月28日
東日本大震災で岩手、宮城両県に大量に発生したがれきなどの「災害廃棄物」を全国で処理するよう政府が進めている「広域処理」について、仲井真弘多知事が、政府が打診してきた場合は受け入れを検討する方針を26日夜の会食で野田佳彦首相に伝えていたことが27日分かった。仲井真知事は同日、沖縄タイムスの取材に対し「頭から沖縄を排除するのでなくて、可能であれば、僕らもやぶさかでないと(総理に)申し上げた」と述べた。広域処理をめぐっては、東北以外では東京や静岡などが受け入れているが、放射性物質の影響を懸念する住民らが反対運動を起こす事例などもあり、全国的には難航している。政府はがれきの輸送手段などの面から、沖縄を除外している。仲井真知事は「可能性が沖縄のどこにあって、まったくないのか、少し研究しておこうと知事公室でやっている」と述べ、県議会2月定例会終了後に調査研究に本格的に着手する考えを示した。
前後のニュースから、仲井氏は総理と二人きりで会談をしたとのこと。表では普天間をめぐってガチンコ対決をしながら、同じ相手と密室で酒を酌み交わすというのもずいぶん不透明ですが、そこで「がれき」について語ったというのは、不自然すぎ。しかも仲井氏はこの要請を拒否していない!交付税増額というニンジンに飛びつく首長たちが多いことがよくわかっているからかもしれません。
(中略)県が広域処理を受け入れたとしても、実際に処理するかどうかを決めるのは、市町村側だとみられる。県内の一般廃棄物処理施設は、焼却施設が、与那国町をのぞく40市町村で33施設、最終処分場は27市町村で20施設となっている。(中略)那覇市の翁長雄志市長は27日夜、知事から事前連絡はないとした上で、「被災地の復興には必要。県が国から広域処理先の指定を受け、市町村に打診すれば考える必要がある」と述べ、受け入れを検討する姿勢を示した。ごみ処理場を那覇市と運営する南風原町の城間俊安町長も、「現在の焼却施設には余力がある。同じ国民として手伝えるなら、前向きに検討したい」と述べた。ただ、ともに「押し付けはできない。住民との合意が大前提で、議論の必要がある」との認識も共通している。翁長市長は近く、仲井真知事に考えを尋ねるという。県から打診があり次第、両市町は連携して本格的な調整に着手するとみられる。記事は:http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-02-28_30363
地方紙は全国紙よりまともで、この記事は、受け入れを決めるのは県ではなく、市町村(住民のことです!)と書いています(みられる、は間違い)。でも、沖縄でも、「ごみ処理広域化計画」の余波で、焼却炉を作りすぎて、燃やすごみが足りなくなっている(=余力がある)から、受け入れたがっている所もあるでしょう。だって、焼却炉を作ってしまえば、24時間365日(メンテナンス期間含む)、稼動し続けなければならないのですから。
それにしても、がれき広域処理は、今や普天間と並ぶ国家の大問題になり始めています。それも当然で、「がれき広域処理」という国策は、「被災地の復興」ではなく、「東電と原発の再興」が目的だからです。そのもっと裏には、原発計画を再始動しようとしている宗主国・アメリカの意図があります。だから、最大の基地の県、沖縄の人々は、これを単なるごみ問題と甘く見ず、知事や市町村長が動く前に「ノー」を言わないと。沖縄に親戚・ご友人がある方、どうぞ、このメッセージを伝えてください。
2012.3.2
「沖縄でがれき処理」という異常
この記事を書いた人
山本節子
調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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